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短編出来るかな(仮完成)

とりあえず小説家になろう、投稿しました。

https://ncode.syosetu.com/n8069gk/

もし宜しければ覗いて、元気よく叩き潰してもらえればなんて思います。

以下こちらにも本文を乗せておきます。

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空を泳ぐ

先輩、聞こえますか?

俺です。聞こえますか?

聞こえてたら、返事して。

聞こえますか?

聞こえますか?

聞こえないか。

*****

「あれ先輩、こんな所で何やってんすか。」

聞き覚えのある声に、私は驚いて顔を上げた。部活の後輩が、こちらを不思議そうに見ている。なぜ彼がこんな所に、とまで考えてから首を傾げた。ここは、どこだ。座った覚えのない白いベンチから立ち上がって周りを見れば、どこかの駅のホームのようだった。

「ええと、ここはどこ?」
「どこって俺の最寄り駅っすよ、ほら……あれ?」

後輩はきょろきょろと辺りを見回して、困ったように頭をかいた。彼も、ここがどこか分からないようだった。

「どうしよ、さっき何してたかも覚えてない。夢っすかね?」

案外あっさり提示されたそれに、あぁなるほどと私は頷いた。夢。それならまぁ確かに。

「でもじゃあ、これは私の夢なの?それとも君の夢?」
「どっちもじゃないすか。同じ夢見てるんすよ。」
「そんなことってある?」
「ありますあります。俺、そういうこと多いんで。話しませんでしたっけ。」
「あぁうん、聞いた。」

そういえば、彼はよく変な体験をするなんて言っていた。あの時は冗談だと思っていたのだけれど。でもそうか。夢だと思えばいろいろと納得がいく。周りを見れば様々な年齢の、様々な服装の人達がいる。明らかに部屋着の人とか、小さい子が1人だったりとか。

ピンポンパンポーン。

気の抜けた放送の音がして、私と彼は同時に上を見上げた。ノイズが煩くて、何も聞き取れない。まるで、何人もの人が同時に話しているみたいだ。気味が悪くて、隣の彼の腕を掴んだ。

「なんすかね、あれ。」
「分かんない……すごくたくさんの、人の声みたいな。」
「うーん、多すぎて聞き取れないなぁ。」

聖徳太子じゃないですもんね、と呑気に笑う彼を軽く叩く。なぜそんなに余裕なんだ、お前。文句のひとつでも言ってやろうかと思った瞬間、ホームにごうと風が吹いた。電車が来るらしい。

「こんなところにいても埒が明かないじゃないですか。適当になんか、乗ってみましょうよ。」

後輩はぐいと私の手を掴んで、ホームに並ぶ人の列に加わった。青い電車がホームに滑り込んでくる。

「ほら、行きますよ。」

ぐいと腕が引かれるが、私は何だか……酷くその電車が恐ろしいものに思えて、その腕を払った。

「下手に動かない方がいいんじゃ、」

ないの。言葉は途中で切れて、人の波に押されて彼は車内へ押し込まれた。なんとかホームから離れまいと自分が踏ん張るのが精一杯で、私は慌てて人の波の外に出る。彼は、出てこない。名を呼ぼうと息を吸った瞬間、電車のドアはゆっくりと閉まった。

*****

はっと目が覚めた時には、白い天井が目に入った。体を起こそうと身動ぎして、腕に点滴が刺さっていることに気がつく。

(病院……?)

カーテンに仕切られたスペースからは外の様子は伺えない。スペースの中で、ベッド、棚、小さなテレビ、備え付けのクローゼットと目線を動かして、やっぱり病院かなと結論づけた。じゃあさっきのは夢か、と思った瞬間、記憶がフラッシュバックする。

部活の合宿、移動バス、衝撃、暗転。

「あ、目が覚めましたか!」

低い声にノロノロと顔を上げれば、20歳中頃に見える青年がカーテンを開けていた。

「あの、他の、子は。」

聞きたかったことは上手く言葉にならなかったけれど、看護師には伝わったらしい。さっと彼の顔が曇って、ほとんどみんな元気ですよ、と告げた。

「君みたいに脳震盪を起こしたり、怪我の手術のために麻酔をかけられて寝ている子はいるけどね。ただ、1人危ない状態の子がいて。」

告げられた名前に思わず頭を掻き毟った。

先輩、俺が、置いてきちゃったから。

*****

「あれ、腕の痣どうしたの?」
「げ、まだ残ってる。」

部活中に袖から覗いた彼の手に、手形みたいな後を見つけて眉を寄せる。これねぇ、と彼は困ったように笑った。

「先輩、俺ね、霊感体質ってやつなんすよ。これも実際に掴まれたんじゃなくて、夢の話なんすよね。」
「え?夢の中で掴まれたのに、実際に跡がつくの?」
「そー。変でしょ。」

へらへら笑う後輩に、てっきり何か言いにくい理由があるのかと思って口を噤む。丸ごと信じるには些か突飛な話であった。

「いつ連れてかれるか分かったもんじゃないですよ。色んなのから頑張って逃げてきましたけど。先輩も気をつけてね、俺、他の人巻き込むこともあっから。」
「じゃあ君が連れていかれそうになったら、私が手を引いてあげようか。」

何気なく、冗談に冗談を返すつもりでそう答えた。彼の目がまんまるに見開かれて、すぐにニッといつもの笑顔を浮かべる。

「いいっすね。任せました。」

たかだか後輩との戯れと、彼の手首の跡の心配はあれどその会話自体はさしたる記憶にも残っていなかったのだが。

*****

駅構内にいた。
いつからここにいたかは分からない。
覚えていない。
はたと気がついた時には、構内のベンチに座っていた。
まぁるい、白い、背もたれのついたベンチ。
何をしていたかも思い出せぬので、兎角そのまま、ぼぅと座っていた。

周りを忙しなく人が行き交っていた。
いつから彼らがいたかは分からない。
覚えていない。
はたと気がついた時には、沢山の人がホームを行き交っていた。
子供、大人、年齢様々な人。
電車が来るわけではないから、兎角そのまま、増える人々を眺めていた。

電車が到着していた。
いつから止まっていたかは分からない。
覚えていない。
はたと気がついた時には、そこに玩具のような電車が止まっていた。
ホコリを被った、オレンジの、懐かしく思うような電車だ。
乗る用があるわけでもなく、兎角そのまま、乗り込む人々を見つめていた。

ピンポンパンポーン。

先輩、聞こえますか?

俺です。聞こえますか?

聞こえてたら、返事して。

このままでも良いような気がする。ここに座って、ぼぅとしていたところで誰もこちらを見ないから。どこに行きたい訳ではなし、どこに帰りたい訳でもなし。このままでも良いような気がする。良いような。良いような。

聞こえますか?

聞こえますか?

聞こえないか。

なんでここにいたんだっけ。さっきから砂嵐みたいな不快な音を立てる放送に少し耳を澄ます。ダメだ、分からない。やけに心細い。さっきは1人じゃなかったはずなのに、と考えた瞬間、はっとした。

そうだ、後輩は?彼は何処に。さっき一緒にいて、それから。彼のことを思い出した瞬間、たくさんの人の声が混じった放送の中から彼の声が聞こえた気がした。

先輩、聞こえますか?

俺です。聞こえますか?

聞こえてたら、返事して。

「き、きこえてる!聞こえるよ!」

聞こえますか?

聞こえますか?

聞こえないか。

「聞こえてるってば!」

立ち上がって叫ぶ。周りの視線が集まって、すぐ興味なさげにそらされた。私はもう一度、必死で叫んだ。

「聞こえてるよ!」

*****

退院した俺は、先輩の見舞いに行くことを許してもらった。家族でも、めちゃくちゃ親しいわけでもない。だけど先輩が目を覚まさないのは、あの時先輩の手を離した俺のせいだと思ったし、二度と先輩に会えないなんて勘弁だった。気味の悪い話をした俺を拒まなかったどころか、助けてあげるなんて言ってくれたのは、例え冗談だったとしても先輩だけだ。そんな人を、見捨てる訳にはいかなかった。

俺はいつも変なもんにばっか好かれるし、人と夢を共有することも珍しくない。だからもしかしたら、と思って、先輩の手を握ってずっと頭の中で念じ続けていた。

先輩、聞こえますか?

俺です。聞こえますか?

聞こえてたら、返事して。

聞こえますか?

聞こえますか?

何度も何度も、呼びかける。先輩はピクリとも動かなくて、ああやっぱり聞こえないか、とあきらめにも似た気持ちが湧いた時。

一瞬だけ、先輩の手が握り返してきた。

俺は夢中で、一生懸命頭の中で呼びかけた。

*****

青ですよ先輩、青色の電車です、

僕はそれに乗って、帰ってこれました!

スピーカーから叫ばれる声はそこで途切れて、またザーザーと不快な音と、何人もの声が溢れる。私は力が抜けたようにベンチに座り込んだ。

青色の電車。

私がさっき、乗りたくない、と思ったものだ。本当に、あれが正解なんだろうか。さっき見たオレンジの電車の方が、嫌悪感はなかった。むしろ懐かしさを覚えたくらいだ。ただ、はっきり言えるのは、後輩は青色の電車に乗って、どこかに辿り着いている、ということ。そしてもし私がここでオレンジに乗り込んだら、彼とは会えない、ということ。

青色の電車が、ホームに滑り込んでくる。

青ですよ先輩、と呼びかける声がリフレインする。私は震える足を叱咤して、電車の方へ踏み出した。

*****

誰かが手を握っている。

「先輩!」

あぁ彼の声だ。目を開けて周りを見れば、至って普通の病院の景色。涙ぐむ彼をぼんやり見つめて、杞憂だったかしら、と息をついた。日常に帰って、きたのだろうか。窓際のベッドからは、目に痛いくらい青い空がよく見えた。ふ、と影が落ちて、彼も窓の方を向いた。

「先輩……見て、魚が飛んでる。」

大きな大きな魚が、空を悠々と泳いでいく。窓に影が落ちて、部屋が暗くなる。すぐにまた差した光を浴びながら、私は口を開いて、言葉を探して、また閉じた。そして後輩の方を見て、ただ一言、ごめん、と呟いた。

手を引けなくて、ごめん。

先輩が一緒でよかったと笑う君は、何処まで気がついているの。

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全然筆が乗らなかったので不安なんすよね〜……今までの経験上、頑張ったものはあまり良い出来にならなくて、さらさらさら〜っと書いた子が評価高いんすよ😭その法則で行くとこいつは……ちょっとね……

とりあえず今回短編を書いていく過程を載せてみましたが皆様のと比べて如何だったでせうか。結構ものによって書き方が違うので、また別の子でも同じように書いていく過程を残しても楽しいかな、と考えております。ではまた。


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気に入って頂けたらサポートおねがいします 美味しいものを食ってまた何か書いてお渡しします、永久機関ってわけです……違うか