5章 わたしたちの生活を支える工場式畜産
東京・品川駅から歩いて5分という好立地の場所に「お肉の情報館」という施設があるのをご存知だろうか。おそらくであるが、都内で暮らしている方(通勤・通学を含む)でも多くないのではないかと思う。筆者は本誌の取材もかねて同施設を訪問したのだが、品川駅港南口を出てオフィスビルが立ち並ぶ一角、それはまるで都市部のオフィス街に擬態するかのようにそびえる本当に単なる施設であった。
このことは、普段何気なく目にしているスーパーマーケットやコンビニエンスストアにあるお肉や肉製品が、どこから来ているのかということが、わたしたちの生活と絶妙に切り離されてしまっていることを意味するのではないか。大人の社会科見学と題された人気テレビ番組「潜入!リアルスコープ(フジテレビ)」に代表されるように、さまざまな民間企業(カップラーメンの東洋水産 や回転寿司チェーンのスシロー 、お菓子製造の不二家など)の工場で商品が生産・製造される過程が紹介されている。ソーセージやウィンナーなどの加工食品の工場に潜入した事例はあるが、その時点で肉はピンク色をしたミンチ肉に加工され真空パックされており、単にそれが腸詰めされる過程しか放送はされていない。しかしながらどの放送局も、どの番組もそのミンチ肉がどこから来たのか、スーパーマーケットに並ぶ「鳥もも肉」や「牛ハラミ」といった肉はどこから来たのかについて触れることはない。見せる必要はない、見せても誰も喜ばないといった忖度が働いているのだろうが、果たしてそれで良いのだろうか。
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