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テレビはネットの補完になった〜考察:日本の広告費2021〜

毎年この時期に電通が発表する前年の日本の広告費が昨日発表された。2021年はマス4媒体広告費(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の合計額をインターネット広告費が初めて上回った。読者諸氏はすでにご存知のニュースだろう。

MediaBorderでは毎年、テレビ広告費(地上波テレビのみ)とインターネット広告費、そして新聞広告費の3つの推移をグラフにしている。2000年から2021年の数値をグラフにしたらこうなった。

電通発表「日本の広告費2021」より筆者作成

インターネット広告費がマス4媒体の広告費総額を超えたのも驚きだが、このグラフで見るとテレビ広告費とネット広告費の差が9868億円、ざっくり1兆円になったのもびっくりだ。

「テレビと新聞」→「テレビとネット」→「ネットとテレビ」

筆者は広告業界出身なので広告費の推移から広告メディアの主役交代だと捉えてしまう。つい15年ほど前まで、2000年代前半はテレビ2兆円、新聞1兆円だった。90年代からこの頃までは広告キャンペーンとはテレビで何をやり新聞をどう展開するかだった。テレビと新聞で共通のビジュアルとキャッチコピーを使い、テレビでインパクトを持って伝え新聞でフォローした。テレビが主で、新聞で補完したのだ。
2010年代になると新聞のポジションが急落した。テレビはかろうじて主役の座を保ち、新聞の役割をインターネットが担うようになる。テレビがメインでネットで補完していた。テレビは2兆円を切り、ネットは2014年に1兆円の大台を超えて成長していった。金額的に新聞と入れ替わった形だ。
そして2019年にネットがテレビさえも抜き去った後もテレビは踏ん張っていたもののポジションがじわじわ下がっていた。先日あるセミナーでご一緒した大手スポンサー宣伝部の方はこう言っていた。「ネットで展開したのを、テレビでどう補完するか考えます。」ついにネットが主で、テレビは補完役になったのだ。昨年、ネットとテレビの差が1兆円になったことはそのことを如実に象徴していると思う。

遅すぎた新聞、そしてテレビ業界のデジタル化

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