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B.E.夏号 第4章「子どものはなし」

※本記事の文量は約1万字です。

子どもたちが抱えるには重すぎるものを、私たちの社会は背負わせている可能性があります。家族のケアをするヤングケアラーの子どもたちを支援する、一般社団法人ヤングケアラー協会の小林鮎奈様にお話を伺いました。

小林鮎奈(こばやし あゆな)
一般社団法人ヤングケアラー協会 事務局長 兼 広報
1990年生。元ヤングケアラー。8歳の頃に母が心の病気を患い、15年ほど良くなったり悪くなったりを繰り返す。母の病状に合わせて家事や話を聞いたりしながら、定時制高校に進学し働きながら学校へ行く。“母の病気のことを誰か相談できる人に出会いたい“という思いから、看護の専門学校に進学し看護師となる。外科病棟を経て精神科病院やカウンセリングルームで勤めてきた。「精神疾患のある親をもつ子どもの会こどもぴあ」を2018年に設立。こどもぴあ副代表。こどもぴあ著書「精神障害のある親に育てられた子どもの語り」「静かなる変革者たち」

ー本日はよろしくお願いいたします。小林さんは以前に『こころのナース夜野さん』の作者・水谷緑先生から取材を受けたとのことでしたが、『リエゾン』(竹村優作・ヨンチャン、講談社)もご存知でしたか?

(小林) 「ヤングケアラー」を扱った巻を読みましたね。

ーそうでしたか。『リエゾン』では「向山和樹」などヤングケアラーが多く登場します。あとは、『現代思想』(青土社)でも特集が組まれており、世間でも関心を集めているトピックであると思います。先ず「一般社団法人ヤングケアラー協会」の取り組みについてお伺いさせてください。

(小林) 「ヤンクルコミュニティ」というヤングケアラー当事者がオンライン上で呟いたり、交流をするためのオンラインコミュニティの運営、就職相談・キャリア支援などを行っています。ホームページに掲載している内容はごく一部で、自治体と連携しながら中高生のヤングケアラーからオンラインで相談を受けたり、キャリア支援では「若者ケアラー」と呼ばれる10代〜30代を対象に全国の方から相談を受けています。他にも、実際に学校での支援や場作りをしたり、手探りながら現場の方々と協働して活動します。また、広報担当として自治体向けに講演会を企画してヤングケアラーの認知向上にも取り組んでいます。

ー拠点は東京のみでしょうか。

(小林) 東京に限りません。私と宮崎は東京で働いていますが、他にもオンラインで働いてくれてるスタッフがいるので、キャリア支援などに関しては全国から相談を受けています。

ー東京都の取り組みは進んでいますか?

(小林) 私たちは「子供家庭支援センター」の中でも働いていて、子供家庭支援センターでは週2回ほど「ヤングケアラーコーディネーター」として相談を受けています。丁寧に少しずつ、一過性のものにならないよう取り組むことができていると思います。他には、府中市が日本財団と提携を結び、ヤングケアラーの実態把握のための調査を行うと発表しましたし、東京都・保健福祉局は「ヤングケアラー支援マニュアル」を作成して関係機関への連携を呼びかけていたりするので、徐々にではありますが取り組みは着実に進んでいると思います。

ーオンラインで協力してくださる方々もいらっしゃると思うのですが、組織のコアメンバーはお二人という認識でよいでしょうか。

(小林) 我々二人に加え、兼業しながらガッツリ動いてくれているスタッフがもう二人います。講師やコミュニティ運営を担ってくれているスタッフもいますが、私たちはみんなが元ヤングケアラーの経験を持って集まっているのですが、これからは運営に携わってくれる人も増やしていかなければならないと考えています。

ー小林さんと宮崎さんとでどういった役割分けをされているのでしょうか。

(小林) 明確には分けていなくて、大分やっていることは被っているかもしれません。組織の運営周りは宮崎さんが率先してやってくれていて、事務周りは私がやったりしていますが、お子さんとの関わりや相談対応については全員で関わっています。


ー私は、この漫画を読むまで「ヤングケアラー」という存在を存じ上げませんでした。しかし、子どもの頃のことを振り返ってみると、ご両親が忙しいから兄弟の面倒は全て自分がみているという同級生もいたような気がします。先ほどご紹介いただいた東京都の「ヤングケアラー支援マニュアル」にはヤングケアラーの定義が記載されていますか?

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