出産のときのこと
夜中の1時50分ごろ。何かが「ピャッ」と漏れ出た感覚で目が覚めた。生理でドロっとした経血が流れ出る感覚。急いでトイレに行って尿漏れではないのか確かめると、アンモニア臭はなく、色は透明。立っていると何かが流れ出るような感じがする。
夜中でも病院に電話すべきなのか分からず、とりあえず「破水」で調べて出てきた上位サイトに目を通すと「破水したらすぐに病院に連絡」とある。夫を起こして破水した旨を伝え、病院に電話すると、「入院の用意を持って来院してください」とのこと。家族にも連絡を入れつつ、急いで病院へ。
病院に到着した時点ではまだ何となくお腹が不規則に痛い程度。本当の破水なのかどうか検査してもらうと、ちゃんとした破水だったので、その場で入院が決まった。その間、別の部屋からいきむ声が。別の分娩があったらしく、自分もこれから分娩に臨むのに苦しそうな声に思わずびびる。
個室に案内されて「やれやれもう一回寝られるぜ」と思ったところ、なんだかお腹が痛い。生理痛のようなジーンとした痛みが襲ってきた。間隔はだいたい10〜20分程度。「もしや…?」と思って痛みに耐えながら寝ようとすると、定期的に痛みがやってきてまったく寝られない。腰から子宮のあたりがものすごく痛い。キューッと握りつぶされる感じ。座っているほうが楽なので、あぐらをかいて深呼吸をする、朝の5時。もっと眠たくなるかと思ったら意外に眠くない。というか、痛くて寝られない。寝不足で果たして無事に産めるのか不安になるが、起きて座っているほうがはるかに楽なので、今は自分にとって楽な方法を優先する。
だんだんとお腹痛いの間隔が5〜6分程度になったので、まだ耐えたほうがいいのか悩みつつもナースコールを鳴らした。さっきよりも定期的な痛みが増しているため、分娩室のすぐ横のベッドでモニター検査をしながら経過を観察することに。
どうやら陣痛が来ると、胎児の心拍が弱まっているご様子。恐らく妊婦を不安にさせないため詳しい説明はされず、前向きな言葉をかけてもらいながら、点滴をされる。人生初の点滴。陣痛で痛いのに、さらに腕にチクッとした痛みが加わる。
朝の6〜7時ごろになっても陣痛の間隔は5分程度で、さすがに睡魔が襲ってきて、陣痛の合間にうつらうつらと睡眠を取る。最終的には眠たすぎて痛みに耐えながら寝た。人間そんなときにも寝られるものなのだと、我ながら感心した。
8時になると朝ごはんが出たため、特にお腹も減っておらず気持ち的にはとてもそれどころではないが、朝ごはんをいただく。食べてみると、少し食欲が戻る。人間こんなときでも腹は減るもんなのだと、自分の食い意地に感心した。
看護師?助産師?さんから「9時には先生が来るから、そのときにどのように産むのか方針を決める」「このまま陣痛が弱い場合は、破水してるので陣痛促進剤を使うか、帝王切開になる」と説明を受けてひゃ〜っとなっていると、看護師さんのシフトの関係でここで看護師長さんにバトンタッチ。
そこから内診でグリグリされたのもあってか、陣痛の間隔が2〜3分程度に。私は先生の方針に関するお話を聞く気満々だったのに、9時15分には分娩室へ。「聞いていた話と違う……」と思いながらも、だんだんと強い痛みが襲ってくる。
思わず目を瞑って痛みに耐えていると「目は瞑らない!ふーーーっと息を吐いて!!」と看護師長さんに力強く手を握られて言われ、言う通りにすると本当に痛みが和らいだ。「看護師長さんってすごい…!」と思った途端、また強い陣痛。子宮のあたりを強く握りつぶされている感じ。ふーーーっと息を吐きながら、ペットボトル飲料を忘れていたために口がカラカラになって別の意味で死にそうに。
看護師長さんに口を湿らせてもらいながら、また内診でグリグリされて強い痛みに襲われていつの間にやら子宮口が全開に。もうそこからは「痛い」しかない時間。お医者さんにグリグリされて痛いし、陣痛で痛いし、もうお腹から子宮あたりが全部痛い。いっそ殺してくれと思うくらい痛い。痛すぎて「痛いぃぃぃぃぃぃぃ」と叫んだ。
夫の立ち会いが間に合わないこともあり、看護師さんや助産師さんが3人くらい来てくれて「ゆっくり鼻から息を吸って口から吐いて」「リラックスリラックス、力を抜いて〜そうそういい感じ」と励まされ、半泣きになりながら痛みに耐える。こういうふうに励まされるだけで全然違い、まじで夫はよ来いよと思ってしまった。夫は夫で家に発生したトコジラミの駆除業者の対応があったので仕方ないのだけれど……。どうしてそういうときに限ってお産は始まるのか……。
痛みがMAXになった頃には、看護師さんが私に跨ってお腹を押さえつつ「いきんで!!」と言われる。もう痛いし辛いし死にたいしで「いきむってなにぃぃぃぃ」と問いかける。「うんちをするような感じで!!」と言われ、必死にきばった。
きばること3〜4回(ないし5回記憶あやふや)、スルッと長年の便秘が出た感覚に包まれているときに子が出たらしく、泣き声はしなかったけど「呼吸はしてる!!」と看護師長さんが言った後、我が子の産声が聞こえた。
痛みも消えて「やっと終わった」と朧げな頭で覚えてるのは、子が出たあとにドゥルドゥルしたものが引き続き出たことと、会陰切開されて縫われている痛み。しかも、なかなか縫いよる。「どんだけ切ってんねん、切りすぎちゃうんか」と腹立つくらいに縫いよる。でも、無事に産まれたのだからここは先生に腹を立ててはいけない。
分娩室で2時間ゆっくり経過観察する中で、夫も分娩室に入室して我が子にご対面。どうやらへその緒がたすき掛けになっていることが原因でなかなか下に降りず、心音が弱まったために早く取り上げる必要があったとのこと。今思うと看護師長さんが来てからトントン拍子にお産が進んだ、看護師長さんしゅごしゅぎ……!
いわゆる吸引分娩が行われたらしく、我が子の頭はエイリアンみたいに伸びてたけど(笑)それでも愛おしいことには変わりない。そして、あらためて腹を痛めて産んでくれた自分の母親の偉大さを思い知った。かーちゃん、産んでくれてありがとう……。
そして、産まれてきてくれてありがとう、我が子。
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