第9回「結局、何が言いたいの?」
クリティカルリーダーのかずえもんです。前回のクリティカル・リーディングは「小論文の参考になりそうな社説」をとりあげました。今回は、言いたいことがイマイチわからないという社説を取り上げます。
冒頭と末尾をよく読んでみよう
社説の題材は、「国外にツケを押し付ける環境問題」です。
冒頭部と、最後の段落で言っていることによく注意を払いながら読んでみてください。
最初と最後、注意して読めましたか?
冒頭を抜粋します。
ここではどんなことを言っているのかというと、
1)天然ガスをロシアに頼ったせいで、冬場の天然ガスが手に入らずに欧州が苦労している。
2)「コスト」を国外に押し付け「外部化」してはならない。
という二点です。1)はわかりやすいのですが、2)は何を言っているのでしょうか。
ここでの「外部化」はおそらく環境負荷のような「外部不経済」を他国に押し付けることを指しているのだろうと想像できるので、とりあえずそれで読み進めることにします。
おわりの部分を抜粋します。
ここではどんなことを言っているのでしょう。
1)日本の化学産業では、石油化学事業を切り離す例が進んでいる
2)石油化学事業を切り離せば、それが温室効果ガスの排出を少なくできるという打ち手になる
3)石油化学品は日本の製造業に重要な素材で、グローバルコモディティである
4)輸入に多く依存する「外部化」が進むと、為替動向から「懸念が残る」
5)バランスの取れた温室効果ガスの排出削減策を望みたい
・・・4)がとても分かりづらくないですか?
再び「外部化」という単語が出てきました。
ここで環境負荷のような「外部不経済」を他国に押し付けることを指しているとしてみるとどうなるでしょう。
4)輸入に多く依存して、環境負荷のような「外部不経済」を他国に押し付けることが進むと、為替動向から「懸念が残る」。
なんだかまるで意味が通じなくなりました。
どうやらここは素直に、
4)輸入に多く依存してばかりいると、円安が進んでいるので、値上がりしてしまって不安だ。
として理解する必要がありそうです。
分かりづらいのは、重要な単語が違う意味で使われているから
この社説、結局何がいいたかったのでしょうか。
あんまり輸入にばっかり頼っていると足元をすくわれるよ。ということと、他国に不利益になるような問題を押し付けるべきじゃないよね、ということのどっちも入っているようなのですが、すっきりしません。
このモヤっとした感じを与えるのは「外部化」という言葉の使い方の多義性です。
外部化という単語が、主張の部分と結論の部分のいずれにも使われているところが分かりづらさのポイントでしょう。
主張と結論部は一致するように書こう
人に自分の主張を伝える文章を書くときは、おおむねこんな流れになります。
出だしで言ったことと、最後のまとめに言うことは一致していなければいけません(そうじゃないと、結局いままで聞かされた理屈はなんだったの?となりますよね)。
また、そこで使われるキーワードの意味にゆらぎがあると読者はとても混乱します。
言いたいことがいっぱいあるときは、とくに注意が必要ですね。
それではまた次回!
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