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B.E.とは

Butterfly Effectの意

本誌創刊に込めた想いは、気象学者エドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のテーマ『ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか』が語るように、ほんの些細な事がさまざまな要因を引き起こした後、非常に大きな事象の引き金に繋がることがあるという考え方をベースにしている。小さな蝶の羽ばたきが、次の動きをもたらすことを望む。
編集責任者・鈴木豊史

目次

  1. ダーウィン事変の言葉たち

  2. 動物の権利をどう考えるか

  3. 言葉を持たない動物をどう理解するのか

  4. コラム:動物行動学

  5. 誰が動物の代弁者たり得るのか

  6. わたしたちの生活を支える工場式畜産

  7. アイヌとゴールデンカムイ

  8. うめざわしゅん論(導入編)

  9. 今日からはじめるヴィーガン生活・入門

  10. 編集後記

作品紹介

「ダーウィン事変(うめざわしゅん著)」は月刊アフタヌーン(講談社)で現在も連載中、マンガ大賞2022の大賞も受賞した人気作品である。
 物語の主人公・チャーリーは、人間とチンパンジーの間に生まれた交雑種の「ヒューマンジー」。人間の育ての親に15年間育てられ、高校に入学。同級生の女の子・ルーシーと出会い、初めての友達ができる。しかし周囲からの差別や偏見にさらされ、さらに「動物解放同盟(ALA)」と名乗るテロリストの思惑に巻き込まれて事件が続発。ルーシーや家族を守るため、チャーリーは高い知性と超人的な運動能力を武器にテロリストと対峙する。

 本誌「B.E.」は編者である鈴木が同作を読んだことをきっかけに、現実に起きている諸問題(アニマルウェルフェアや環境問題、断絶やヘイト)にどのように向き合って言ったら良いか?と考えはじめたことを着想の出発点としている。
 そのため、想定される読者としては「ダーウィン事変が好き」、「漫画が好き」といった漫画を普段から読んでいる方々であり、作品に深く潜り、これらのテーマについて一緒に学んでいくことを私は望んでいる。ダーウィン事変が、「動物の権利」や「ヴィーガン」などをテーマとして扱っている以上、これらの知識を得ることは作品を深く理解するのにも役立つことであると信じているし、それらを知ることが漫画をより面白く読むことにも繋がっていくと思う。

扱うテーマの性質上、小難しい内容になってしまっている部分があることは否めないが、是非読み通してみて欲しい。ダーウィン事変という作品に対する見方が変わるはずだ。それでは、始めていきましょう。

1章 ダーウィン事変の言葉たち

「ダーウィン事変」がわたしたちに投げかける言葉は重い。
ヒューマンジーのチャーリーと一緒に、壮大な思考実験をしよう。

『ダーウィン事変』第1巻 第1話©︎うめざわしゅん

ルーシーはチャーリーに問いかける。

「ヒューマンジーなのってどんな感じ?やっぱり私たちとは世界の見え方が違う?」

異質な存在を前に、ルーシーは純粋な疑問を投げかける。チャーリーに対してそれは、誰もが思ってしまう自然な疑問かもしれない。しかし、国や民族が異なる人にそれを問うことはもはや差別となることは避けられない。そんな中、上記のように問い返された場合、あなたならどう回答するだろうか。全く考えてもいなかったことに戸惑いつつも考えてみる。人間であることって、どんな感じでしたっけ??


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