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コワーキングスペースの運営に携わってきて、迷い続けているいくつかのこと。

ほぼ1年ぶりにコワーキングスペースについて書きたいと思います。この記事は「コワーキングスペース運営者たちの Advent Calendar 2019」の記事として書いています。

1年前、コワーキングスペース運営者限定アドベントカレンダー2018の記事として、ばかみたいに長い文章を書きました。千葉県柏市にあるコワーキングスペース「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」の運営をしながら5年以上にわたって考えてきたことを一気に吐き出したので、まぁ、今でもそんなに間違ったことは言ってないかな、とは思うものの、なんか思いつめている感というか、反論は認めないかんね感というか、ある種の重さがあったようにも思え、気恥ずかしくもあります。なので、今回はもう少し気軽に、自分の中でも答えが出ていないいくつかのことについて、「みんなどうしてます?」的に書いてみたいと思っています。まぁとくに目新しい話はなくて、たぶん運営者の皆さまには定番の迷いポイントだとは思うので、運営者どうしの「あるある」として読んでいただいても良いですし、ここからあらためてディスカッションが始まったりしても楽しいな、と。

あ、そういえば、その後わたくし、千葉県の海浜幕張にオープンした「TENT幕張」というコワーキングスペースのお手伝いも始めています。

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同じ千葉県の郊外新興都市で、同じまちづくり装置系で、KOILの経験も踏まえてつくったコワーキング施設で、「なのに、こんなに違うんだ!」ということを日々体験しています。視野が広がった、とも言えますが、悩みは深くなった、とも言えますね。そんなことも踏まえつつ書いていこうと思います。

[その0:ルールよりマナー、だとは思うんだけど、どうですかね]
まずはじめに、この後の話の全てに関連するんですが、僕は、大人がビジネスをする場としてのコワーキングスペースにおいては、あれをするな、これをしろ、ということをルールで縛るのではなく、利用者がみんなで試行錯誤しながら創る場の秩序=マナーで運営されていくのがベターだと思っています。ルールが多いのって学校みたいだし、「〇〇禁止!」みたいな張り紙ってクリエイティブじゃないし、まぁ要はカッコ悪いですよね。あと、ルールを決める側/守る側っていう関係性が生まれるのもイヤです。

ですが、ときどき利用者さんから「ルールが曖昧だー!」って怒られることもあるんですよね。いや、曖昧もなにも、そもそもルールじゃないんですよ、ということなんですが、「そんなんじゃ困る!使いにくい!」と言われることも。まぁ案件ごとケースバイケース、さじ加減、ってことだとは思うんですが、難しいですよね、という。

[その1:その電話、気になります?]

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オープンスペースで電話をしていいか、どうか。施設によって異なると思うんですが、最近はNGにしている施設さんの方が多いようにも感じます。TENT幕張では電話OKとNGのエリアを分けていて、それも1つの方法だとは思います。僕は個人的には電話OK派で、電話OKというか、「オフィスで行われていることはOK」にしたい、というのがあります。ローカルルールが多くなると覚えきれないですし、その意図・趣旨が読みにくくなって、場の秩序が創りにくくなる。ならば「ここはオフィスなので、オフィスで行われていることはOKです」とした方が、わかりやすいし受け入れやすいかなと。その上で、人に聞かれたくない電話とか、あまりに長い電話とかは、その人自身の判断で、外に出るとか、ブースのようなところに入るとか、していただけばいいのかなと。

ではあるんですが、まぁ僕自身、ユーザーとして使っていると「気になる電話」もっと言うと「やだな、聞きたくないな」という電話って、やっぱあるなぁ、とも。

つまるところ関係性だな、とは思うんです。普通のオフィスならお互い仲間、控え目に言っても知人だから気にならないけど、知らない人の電話はやっぱり気になる。結局、知らない人のことだから、気にさわる。

そう考えると、コワーキングスペースとしては電話を禁止するのではなく、電話が気にならないくらいの関係性を築く、というのがあるべき姿ではないか、とは思うわけです。で、その関係性さえあれば、コワーキングスペースで問題になるいくつかのことって、まとめて解決するんですよね。

と考えるのは、まぁ、理想論としては間違ってないとは思うんです。が、とは言え、そういうことでこの話はおしまい!とは行かないんですよね。なぜなら、ドロップインの方もいるし、今日入会した方もいるし、他人と関わりたくない利用者さんもいるわけで、「利用者さん同志の関係性を築く」っていう作業は、常に進行中・未完成だからです。「仲間ならお互い許せるでしょ」というのは、「それはそうかもしれないけど、全員がそういう状態には絶対にならないでしょ」という話でもあり、いや悩ましいですね。

今のところ僕の仮の結論は、「あ、おれが今している電話は、さすがに周りの人、気になるだろうな」と自分で気づいた人がちょっと外で電話してくれるといいんだけどな、というところです。そういうとこでお互いに「我が振り直」していくことこそが、場の秩序創りになっていくんじゃないかな、と。でも、それは楽観的過ぎるのかなぁ。

[その2:このBGMうるさい?どういうのならいい?]

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コワーキングスペースは図書館じゃないので、唇に指当てて「シーッ」てされるような雰囲気にはしたくない。お互いに邪魔にならない空気は守りつつも、そこは活発にビジネスをしているわけだから、良い感じのザワツキは欲しいんですよね。会話の声をひそめるような状況にはしたくない。
そのために、ある程度の音量のBGMは重要だ、と僕は思っています。ザワツキを誘導するBGM。森の音とかの自然音もアリだと思います。

ただ、これもさじ加減が難しくありません?

歌アリ/歌無し、音量もう少し大きく、小さく、って、これも試行錯誤し続けています。まったく同じ日に、「KOILはBGMが好きです!いいですねー」「BGMうるさいんで音下げてくれませんか」と両極端なことを言われたことも。

最近は

・歌のある無しは意外に関係ない。むしろジャズとかの管楽器の方がうるさく感じることも。曲調次第。
・音は、イメージより少し大きめの方が活気が出て良い

と、思ってはいるんですが、これ、僕がちょっと異常な音楽好きということもあって、一般的な判断とズレているかも、とも思い、今日も悩み続けています。

[その3:子どもと一緒に働きたい?職場に子どもは邪魔?]

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KOILは基本的に子どもNGです。18歳以下はコワーキングスペースに入れないという、これはルールになっています。これでしばらくの間は違和感なくやってきたんですが、最近、んー違うかなぁ、と思うことも。

働き方改革、子育て世代を応援するまちづくり、働き手の多様性実現による国全体の生産性向上、などなど、この数年、さまざまな文脈で「子どもと一緒に働ける職場環境づくり」は重要な課題になってきていると思うし、コワーキングスペースのような場所こそ、その課題を解決する装置になるべきだと思います。日常的な実感としても、子育て中の会員さんとの打ち合わせやイベントがやりにくくて、毎日ふつうに不便だったりします。

あと、高校生・大学生はもちろん、最近では小学生起業家も出てくる時代。というか、国として輩出していかないといけない。そうすると、少なくとも「起業家である/目指している」子どもは受け入れていかないといけないのではないかと。

ということで、子ども一律NGにすることの合理性が、どんどん小さくなってきている気はします。

しますが、しかし、何人もの子どもが泣いたり喚いたりしている環境で仕事なんかできねーよー、というのも事実。まぁ、未就学児童はNG、くらいにするのがベストなバランスかな、とは思ってはいるんですが、声変わり前の子どもの笑い声って、気になるとすごくイヤだったりもしますよねー。子ども同士で騒ぎ出すのも避けなければいけないし。そもそも、同伴の子どもに席や空間を取られるのもどうかと。あ、利用料はどうする?・・・などなど課題は多く、まだ答えを見いだせていません。あと、ママさんの立場になってみたら、仮に就学で線を引くとしたら、子供が小学生になるまでは働くな、または託児施設を探せ、というのは「日本死ね」な感じ。働くママさん専用コワーキングスペースで「お互い様状態」で働けるようにしよう、というのも解の1つだとは思いますが、それって「働くママさんと子どもの隔離」でもある気がして。なので、KOILやTENT幕張のような普通のコワーキングスペースでどうにか出来ないかなーと思ってはいるのです。思ってはいます。ですが、答えはまだない。

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で、この後には「オープンスペースでのお酒はアリ?」というのと「イベントの音ってうるさい?」、そして問題作「コミュニティマネージャーって専門職ではなく何かの兼務じゃないと機能しないのでは?」というのを考えてたんですけど、また長くなりそうだし、特に最後の件はさすがに独立原稿の方が良い気もしてきたので(とか言って永遠に書かないような気もするけど)、今回はここまでにします。明日のアドベントカレンダーは、佐藤 賢一郎さんです!

それにしても、コワーキングスペースの運営は答えがなくて難しくて、楽しいなぁと思います。関係の皆さまに感謝、感謝です。皆さま良いお年をー。

#ビジネス #コラム #コミュニティ #コワーキングスペース



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