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出産・育児のための研究中断

こんにちは、どくたーおたまです。この記事では私が一人目を出産したときに、どのような制度を利用して研究を一時中断し、育児・出産に専念できる環境を整えたのかについて書いていきたいと思います。中断後、どのように研究・職場復帰していったのかについては別の記事で紹介していきますね。

妊娠発覚、職場への報告

私の第一子妊娠が発覚したのは、当時の職場に就職してまだ2か月しか経っていない頃でした。「就職したばっかりなのに職場の同僚にどんな顔をされるのだろうか」・・・こういった不安はやっぱりありました。

ですがこの時私は妊活を優先していましたので、就職1年目で妊娠ということも覚悟しながら就活をしました。「だって、出産適齢期と自分のキャリア獲得時期は女性研究者であれば絶対重なるんだから、しょうがないじゃん!」と開き直ってたわけです。妊娠を理由に職場で不当な扱いをされることは法律違反です。こうした法制度が整備されている現在の社会情勢が私のこの行動を後押ししてくれました。

その後、職場の上司や同僚に妊娠を報告し、みなさん温かく対応してくれました。出産予定日は翌年の1月末でしたので、ぎりぎり後期の授業を終えて出産・育児期に入ることになりました。

育児休業取得申請、研究中断手続き

私は勤務先の教育・研究・大学運営業務に加え、科学研究費の研究課題を抱えていました。妊娠発覚後は、出産・育児に伴ってこれらの仕事の扱いを考えなくてはなりません。

「常勤で科研費研究課題あり」の研究者がとり得る選択肢は次の4パターンに分けられます。

①職場の育児休業取得・科研費研究課題中断、②育児休業取得・科研費研究課題継続、③育児休業非取得・科研費研究課題中断(※1)、④育児休業非取得・科研費研究課題継続

※1 職場で育児休業を取得してる期間内でしか研究課題を中断できないかもしれませんので、③を考えている方は学術振興会に確認することをお勧めします。

なお、以上の4パータンはすべて研究中断を前提としましたが、研究計画の変更や、研究期間の延長など別の方法もありますので詳しくは学術振興会のHPで確認してください。

私は①を選択しました。育児休業取得の手続きは職場の方がやってくれると思いますが、科研費の研究中断手続きは本人が申請時期を決め、手続き書類一式を用意しなければなりません。私は①2月末から産前休暇を取得する予定にしていたのですが、その数週間前に研究中断届を学術振興会に提出しました。そして育児休業期間と同じ期間だけ研究中断を申請しました。中断期間は、職場の育児休業期間と必ずしも同一である必要はないようです。自分の研究状況に合わせて選択ができます。

ちなみに、現在私は2人目を出産し、職場の育児休業を取得していますが、科研費の研究課題は遂行中で、今後、育児休業中の数か月間、中断申請をする予定でいます。ここで、「育児休業期間中に、科研費研究課題を継続しててもよいの?」と疑問に思った方もいるかと思います。研究費は所属研究機関が管理しているので、育児休業期間の人に研究費を執行することはできないのではないか、という疑問ですね。

大学によっては育児休業期間中でも限られた範囲内での科研費の執行を可能にする規則が整っているようです。例えば立命館大学の男女共同参画推進リサーチライフサポート室はルール作りをされていて、自宅を拠点に行える研究の範囲内で研究費執行を認めてくれているようです。

もちろん、出産・育児期間中に研究を進めるのは相当難しいのですが、育児休業期間中も科研の研究費を執行できる状況にあることは、個人的にはものすごくありがたいです。

なぜなら、赤ちゃんと過ごす幸せな日々は、業績の数でキャリアを築いていかなければならない研究者にとって、不安と隣り合わせです。この不安は、少しでも研究に関わることで解消されます。研究費の執行を許可してもらっていれば、ちょっとした隙間時間に、アマゾンを検索し、「あ、この本読んでおかなきゃな、ポチ」っとやれるわけです。これだけでも不安は少し減ります。研究を完全に中断したあとに再開するのがいかに大変か、ということは別の記事で書いていきたいと思いますが、本格的な研究復帰をスムーズにするためにも、自宅で行える範囲の研究にかかる研究費の執行は許可されてしかるべきと思います。

無理せず研究中断のすすめ

とはいえ、やはり無理は禁物です。現在、私は二人目を出産し、育児中(3ヵ月)ですが、赤ちゃんはつねに抱っこをしてゆらゆらゆすったり歩いたりしてあげていないと泣いてしまうといった状況です。この記事も赤ちゃんが静かになっているときに少しずつ進めて書きました。育児をしながら完全に仕事をするのは、相当きついです。仕事は決められた期間に納めないといけないですが、赤ちゃんと一緒の生活は予測不可能で計画通りにいきません。

産後すぐに復帰した方の体験談は坊農真弓さんのこちらの記事に詳しいです。

坊農真弓2017「視点 女性研究者のリアル:その1 出産育児と不妊治療」『情報管理』60巻4号, pp.275-283. 

この方の報告を読むと、任期付きで職を得たときに出産を経験されたとのことで、育児休業を取るのが難しい状況であったと思います。たいへんな不安や負担を抱えながら育児と研究を両立されていた様子がわかります。しかし、私としては任期付きや非常勤などの不安定なポストについている方であっても、すべての女性研究者が安心して出産・育児に専念できる環境を選択できるようになることが望ましいと思います。

幸いにも、そうした制度が徐々に整いつつあります。こうした制度の支援を頼りに、研究を中断するという選択を考えてみてはどうでしょうか。

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私は現在、二人の子供を育てながら大学で無期正規雇用ポストを得ています。私のnoteでは、出産・育児というライフイベントと仕事、研究活動の両立、利用できる制度の紹介など、私の体験を共有することで、少しでも女性研究者の活躍を応援したいと考えています。ご興味のある方はぜひフォローください★




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