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郡上おどりを舞う、朝を歩く【オールドレンズ日記】

この国には「徹夜おどり」というものがある。

それは岐阜県郡上市の伝統行事「郡上踊(ぐじょうおどり)」の別称で、その名の通り夜通し踊り狂うという愛すべきお祭りなのだ。
徹夜で舞い続けるのはお盆期間の数日のみだが、7~9月にかけて合計31夜を人々は踊り明かす。

それは全くもって酔狂で、阿呆で、美しいほど愉快な光景だ。街中を人々が踊り狂う様は、歴史の教科書で見たええじゃないかを彷彿させる。ある人は、キツネやタヌキの類いに騙されたかと錯覚したという。

「徹夜ボン・ダンス・フェスティバルには興味ありませんか?」
と、愉快な大学時代の先輩こと韋駄天姐御の誘いに応じるがまま、朝イチで首都圏を抜け出し430㎞の高速を駆けた。

新型コロナの影響で3年振りの開催となった2022年の郡上踊はシーズンを通じて17夜と通常の1/2程度となった。

だが熱狂は止まらない。

人々はカランコロンと踊り下駄を踏みならし、雨にも風にも雷にも動じることなく夢中に踊り続けていた。

雨の中、踊り狂う人々

山の向こうから雷鳴が轟く。豪雨の通知が鳴る。しかしお囃子は止まらない。
浴衣は水着だといわんばかりにびしょ濡れになりながら舞う様は、絵本や小説で出会った”踊る阿呆”ほかならなかった。

窓から差し込む朝日に、長い夢から醒めたような気がした。あれだけ強く降り続いた雨は、どこかへいってしまった。吉田川の清流が鮮明な色彩をもって飛び込んできた。
踊る阿呆の群衆は夢だったのかも知れない、私たちはキツネにつままれたような気分で町へ飛び出した。

昨晩の荒天が嘘のような快晴だ(これはiphone撮影)
はいて楽しい…踊り下駄
街灯にも郡上踊の文字が
軒先の花々
吊り鶴が夏の名残風に揺れていた
もうすぐしまわれてしまうのかな
さようなら郡上おどり、ありがとう、また来年!

来年はもっと通おう。踊るのだ。阿呆になるのだ。くよくよしがちな毎日で、夏を惜しみセンチメンタルになっていたことがばかばかしい。

私の踊り下駄

あのお囃子を聴くために、下駄で地面を踏みならすために、今年よりも上手に春駒を舞うために。
さてどうにか生き抜こう、などと柄にもなく思うのだ。

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