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『食堂メッシタ』〜芳醇な味わいを小説から〜

最初に読んだのは2年ほど前。それ以来、何度も読んだ小説を久しぶりに開いてみた。

『食堂メッシタ』山口恵以子著 ハルキ文庫

何度も読んでいるので、もうボロボロです。

主体に描かれるのは蘇芳満希(すおうまき)という一人の女性の歩み。普通の大学生だった満希がアルバイトをきっかけにイタリア料理に興味を持ち、本場に何度も渡って腕を磨き、東京の名店でも修行を積んで、自分の店を開く。

満希の作る潔くて繊細な料理は評判となり、お客が絶えない隠れ家的な店となっていく。それが『メッシタ』。イタリア語で居酒屋という意味らしい。

しかし、彼女は40歳を前にして店を閉める。

イタリア料理に恋した満希がたくさんの出会いと別れを繰り返し開いた『メッシタ』。かの店が生まれて、愛された記録を綴った1冊だ。

実は、メッシタは実在したお店で、満希のモデルとなった方も食通の方には有名な方のよう。

本当にあった店だったんだ…と思うとさらに思い入れが深くなる。それに、この人が作った料理をいつか食べてみたい!と思ってしまった。

でもそれは、料理の美味しさを作者の山口さんが巧みに描写しているからというのもある。

小説の中では、とにかくたくさんのイタリア料理の名前が出てくる。その字面を追うだけでも、よだれが出そうになる。

ヤリイカの詰め物、アーティチョーク(イタリア語ではカルチョフィ)の卵焼き、キスのフリット、プーリア州のブッラータチーズ…。

今ここではメニュー名しか綴らないようにするけど(読んでほしいから!)、温度感、香り、歯応えなども描写されているので、とにかく、とにかくお腹が空く小説!!!

芳醇な味わいが文面から伝わってくるのが、なんかたまらなくて何度も何度も読んだ。

アーティチョークってどんな味なんでしょ?食べてみたいよう。

実は、この小説を読むまで、活字離れが激しかった(もともとは本大好きだったのに)。仕事でも文章を扱っているので、本を読むの嫌だなとなっていて、5年くらいまともに読書できていなった。この小説に出会ってからだんだんと活字を読む楽しさを思い出し、今は常に2冊は持ち歩くようになった(遅読だし、積読も多いけれど)。

読書沼に引き戻してくれたという意味でも、私にとっては感謝の1冊です。

作者の山口恵以子さんにとっても、お気に入りの大好きなお店で渾身の1冊だったようで、インタビューも面白い。小説のストーリーはある程度フィクションも混ざっているよう。

イタリア料理は大好き。
なので、私もいつか、メッシタのようなお店に出会いたい。

世間の風潮上、外食離れも激しくなっているけど、やっぱり好きなお店で食べる贅沢な時間って大切だ。
そのために、働いているのだし。食は生きる喜びの大切な要素だ。

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