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【洋書多読】The Chaos Machine(213冊目)
『The Chaos Machine』 By Max Ficher
総語数: 147,070 words
開始日:2023年2月25日
読了日:2023年3月12日
多読総語数:7,807,847+ words(※)
『The Chaos Machine』はアメリカのジャーナリスト、マックス・フィッシャーのルポタージュで、私達の日常に深く浸透しているSNSの真相を暴露するものです。
SNSの害に関する言説なんて今や広く膾炙していますし、私達自身もその有害性については多少なりとも経験的に認識しているところではありますから、読み始める前までは本書がこれだけの高い評価を得ていることにいささか懐疑的でもありました。これまでの議論の焼き直しだろう、と。
けれど、一旦読み始めるともう止まりませんでした。毎日寝る間を惜しんで読み進め、気づいてみれば読了していた、そんな感じでした。
Facebook、Twitter、YouTubeといった世界を席巻するプラットフォームがいかに僕たちにとって、というよりも人類にとって有害であり、私達の思考を規定し、その思考を操作してこの世界に分断をもたらしているかということが本書には赤裸々に書かれています。
しかもそれらの分断が、シリコンバレーでマネーゲームに興じている一部の裕福な人々の私腹を肥やすためにもたらされているとしたら?
本書に対するどんな懐疑的な意見も、著者自らの主張を裏付ける地道な取材と膨大な資料、科学的根拠、数々の証言の前には反論の余地もないはずです。それくらいクオリティの高いルポタージュであり、本書を読み終える頃には皆多かれ少なかれ、実際にそうするかどうかは別として、もうSNSを使うのは本当にやめたほうがいい、という気持ちになっていると思います。
日本語訳の出版を強く希望するところです。
テクストの英語レベルは「THE英検一級レベル」
本書の文章の難易度ですが、読んでいて「英検一級レベル英語ど真ん中」という印象を受けました。
使われている単語、文章表現などは英検一級対策テキストとしても有用と言われるNYタイムズ紙のそれを思わせるものでしたし、事実著者のMax Fisher氏自身がそのNYタイムズ紙のジャーナリストでもあります。
このレベルの英文をつらつらと読むことができれば、大抵の英語は読めるし(高尚な文学作品や専門書、古英語を除く)英語の資格試験には対応できる、そんな印象を受ける、端正で、論理的で、そして難解な文章でした。
どんな感じの文章か気になるという方は、以下にリンクを張らせてもらっている、同じNYタイムズ紙に寄せられた本書のレビューをお読みいただければと思います。
このレビューを読むだけでもおおよそ本書の内容が把握できると思いますし、良い英語の勉強にもなるはずなのでおすすめです。
というわけで、Facebookのアカウント削除することにしました
SNSの、人間の邪悪な本性に働きかける人工知能の戦略が、アジアで起きた虐殺や米国での相次ぐ銃乱射事件、トランプ前大統領支持者による暴動の原因となっていったことが暴露されている本書を読んで本当に胸が痛みました。そしてときに絶望的な気持ちになり、また同時に激しい憤りを覚えました。
社会的分断を促進するようなテクノロジーに対して異議を唱える良心であるところの言論が、もちろん無いわけではありません。その辺りもまた本書には記されています。
同時に、それらSNSの暴走を深く憂慮する人々たちによる諫言が、単に「儲かるから」というロジックでほとんど構造的に無視されているというのもまた、本書が指摘している重要な論点の一つです。
このことにもまた、ほとほと嫌気がさしました。
更に、そんな極端と思えるまでの利益追求原理主義が、同じく原理主義的とさえ言えるような「言論の自由」をベースに正当化されていること、理想の国として建国されたアメリカが構造的に抱える問題と複雑に絡まり合っていること、などなどが記されている本書を読むと、ほとんどもうこのプラットフォームを使用していることそのものが、とてつもない悪事に加担しているようなものである、とさえ思われてきます。
人間の持つ邪悪な側面をSNSが助長し、同じようなネガティブな主張をなす人々をバーチャルなオンライン空間で結びつけ、一個人として持つものとしては取るに足らないものであるはずの憎悪感情を共有させ増大させて、現実世界に負の影響をもたらすソーシャルネットワークという仕組み。なんとかしないと本当にまずいと思いました。
SNSを利用する、しないという選択は個人の自由に属するものであるとは思いますが、少なくともその害について広く共有される必要はある、そんなふうに思います。
折しも僕自身、別の理由でSNS、特にFacebookに関してはもうやりたくないと思っていましたので、これを機にFacebookのアカウントは削除することにしました。
それくらいパワフルで、インパクトのある本書。今やFacebookは全世界10億人が使用しているといいますから、この『The Chaos Machine』はもはや全人類的に必読の一冊だとすら思われます。
今後、折を見てTwitterアカウントも削除していかないと、と思っています。
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