A案B案

「A案」と「B案」、会議でどちらも選べないときは?

会議でこれからのプランについて話していて、「A案」と「B案」があるとします。いずれの案も支持する人がいて、なかなか決まりません。

こんなとき、あなたならどうしますか?

「多数決」で本当に納得出来てる?

「場づくり」とか「民主的な会議」という観点から言うと、とりあえず避けたいのは、「多数決」です。

2つの案が平行線をたどる場合はだいたい、どちらの案も、これという決定打にかける「たいしたことのない案」なのです。たいしたことのない案だから、気持ちがひとつにならない。

選択肢そのものが、既にダメなのです。

本当は「ラーメン」が食べたいときに、「ねぇ、刺身定食とカツカレー、どっちがいい?」とか笑顔で聞かれても困るでしょう?

「A案」と「B案」があって、どちらも悪くないけど、なぜか選べない。

これは、「本当はラーメンが食べたい」ということに、まだだれも気がついていないのとかもしれません。

「自分の内側」をスキャンしてみよう

場づくりの基本は、「自分の内側をみつめる」ことから始めること。

「A案」「B案」それぞれに対して、自分はどう思っているのか?
まずそれを、まっさらになって、ゼロベースで、自分の内側を探ってみます。

「まっさらになってゼロから」が難しいときもあります。それは、他人の考えや、周囲からの期待の影響下にあり、「自分の考え」と「他人の考え」の区別が曖昧になっているときです。(場づくりでは、こういう状態を「混乱している」と呼びます。)

はっきり言いますが、他人の考えとか、周囲からの期待とか、そんなことはどうでもいいのです。

そうして自分の内側を探ったら、出てきた感想や考えを、正直に語ります。
そして、相手の言葉に耳を傾けます。

ある場において、一人の人間が「正直に語る」というのは、ふつう考えられている以上の、大きなことなのです。

こういう局面での「やりとりのコツ」があります。

1.自分の内側を探る(本当のところ、自分はどう思っているだろう?)
2.小さなことでも、気になることが出てきたら、それをそのまま語る
3.部分的にでも新しいアイデアが出てきたら、それをそのまま語る

1は、基本中の基本です。常に求められる態度でもあります。
2と3は、ついつい「語らずじまい」になってしまう内容です。

なぜ「語らずじまい」になるかというと、「些細なことだから」とか、「思いつきだから」とか、「遠慮」が出てきてしまうからです。

でも、じつは、これは大きな思い違いです。
(理由は後で説明します。)

A or Bという「二分法」から自由になる

これらのことが語られると、「A案/B案」という選択軸が揺らぎ、様々な(隠れていた)可能性が語られるようになります。

こういうときは、なにかに気づいたような感覚があったり、ユーモアやエキサイティングな感じが出てきたり、何人かの人の印象がぱっと変化したりします。

こういうやりとりが出来ると、きっとアイツが出てきますよ!

なにが出てくるかって? ──「C案」です。

想像を超えたスゴイ奴!「C案」が登場!

「場づくり」という観点から解説します。

会議は、「人の力」というより「場の力」で成立します。
「場」は、そこに参与する人々に、様々なメッセージを送ってきます。

メッセージと言っても、「言葉」ではないんです。

それは、「浮かんできた疑問」や「ちょっとした思いつき」、そして「なんらかのイメージ」「フィーリング」などなど。
ですから、「浮かんできた疑問」や「ちょっとした思いつき」は、それを抱いた当事者個人のものではないんです。

「場」が、その人を通して全員に送ってきたメッセージです。
だから、受け取った人は、それを全員に伝える責任があります。

その「疑問」や「思いつき」は、「A案/B案」という選択に、そのまま役に立ちそうなものではないかもしれません。

「見当外れかも…」と思えてきても、そのままでいいんです。
それは「次の扉を開く鍵」にすぎません。

それが会議の場に出され、周りが受け止めることによって、扉が一枚開きます。すると、まただれかがなにかを思いつく……。それは鍵なので、さらに次の扉が開く──。

これを続けていくと、出会えるもの。
こうしないと、出会えなかったもの。

それが「C案」です。

本当に求めていたものに出会える喜び

「C案」は、さっきの食べ物の例だと「ラーメン」です。

・魚河岸の新鮮な魚介をつかった「刺身定食」
・並ばないと食べられない大人気の「カツカレー」

こんな感じだと、本質が見えにくくなり、判断に様々な雑多な要素が入り込んできて、「刺身定食/カツカレー」の二者択一になりがちです。

でももしかしたら、本当は、「ふつうのラーメン」を、求めている場合だってあるかもしれません。

あるいは、ラーメンと呼ぶのがはばかられるような、まったく新しいなにかかもしれません。

案に固執し、視野が狭くなり、守りに入る。

そうすると、鍵は無視され、扉は開かず、そこで出てくるはずだった「C案」は葬られてしまいます。

「場」のなかに、「答え」があります。

会議の場づくりがうまくいくと、自分一人ではたどり着けないところに行けます。見たことのない景色を見られます。会議の場を鍛えるのは、簡単ではありません。時間がかかりますが、楽しいですし、そのプロセスそのものが「活動の場」です。

みなさんも、よい会議を!

\Question/
あなたは、二者択一の場面なのに、どちらも選べないとき、どうしていますか?

長田英史(おさだてるちか)|プロフィール
NPO法人れんげ舎代表理事。「場づくりクラス」講師。まちだNPO法人連合会会長。
1972年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。和光大学経済学部経営学科卒業後、同大学人文学専攻科教育学専攻中退。教育学や心理学、運動論、身体論などを学ぶ。1990年、在学中にかかわった「子どもの居場所・あそび場づくり」の市民活動に学生ボランティアとして参加し、卒業後は就職せず、それを仕事にする。
いわゆる中間支援組織ではなく、自らも現場で活動する「プレイヤー」として、「場づくり」の哲学とノウハウを共有し続けている。
☆メルマガ「場づくりのチカラ」を無料配信中。 http://bazukuri.jp/

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