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『兄の終い』

ネットで書評を読み、ぜひ読んでみたかった村井理子さんの実録。

テーマは重たいながら、くすっと笑えるところもあり、人の営みのぬくもりが心に残った1冊だった。

図書館で借りたのでタイトルのみを

『兄の終い』cccメディアハウス 村井理子著

「人はいつ、生涯を終えるかはわからないから、今を精一杯生きる」

そんな人生訓を掲げる人は多くいるが、それは余裕のある暮らしをしている人の話なのかもしれない。

村井さんの兄は、仕事もうまくいかず、体も思うように動かないまま、シングルファザーとして子育てをしていた。

村井さん自身も兄とはうまくいっておらず、遠ざけていたよう。

彼にはすがる人がいなかった。

そんな中で生きているから、ただただ兄は必死で、周囲のことも、自分のことも考えられなくなっていたんだろうなと、村井さんが彼の死後のアパートを片付けていくくだりで読み取れた。

村井さんが兄の死後に知った、兄が懸命に生きたことの証。
一人の男の弔いのため、それを作品として残したのだろう。

ラストシーン近く、兄の忘れ形見、良一くんが、お父さんと過ごしたクリスマスのことを話すところで、どばっと涙があふれてしまった。

シチュエーションとしてはヘビーな内容なのかもしれないけれど、親子の暖かなひとときがが、彼の人生の中にきちんとあったことを知り、一読者である私も心から救われた。


今回、初めて村井理子さんの著書を読んだけど、筆致がやわらかく、テンポがいい。こんな風に、私も書けるようになりたい。また、機会があれば、著書を読もうと思う。

著書についてはこちら『兄の終い』cccメディアハウス 村井理子著

村井理子さんご本人が著書についてふれた文章はこちら



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