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思春期 其の弐

思春期とは
青年期の前期。第二次性徴が現れ、生殖が可能となって、精神的にも大きな変化の現れる時期。ふつう12歳から17歳ごろまでをいう。春機発動期。

今回は高校生になった僕のお話し。
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期待外れの高校生活

狭い選択肢の中から選んだ高校。僕が選んだのは専門高校。
なんで専門高校にしたか?それは就職に有利で専門的な技能が身に着けられるということと、普通科高校にはない入試の推薦枠があるということからだった。
成績も月並みで、学力に自信があるわけではなかった僕は、生徒会の役員をやっていた事を盾に推薦枠に滑り込み、とある専門高校に進学した。
意図したわけでもないが、初恋のダイスケも同じ高校だった。

小中持ち上がりの9年間一緒だった同級生たちと別れ、やっと新しい仲間に出会えるという期待を胸に入学した高校生活は、見事に期待外れだった。
僕の選択した学科のクラスの男女比率は1:3で圧倒的に男子が少なかった。
女子たちはとにかく騒がしく、中学時代とはまた違う荒れ方をしていた。
授業前の起立、礼すらまともにできない連中が数多くいた。高校生にもなって、「アホかこいつら」と本気で思うほどだった。

先生が教室に入ってきて、クラス委員が「起立」と声をかけてもぺちゃくちゃと話し続け従わない女子たちに、「挨拶くらいちゃんとしろよ」と注意したこともあったが、通用するほどまともではなかった。その時点で「失敗だったかな」と思うようになっていた。そんな僕を理解してくれるクラスメイトも一定数はいたが、「こいつらと真面にかかわりあうのはやめよう」と思ったのだった。
1年生の頃は真面目に通っていたが、2年、3年と学年が上がるにつれ、どうせ卒業したら就職するんだから卒業できればいいやと思うようになり、出席日数を計算してズル休みするようになった。とにかく、気の合わないクラスメイトとともに過ごす時間が馬鹿らしく思え、勉強する意欲もない自分。もしかしたら不真面目でも毎日ちゃんと通っている奴らの方がマトモな高校生だったとも思う。

専門高校でよかったのは資格試験に合格することで成績はぎりぎりでも進級はさせてもらえた。学力は付かないが、技能は身についた。その点だけは狙いどおりだったのかもしれない。

期待外れの学校につなぎ留めてくれたもの


高校生になって今までと違っていたのは生徒数が圧倒的に多く、部活も文化部、運動部と選択肢が多かった。
僕が選んだ部活は吹奏楽だった。市街地のナンバー中学(〇〇1中、2中のような数字がつく学校は街中の大きな学校、〇〇中のように数字がついていない学校は郊外の田舎者という田舎争いヒエラルキー)出身の経験者にはパート選択(新入生の楽器の選択で、経験者は優先的に希望の楽器を選べる)で争えるわけもなく、僕が割り当てられたのはマイナーな木管楽器だった。

しかし、それは僕にとってラッキーなことだった。マイナー楽器なだけに、部内で演奏できるのは僕だけ。教えてくれる先輩もいなかったので、卒業生の先輩が仕事の合間を縫って基本を教えに来てくれていた。
一人だけということは、自動的に大会メンバー入りすることになり、とにかく今までなんでもいいからやってみたかった「楽器を演奏すること」が楽しくて懸命に練習した。
そこそこセンスもあったのか、数カ月で人並みに演奏できるようになり、顧問や先輩からも評価が高かった。期待されると調子に乗ってがんばれる僕は、この頃からなんだなと思う。クラスでの僕と違い、部活での僕は別人のようにイキイキしていたと思う。つまらないと落胆していた僕を学校につなぎとめてくれたのは部活だった。

大人になりたい一心の背伸び

部活で仲良くなった友達がいた。彼とはたまたま親が知り合いだったこともあり、それなりに仲良くなった。1年生の冬だっただろうか、その彼が、一緒にバイトしない?と誘ってくれたのがきっかけで、飲食系のバックヤードでアルバイトをすることになった。
彼とは最初の1回だけ一緒に働いたが、彼はそれ切りバイトには来なくなった。一方僕は、大人や大学生のバイトメンバーと一緒に働くことが楽しくて週に1回が2回に、2回が3回にとシフトに入るようになった。部活動も夜遅くまで練習がなく、比較的早い時間に終わっていたため、本分の学業はおろそかで、部活とバイトが中心の高校生活になっていった。

働く回数が増えるとともにバイト代も増える。自分で稼げることが嬉しかった。大学生に混ざって働いたり、大学生の家に遊びに行ったり、飲み会に混ぜてもらったり、車で遊びに連れて行ってもらったりと、高校生どおしではきっとできなかったであろう経験を沢山した。
バイトのお兄さんたちは県外から来て独り暮らしをしていて、地元しか知らない僕にとっては、すごく大人に見えて自分の知らないことを知っているとても刺激的な存在だった。

高校生の子供だった僕にアルバイトとは言え、働くということの基礎を教えてくれた社員の皆さんやパートのおばちゃんたち、良いことも悪いことも教えてもらったちょっと年上の大学生のお兄さんたち、そんな人たちの仲間になりたいと精いっぱい背伸びをしていた時期だった。

初めての彼女

同性が好きなことをうすうす自覚していた僕ではあったが、人並みに彼女が欲しいとも思っていた。それは、同性を好きになる事は異常なことだと思っていたからだ。周りの同年代のみんなと同じように、彼氏、彼女の関係を楽しんでみたいと思っていた。
インターネットもなく、LGBTなんて言葉もなかった時代。大人たちも、テレビ、ラジオ、雑誌でさえも同性愛や性自認についてなんて教えてくれなかった。
ホモは馬鹿にしたり笑いにする対象でしかなく、普通ではないこと、差別されることだと思っていた。

高校2年の頃だっただろうか、クラスメイトが僕を好きな子がいると紹介してくれた。見た目も性格も可愛らしい子だった。彼女とはクラスも部活も違っていて、それまで接点はなかった。
お互いに嫌いと思うところがなかったんだろう。恋に恋する、恋人のような事をする、学校帰りにデートをしたり、手を繋いで歩いたり、日記を交換したり、誕生日にプレゼントをしたり、そんなことが楽しいと思っていた。
しかし、多感な年ごろにもかかわらず、僕は彼女に異性としての魅力は感じていなかった。確かなことはわからないが、きっと彼女も違和感はを感じていたのだろう。そんな関係は長続きはしなかった。

僕は、それよりも、バイトに行って年上のお兄さんたちと一緒にいるほうが楽しかった。その頃は知らない言葉「バイセクシャル」だと思っていた時期もあった。
自分は男も女も好きになれる。だから、異常ではない。そう思いたかった自分がいた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。
「ふつう」じゃない自分。「ふつう」になりたい自分。そんなことで悩み始めたころ。もっと文才があったらうまく綴れるんだろうと心底思います。

もしよかったら、続きも読んでいただければ幸いです。







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