見出し画像

JKの教え子ちゃん、読書はいいもんだぞ

活字を貪るガキことわたくし

わたくしは子供の時分より学校やら国やら、オトナの組織を信頼しない子供だった。そのため夏休み前に掲示される『推薦図書』の類は読んでもつまらんと叫び、道徳の時間は目を開いたまま寝る練習をする良い機会と捉えていた。

だが、私の情緒面は書籍の類に育てられていた。ファンタジーに純文学、推理小説、エッセイ、ノンフィクション、SF……。「お前に本を買い与えたら家の床が抜ける」という理由で購入は基本的にNGという教育方針に基づき、図書館や金持ちの友達を頼った(間接的に金持ちの友達の親をそそのかせて本を買ってもらい、それを借りる手法)。
活字であればなんでも読む。本はもちろんだが、雑誌に漫画、新聞にガイドブック。何もなければ床に散らばるスーパーの特売チラシでもよかった。
とにかく読んだ。読んで読んで、泣いて笑って、チクショーと叫び、ときには夜中のトイレを怖がり。遊び相手のいないひとりっ子の時間を埋めるのに、活字という相棒は心強いものだった。

そんなこんなが転じて、文章を書くことで生計を立てられている現状は天職といったところなのだろう。三十路になって回顧し、うんうんとひとり頷いている。

推したい気持ちvs欠落した発話的コミュ力

「なんかおすすめの本ありますぅ?」
と、女子高生の教え子ちゃんに聞かれて、まさに鳩に豆鉄砲だなあと私は頭をかいた。
私は物書きの傍らで家庭教師をしているのだが、その休み時間に本の話になったのだ。教え子ちゃんは、本屋で無料配布されている新潮や角川の『夏のブックフェア』小冊子をパタパタと振り、「なんかわかんなくて」と首を傾げた。
どれ、と小冊子を手に取ってみると、なるほど興味深い。出版社のカラーにもよるが、表に打ち出されているのは最新のエンタメ小説が多いのだが、基本的には私の学生時代と変わらないラインナップが紹介されている。いわゆる普及の名作というやつだ。
「うーむ、これもあれもそれも……、全てが名作ですよ教え子ちゃん」

ふむ、口頭で説明しようにも先走る感情をうまく言語化できん。ならばブログなどという呑気な個人媒体で勝手に推させていただこうじゃあないか。

ということでまずは、思春期只中青少年へ贈る名作中の名作、湯本香樹実氏の『夏の庭』から話を始めようと思う。

(つづく)

この記事が参加している募集