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【向島フィールドワーク(10/19@プレゼミ)】

すみだ向島EXPO2021に参加しました!


今期太田研のプレゼミでは、長屋文化を背景に独自の進化を遂げ続ける墨田区向島地域に焦点を当てています。

コロナ禍で様々な制限が生じるなか、街の人たちが声をあげて昨年より開催した街活性化プロジェクト「すみだ向島EXPO2021」に、先日10月19日(火曜日) 太田研所属の3年生12名が参加しました。

実際にこの地域に住む方々にご案内いただき、現地の生の声を聞きながら、その現状と背景を視察しました。

(2021年11月6日)


〈フィールドワークということで、すみだ向島EXPO実行委員長の後藤大輝さん(中央奥)と、長谷川春菜さん(中央奥左)にサポートをして頂きました!〉

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後藤さん、長谷川さんに1-2時間ほど周辺を案内して頂いた後、班ごとに分かれて各自見学、調査を行いました。

〈中西道也さんが14日間の隔離生活の間にリノベーションをした"平家別館"〉

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〈三軒長屋にある"過去の部屋"と題した、ガラスに様々な人の顔を転写した作品〉

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〈"現在の部屋" と題した、反対側の建物を光の反射によって実際に部屋に投影している空間〉

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〈七軒長屋にある人とお酒の関わりについての展示が施された"人と酒の関わりの館"〉

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以下、3年生代表 百瀬萌のレポート

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「この街で育まれた思考を駆使すれば、未来を担う新しい共同体を作ることができる。」と、すみだ向島EXPO実行委員長の後藤さんは言う。
すみだ向島EXPOがテーマとして掲げる"隣人との幸せ"とは何か。"この街で育まれた思考"とはどのようなものか。実際に向島を訪問し、体験して、そのルーツを探った。

向島とアート
 向島はアートと深い繋がりがある。その根源は関東大震災にある。古い建物が密集した向島は防災対策が不十分であり、被災後は早急な都市計画が構想された。しかし、一方では古い長屋は魅力的な文化とも捉えられ、これを残そうとする地元住民の働きかけがあった。そこで向島地域の課題を乗り越え、さらにその魅力を活かせる建築の提案を求めたことが、向島でアートの活動が根付くきっかけとなったという。

 始めに訪れた京島駅は、廃材で1.5階を作ってネパール料理を提供していたり、2階の天井裏にミラーボールとプロジェクターが設置されたアート空間があったりと、建物の古さにはある意味似合っていない現代空間があり、早速不思議な世界に入り込んだ感覚になった。

〈京島駅 2階天井裏〉

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 すみだ向島EXPOが展開している軒下プロジェクトの一つである、村岡裕樹さんの「あんみつ姫の家」。
 カラフルなブロックが民家の前に建てられているこの違和感に、日常に新たな刺激を与えているようなワクワクを感じた。このように作品と建物の境界が曖昧でコンテンツが混在しているため、一日では見切れないほど見どころが多くあった。

〈あんみつ姫の家〉

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向島と長屋
 長屋とは住居が一枚の壁を隔てただけで繋がっている建物である。長屋に住む住民は良くも悪くもプライバシーが確保し難く、多様な隣人への許容も必然的に求められることから密な関係が築かれ、日ごろからお互いの不足を自然と補い合って生活するという。
 長屋を訪れた際に一番印象的だったのは、班で最後に訪れた踏切長屋である。踏切長屋に以前から住む黒川さんに貴重な話を伺えた。

〈黒川さん(左)〉

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 黒川さんは雨漏りもひどく、傾いた戦前の長屋に住みながら、自ら設計とリノベーションを繰り返し、他の入居者の学生たちと共に街にひらいた創造的な拠点としてチャレンジできる様な継続的な運用に努めている。傾いた地形に沿って出来た段差を部屋の区分けとして捉えたり、腐食しかけた壁をわざと残したり、住人が好きに想像して実践し、古い味を残しながら生まれ変わっていく長屋を肌で感じた。裏店を案内してもらった際も黒川さんの愛ある解説に、京島住人の想いを重ねて想像した。

〈裏店も案内していただきました〉

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 私がこの街を体験して育んだ想いは、向島地域住民が守り残した長屋は住民間の近くて温かい関係性を伝承する象徴であったことに加え、現代アートを取り込むことでそれを過去のものとして内側に留まらせず、外部から来た人にもそれを思い出させるような体験ができる取り組みを、長年に渡り行なってきた向島地域住民の愛情深さである。

 京島駅や三軒長屋、隣人プロジェクトの宿の家などに訪れた際にも同じことが言えるが、案内をしてくださった後藤さんをはじめ、各所で多くの住人の人たちが私たちを快く歓迎し、マニュアルにはないような各自の向島やプロジェクトに対する想い入れを語って頂けて、この街の温かさと愛情に終始感化した。私は自宅の隣人の顔すらまともに伺ったこともなく、地元地域の活動に取り組んだこともなかったため、近所の繋がりを強く持ち、共同して自分達の好きな街の魅力を内にも外にも伝えようと活動する向島の人達を輝かしく、羨ましく思えた。昔ながらの生活間の距離の近さを残した長屋は、今の住人同士の関係をも紡いでいると思う。そして向島地区が可能にした他にないアーティスティックな自由度は、住民も建物も街も、生き生きとさせているように感じた。

建築デザイン学科3年 百瀬萌

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このような現地調査は大変貴重な機会であり、資料からは伺えないような本質的な情報を得ることができました。

学校で地道にデータから調査するのも大事ですが、現地に実際に訪れて五感で感じるのとは全然違いますね。フィールドワークの良いところです!

すみだ向島EXPO2021関係者の皆様、ありがとうございました!今回得たことを基に、今後も太田研では向島地域の調査を続けて行きます。

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