映画『竜とそばかすの姫』美女と野獣が見たいなら本家を見るわい

※本文はネタバレを含みますので、閲覧時はご注意ください。

『竜とそばかすの姫』を見た。歌はよかった。

予備知識がないままに映画を見に行ったので、誰がどの役の声を当てているのかもわかっておらず、お恥ずかしながら主人公の声を演じた中村佳穂についても詳しくないが、歌はよかったし演技も悪くなかったように思う。
特に、鈴の友だち役がYOASOBIのikuraちゃんだったことは意外。声優初挑戦と思えないほど、非常になじんでいた。あの子はただの天才か。
そのほかにも、成田凌や染谷将太、森山良子、坂本冬美、役所広司など、映画館で声を聴いているときには気付かなかったが、エンドロールを見てめちゃくちゃ声優陣が豪華なことに驚いた(それくらい予備知識ゼロ)。

『竜とそばかすの姫』でよかった点は、それくらいだろうか…………。
以下、箇条書きで感想を述べる。

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・「U」における鈴の「As」=ベルがやたら目が大きい造形で、すごくディズニーキャラの描き方を意識していることがわかった

・と思ったら、ミュージカルばりに歌を歌うので、もろディズニーを意識しているんだと思った

・と思ったら、『美女と野獣』のシーンが出てきて、ベルの名前もそうだし竜のキャラデザもそうだし「出ていけ」も踊るシーンもただの美女と野獣で、美女と野獣好きとしては逆にもう許せなかった

・「U」の正義を守る正義野郎もアゴが割れてたし、自分がさも正しいかのように振る舞ってエゴを押し付ける点も『美女と野獣』のガストンまますぎて……なんかもう……ただのパクリでは…………

・歌で感動させようとしてくるところは、新海誠の悪い影響を受けている

・設定は悪くないんだろうけど、うまく生かしきれていなかった印象

・主人公のお母さんが亡くなっている必要はあったのか……。お母さんが亡くなったことがきっかけで歌えなくなったようだが、仮想世界では歌えているわけだし、「お母さんが今まで見ず知らずの子を助けた気持ちがわからなかったけどわかった!」ということを出したかったのなら説明不足

・仮想世界なんだから、竜の城が燃えても別に問題なくね?

・「あの竜は……誰?」から竜と知り合ってすごい心の距離を縮めていたが、そんな心の距離が詰まるような出来事はあったか……?ずっと起きていたつもりだが、もしかしたら寝ていて重要なシーンを見逃したのか……?

・竜の子どものニュース映像?のようなものが印象的に流れ過ぎてすぐに竜の正体がわかってしまったので、最初の竜の本人探しは茶番だった

・竜本人の声が渋すぎてとても14歳とは思えなかった
 (佐藤健は声だけでもかっこよすぎる)

・確かに虐待はダメなので、警察を呼ぶなり、然るべきところに対応してもらうのが一番よいのでは……

・あんな地味の女子高生の気迫で石黒賢が引くとは思えない

・結局虐待されていた2人がどうなったのかの描写がなく、非常に中途半端。クリストファー・ノーランのような「あとは鑑賞者の想像に任せる」という見せ方になっていないので、ただの尻切れトンボ

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前作の『未来のミライ』に引き続き、まだ迷走していると感じた。前作もそうだが、あれもこれもと要素を入れるのはよくない。結局何が伝えたいのかが分からなくなってしまうからだ。

映画にしろオリンピックの開会式・閉会式にしろ、自分が伝えたいテーマやメッセージは一つに絞り込むことが大切なのだと感じた。
もしかして『竜とそばかすの姫』が伝えたいのはそういうこと……?


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