ニューノーマル時代における、コミュニティの必要性とコミュニティのジレンマ
VUCA時代におけるコミュニティの必要性とは?
これまでの日本社会では、良い大学に入って有名な大企業に就職すれば一生安泰、というような風潮があしました。しかし、昨今はAIや科学技術の台頭によって、先の読めない時代となってきており、VUCAの時代と言われるように先の読めない時代となってきています。「VUCA(ブーカ)」とは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた言葉です。これら四つの要因により、現在の社会経済環境が極めて予測困難な状況に直面しているという時代認識を表します。
2020年に私たちが直面したコロナウイルスによるパンデミックでも、昨日までの当たり前が当たり前でない世の中になってきていることを体感されている方も多いのではないでしょうか?
私自身も、現在旅行業界で新規事業の仕事をしているのですが、まさにこれまでと同じやり方でやっていては立ち行かない状況の渦中にいます。私自身決して今の状況が嬉しい訳ではありませんし、生活面ではとても苦しい局面に立たされていますが、それでも、今回のパンデミックは起こるべくして起こったものなのではないかと感じています。
なぜなら、これまで通りのやり方に変化を起こさなければいけない局面だと感じるからです。例えば、日本の学校教育や大企業の伝統的な人事制度、日本に古くからある既得権益、終身雇用制度などの私たちにとって当たり前になっていることや、航空業界、広告業界、教育業界、人材業界、IT業界などの業界の壁など、昨今の複雑性が増している世の中においては、時代に合わせて変革をしていく必要があると思っています。
特に、今回のテーマである、コミュニティに関連したところでは、これからは「業界の壁」がなくなってくると思っています。
例えば、航空業界であっても、複数の事業の柱を構築するという観点で、教育事業や不動産事業、ゲーム事業、IT事業など時代のニーズにあった取り組みをしていくことが求められてきています。
このように、新たな価値を創出し続けるために、異なる業界の人が共通のミッションを軸に集まり、ともにエンパワーしていくことのできる「コミュニティ」が大きな役割を果たすと考えています。
コミュニティを活性化するために必要なこととは?
コミュニティ立ち上げ初期(50人程度の規模)開拓期
コミュニティ初期に参画するメンバーは、正解がない中でも比較的自分で行動し積極的に活動を行うことのできる「イノベーター型」人材が多く、熱気に溢れている状態に保ちやすい。
積極的な参加者:受動的な参加者=7:3 くらいのイメージ。
初期は運営側と参加者の関係性もフラットで、多様なステークホルダーで新規のプロジェクトを立ち上げるようなイメージでコミュニティも組成されていく。
運営は、コミュニティの意図や共通ミッションなどを常に発信し続ける必要があり、初動を生み出すまでの土壌づくり(①コミュニティメンバー間の交流機会、②イベントなどでの情報発信、③PJT作成におけるサポート、④コミュニティメンバーへの小まめなヒアリングなど)を中心に相当なパワーが必要。また、フラット・オープン・失敗OKな風土を感じてもらうこと、参画メンバーの中でも特に意欲の高い会員の方を巻き込みながら、運営を行っていく。熱量の高い人割合を交流などを通じて増やしつつ、一歩踏み出すことに躊躇している層の方々にも、挑戦してみたい、できるかもという感覚を持ってもらえるように働きかけ続ける。挑戦・失敗OK・イノベーションを起こそうというワードで機運を醸成し続けることが大事。
<初期ポイント>
・イノベーター層の巻き込み
・熱量の高い人を増やす仕掛け
・挑戦OK・失敗OK・イノベーション機運醸成
コミュニティ立ち上げ中期(150人程度の規模)
コミュニティ立ち上げ初期から参加しているコミュニティの中核を担っている人を運営に巻き込みながら、新たなメンバーが加わると、初期よりも多様性が増し、活気で溢れる。ただし、初期参画メンバーのように、「イノベーター型」の割合が減り、
積極的な参加者:受動的な参加者=5:5 くらいのイメージ。
コミュニティ立ち上げ初期と同様に、積極的に活動しているメンバーを中心に、自らプロジェクトや提案を行なっていける風土の醸成、運営体制の整備などを行なっていくフェーズ。
プロジェクトの立ち上げフロー、コミュニティのポジティブルール、メンバー情報が知れるプロフィール、不明なことがあった際の問い合わせ先などの情報を整備し、いつでも誰でも使いやすい状態に整えることが大事
合わせて、初期から参加しているメンバーだけで盛り上がり、身内感が出過ぎてしまうと、途中から参加したメンバーが入りづらさを覚えてしまうため、新しいメンバーがコミュニティに馴染みやすくするためのサポートは意識的に実施が必要。
定期的な交流会や、イベントなどで出来るだけ多くの人と顔見知りになってもらえるような仕掛けを作れると良い。
<中期ポイント>
・運営へのメンバー巻き込み
・運営の仕組み化
・フラット・オープンな風土醸成
・新規メンバーに親切な運営サポート体制
コミュニティ立ち上げ後期(150人以上〜)
コミュニティが拡大していくにあたり、参加人数が増えると同時に、以下のような割合に変化する。
積極的な参加者:受動的な参加者=3:7 くらいのイメージ。
コミュニティへの参加目的も多様化し、①運営などの中核を担いたい人、②企画を立ち上げて賛同者を募りたい人、③自分で企画するほどではないが何か面白いものがあれば参画したい人、④情報収集をしたい人、⑤コミュニティ内の人と交流したい人、のような多様な参加目的に分散してくる。
コミュニティの規模や拡散力は人数が増えた分上がるように感じるが、コミュニティに対する期待がバラバラであるため、初期のように一致団結して全員で高い熱量を保つことが難しくなる。
このフェーズでやるべきことは、①運営体制を拡充すること、②企画を立ち上げたい人とそこにジョインしたい人の熱量を引き出せるための施作に力を入れつつも多様なニーズを受け入れる、③勉強会・交流会などの機会を可能な限り頻繁に企画し満足度を高めてもらうことの三つだと考える。
<後期ポイント>
・運営体制の拡充
・多様なニーズを受け入れる
・勉強会・交流会などの機会を作る
コミュニティのジレンマを克服するために必要なこと
コミュニティが大きくなるに比例して、コミュニティ参加者同士の関係の質は低下していってしまうので、何を目的としてコミュニティを作りたいのか?を考えた上で、コミュニティの規模や運営方法を検討していくと良いと感じている。
関係性の質を優先し、イノベーター層を中心に濃い繋がりからプロジェクトが自発的に生まれるコミュニティを作りたいのか?
それとも、世の中に広く発信することに重きを置き、参画関係者数を重要視して運営していきたいのか?についてまず初めに考えていくことが重要だと考える。
なぜコミュニティに価値が生まれるのか?
コミュニティを運営することは、多様なステークホルダーの意見を抽出し取りまとめていくだけでなく、同時にコミュニティ全体の運営を見たときに今そのコミュニティがどのフェーズに属していて、何に力を注いでいく必要があるのか?を客観的に見ることのできる能力が必要。容易なことではないし、単独で行うよりもパワーと時間がかかるが、その分、コミュニティが活性化した時の推進力は大きく、単独では成しえないムーブメントを起こすことができる。今の先の読めない、正解のない時代だからこそ、コミュニティにおける多様性をいかに活かせるか?がキーになってくるのではないかと思う。
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