年を跨いで読む『カラマーゾフの兄弟』とN響の「第九」
昨年、12月の半ばころに『カラマーゾフの兄弟』を読み始め、
今、第3部の終盤近くに差し掛かっている。
全4部、エピローグ付きというこの長編小説を、
当初は節分、つまり2月初めには読了したいと思っていた。
しかし、第二部で何度か立ち止まり、第3部も終わらないまま2月に突入してしまった。
今はもう、無理だと諦めている。
圧倒的なスローペースで私が読み続けるあいだに時計は進み、2022年の終わりの日がやってきた。
つまり大晦日。
想定内とはいえ、『カラマーゾフの兄弟』は年を跨いでの読書となり
大晦日恒例、「第九」演奏会のテレビ中継が始まった。
井上道義氏指揮、NHK交響楽団の第九演奏だ。
演奏時間は80分くらいだろうか? 最初は何気なく見ていたけれど、
次第に魅了され、最後は釘付けになった。
N響の演奏も、ソプラノやメゾソプラノの独唱も、合唱も、何もかもが私を惹きつけたが、
何より、タクトを振る井上道義氏の存在感が、
尋常でないほどに凄かった。
彼の、この演奏に賭ける情熱が痛いほどに強く、私の心に迫ってくる。
井上道義氏は、
2014年、67歳の時に咽喉がんと診断され、治療のために
演奏活動を2カ月間、休止している。
井上氏は、2024年での引退を公表しており、
彼がタクトを振る姿を観ることが出来るのは文字通り「有限」、
限られた回数となってしまった。
年を跨いで続く私の読書は、今、第3部の終盤にきて、
長男のミーチャが逮捕、連行され、
いよいよ山場を迎えようとしている。
「第九」で言えば、第4楽章に入り、ソプラノ歌手が立ち上がり、歌い始めるあたりだろうか?
ときは有限で、しかも足が速い。
けれど、
「カラマーゾフの兄弟」読了の日は、もう、すぐそこに来ている。