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虹色のまあるいの

雨の中歩いていると
アスファルトの上に広がる
ガソリンの染みを見つけた。

最近は滅多に見かけることはなく
随分と久しぶりに見た気がする。

駅に続く車一台がようやく通れる程の
きちんとした歩道もない一方通行の脇道に、
駅前の大通りへ向かって大きなシミが
点々とついていた。
点々なんて表現するほど小さくはないが
ほぼ一定の間隔を空けて
じんわりと広がっている模様は
点々という雰囲気がした。

ガソリンの染みというのは
そもそも地面が乾いた日に見えるものだろうか。
今日雨が降っているから見えたのだろうか。

そういえばアメリカのカリフォルニア州で
2030年からガソリン車の新車販売が禁止になるとか。

2030年なんて10年以内のことですぐ目の前の話だ。

以前から想像しているのだが、
近い将来この世からガソリン車というものはほぼなくなり、
ガソリン車走行禁止の時代がくるのかなと考えている。
蒸気機関車のように特別な場所に乗りに行かないと
乗ることはできない代物になるのではないだろうか。

そしてかつてガソリン車を運転していた
老人たちは小さな孫に語り始める。
「ガソリン車はよかった」
「エンジンをかけるとブルンブルン唸って車全体が震えるんだぞ」
「電気はだめだな、大人しくて。あのうなるのがいいんだ」
「ハンドルを握った時の振動がいいんだ」
がはがはと笑いながら酒を飲みつつ孫に絡むのだ。

そもそも孫世代はガソリン車などに
乗ったことも見たことすらもないため、
ただぽかんと聞くのだろうか
はたまた心躍らせて聞くのだろうか。


道路にどうしてガソリンの染みができるのか
その理由を知らないのだけれど、
とてもきれいで見つけると嬉しくなってしまう。
もし車が故障しているのが原因で
そうなってしまうのであれば
それは恐ろしことだなとも思いつつも。

近い将来こんな出来事に出会うこともなくなり
「昔はな、地面に虹色のまあるいのがあったんだぞ」
なんて孫に自慢する老人が出てくるのだろうか。

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