登園日記#24 登園の誓い

昨日、長男は登園しなかった。熱が普段より2-3分高い程度で元気だったが、保育園の前に着くと突然、静かに、でもきっぱりと「ほーくえん、いかない、いきたくない」といった。

今まで、年に一回くらい行きたがらないことはあったけど、だいたい大きな声で、全身を使って主張していた。そして、だいたいの理由は、「保育園への道をもう少し楽しみたかった」だったので、保育園の近所を一周散歩すればスッキリ登園することも多かった。

でも今回は違う。心持ち下を向いて、父親にキュッとしがみついて「お家に帰りたい、パパとママといたい」といった。二十分程度保育園そばの広場を散歩しても、気持ちは変わらないようだ。

3歳の舌では、その真意は分からない。もしかしたら友達と喧嘩していたとか、週末が楽しかったから月曜がイヤ、とか、大人から見れば些細なことだったのかもしれない。

無理やり保育園に押し込むことも、多分できた。けれど何故だか長男の態度が気にかかって、長男は登園を、僕は出勤をやめた。

これでいいのか、という思いがぐるぐる回りながらも、会社に電話をし、午前半休、午後在宅勤務を連絡した。

保育園でも学校でも会社でも、「どうしても行かなきゃいけない」は思い込みだ。辛かったらしばらく行かなければいいし、それでも辛ければやめたっていい。今ここでこの子を「いいから行きな!」と言ってしまうことは、この子にその不幸な思い込みを植え付けてしまうのではないだろうか、と思ったのだ。

どうしても行きたくない時があるなら、家族だけはこの子がいつでも帰れる先でないといけない、と思った。少なくとも僕にとって家族はそういうものだったから。

思えば僕も、小学校に行って家族と離れるのが突然イヤになって、母に送ってもらって泣きながら登校したことがあった。大学の時留年しかかったショックで、(実際は留年しなかったのに)何もかも怖くなって、実家に逃げたこともあった。そんな時、家族はなーーんにも聞いてこなかった。僕の話をただ聞いて、温かいご飯を出してくれた。

長男がもし僕に似たなら、そういう心の動きをしていても不思議じゃない。だったら僕は、自分の親がしてくれたように、この子に無条件で帰れる場所を、教えてあげなきゃ、そう思った。

「保育園行かなくても、パパもママもじーじもばーばもみんな君が大好きだよ。」そう伝えて、家路に着いた。

ほっとしたのか、長男は、帰りに何気無く寄った公園で2時間フルスロットルで遊び、初対面の子たちと仲良くなって大はしゃぎ。

帰りたいんとちゃうんかい!!!

でもそれでいいのだ。「いざとなれば家族は自分のために会社を休んで遊んでくれる」ということが長男に伝わったなら、それでいい。

ひとしきり遊んだ長男は、家に帰ってお昼を食べるとすぐ爆睡し、夕方に起きてニコニコご飯を食べ、明日は保育園に行く、みんなと遊ぶ、といった。

そして今日、保育園の友達にグイグイ絡みながら登園していった。

僕も長男もこのことをずっと覚えてはいないだろうけど、昨日はきっと僕らにとって大事な日だったんだと思う。

少なくとも僕はそう信じている。

余談:私は会社に行くためワイシャツに革靴姿だったので、公園では二葉亭四迷も真っ青なぐらい浮いていた。全てが嫌になって幼児誘拐を試みた人だと思われてやしなかったか、すこし心配だ。みなさんあれは私の愛息子です。


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