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ドラえもんづくりに奮闘する最年少助教が、研究センター長になりました。

ドラえもん生誕50周年記念の今年は、図ってか図らずか世間も私自身も激変の1年でした。世間では、新型コロナウイルスの蔓延によって私たちの生活様式が大きく変わりました。一方で、私自身は今年3月に博士号を取得し、4月に日本大学に助教として着任・大澤研究室ができました。そして、12月より新たに次世代社会研究センター (RINGS) を設立し、センター長を務めることになりました。

なぜこのようなことが起こったのか?なぜやるのか?どういう意味があるのか?私なりの言葉でまとめてみようと思います。

私には夢が2つあります。

1つ目の夢は、ドラえもんをつくることです。

記憶がないくらい前から、「ドラえもんをつくりたい」とずっと思ってきました。幼少期は誰にも本気にされない夢でしたが、研究者という道を歩み始め、多くの仲間と繋がることで、だれも想像していなかった未来への道を切り開く勇気と自信が今の私にはあります。

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2つ目の夢は、人を幸せにすることです。

これはどちらかというと最近できた夢です。ドラえもんをつくる活動の中で、人に支えてもらって、力をもらった経験をたくさんしました。人に助けられるたびに「この人が幸せになることに貢献したい」という思いが生まれ、幸せになって欲しい人の数も年々増えてきました。彼ら彼女らの苦しみに寄り添い、喜びを共有しあいながら生きていきたいのですが、このまま仲間が増え続けると、自分1人では収集が付かなくなってしまういそうで、人が幸せになれる環境づくり・場づくりに本気で取り組むようになりました。

夢は2つだが、やることは1つ

よく、二兎を追う者は一兎をも得ずといいますが、私の場合は少し違うかなと思います。

ドラえもんをつくることと、人を幸せにすることは、2つのように見えて1つだと思うからです。私からすると、人を幸せにする取り組みの中でドラえもんができるのであり、ドラえもんをつくる過程や結果を通して人を幸せにするからです。

これまで、関わる人が幸せになりながらドラえもんがつくれる環境・組織をつくることにチャレンジしてきました。そしてそれが1つの形になったのが、今月設立したRINGSです。

RINGSとは

では、本題のRINGSとはなにかを説明します。

RINGSイメージ

RINGSは、多種多様な立場の個人や組織が参画したコミュニティベースの産官学連携の研究教育拠点です。現在はセンターをコミュニティとして開き、大学関係者(学生・教職員)やパートナー(企業・団体・自治体など)、多種多様な専門性をもつプロボノ(個人として参加する専門性活かしたボランティア)のコミュニティ基盤の構築を進めています。今後は、高校生やメディア、他大学とも接続していきたいと考えています。

従来の産官学連携のほとんどは、プロジェクトベースであったと捉えています。つまり、「産官学連携によって〇〇という活動をします!」のように、なんらかのお題がありました。

一方今回のコミュニティベースは、語弊を恐れずに平たく言えば「まずはお互い知り合って、仲良くなりましょう」というものです。もちろん、ただ仲良しごっこをするわけではありません。コミュニティというものを徹底的に研究し、価値が創造されていく仕組みを、従来よりも一段階メタ的に設計していくのです。

プロジェクトベースvsコミュニティベース

私たちの研究室では、このようなコミュニティベースで多様な価値を創造していくための組織作りについて研究してきました。

これまでの取り組みを一挙にRINGSに集約し、コミュニティベースによる大学の新展開を狙います。

これから取り組むこと

では実際何をやるのか?という話をまとめたいと思います。端的に言えば、コミュニティから価値が生まれる仕組みの下地作りです。

自主創造教育

自主創造は日本大学のキャッチフレーズでもあり、私にとって日大の好きなところです。自ら学び、考え、道を開くことを意味します。

私の研究室では「全員この知識を学びなさい」といった従来のトップダウンの教育はほとんどありません。自らが進む道を見つけ、心からその道を走り抜けたいという高いモチベーションを持ってもらうことさえできれば、あとは個々人に合うチャンスを提供していければ良いと思っています。

まずはセンターに関与するあらゆる立場の人が「自分の進む道を決める」出発点に立てるよう、カリキュラムの準備を進めています。

AIを使った自主創造・チーム形成のサポートの基盤作り

コミュニティを作っていく上で、人数が多くなればなるほど、誰が所属しているのかがわからなくなっていくといった問題が広くあると思います。この点に関して、テクノロジーで解決していけないかと画策しています。

私の専門は人と関わるAIについての研究です。 例えば、自分の進む道を決めるワークをこれまでは人手で実施してきましたが、そうするとセンターとして受け入れられる人数に限界が出てきます。もしこのワークを自動化できれば、よりたくさんの人がセンターに参入できるようになります。また、人との繋がりを持つきっかけについても、自動でリコメンドをできれば、どれだけ人が増えても繋がりを逃すことがなくなるかもしれません。

なぜ大学でやるのか?

このような取り組みを進める上で、必ずしも大学としての立場から実行する必要はありません。むしろ大学という制約がやりたいことの実現に足枷になってしまうのではと多くの方に心配していただきました。ですが、私は大学の立場で実施することに強いこだわりがあります。なぜなら大学にコミュニティができた時、大学のあり方が変革すると思うからです。

このことについて、最近人口爆発をよく例にあげて議論をしています。元々狩猟中心だった時代、食糧に限界があるために人口はあまり増えていませんでしたが、農耕・牧畜を発明したことで一挙に食料問題が解決し、人口爆発につながりました。

今の大学をある見方で見ると、狩猟中心だった時代の人類のような側面があると思います。当時を「狩で手に入る食糧に限界があるので人口は増えず、人口が増えないため狩で手に入る食料が増えないという状態」だったとするならば、現在の大学は「学生数に応じた収入しか入らないので大学の教職員数が増やせず、教職員数が増えないために学生を多く受け入れることができない状況」かなと思っています。もちろんこの均衡状態で理想的な場合もありますが、学生により充実した学びを提供し、教職員のより良い職場環境を作るための抜本的改革を難しくしている側面もあるようです。

そこに、農耕・牧畜に対応するようなきっかけが、大学で作られたら、大学は急速に成長しその本質を変えていくかもしれません。私はそのきっかけがコミュニティではないかと思っているのです。つまり、今まで大学に関与してこなかった人が大学で活動し、繋がりを学びに変えるチャンスさえあれば、学生は多種多様な繋がりから今まで以上の学びを得ることができます。また、教職員は提供する最低限の学びが確保されれば、より先進的な新しい取り組みにチャレンジすることもできます。

こういったブレイクスルーが起こった未来の大学だったら、人が幸せになりながらドラえもんがつくられていく場所になりうると思います。私はその未来の大学への出発点としてRINGSを位置付けています。

なぜ日本大学文理学部でやるのか?

では、一方で数ある大学/学部の中で、なぜ日大文理でやるのか?ということもよく聞かれます。実は私は教員としての職はこの日大文理しか受けなかったというくらい、こだわりを持ってこの場所を選びました。

当時の思いについては、大学の先生になる直前に、以下の記事で取材いただきました。

私がなれるかは別として、例えば東大の教授になったとして、優秀と言われる人たちがたくさん入ってきてくれて、よい業績を出してくれるようになったら、それは研究者として成功と言えるだろうと思います。

でも私はどちらかというと、
「偏差値に代表される既存の価値軸でまだ認められてなくて、燻っている人たちと一緒に活動して、彼ら彼女らが自分の道を見つけ成長する」
「そしてそんな人たちと世の中にまだない価値を創生できるようになったら・・・」
と想像すると、私はその未来にそこしれないモチベーションが湧いてくるのです。

RINGSが日大文理にある価値

では、研究センターを日大文理に作る価値は何か?それは2つあると思っています。

日大でやる理由

高校生へのインパクト

例えば東大に面白いコミュニティベースの研究センターがあったとしても、敷居が高くて入っていけない人がほとんどだと思います。でも、日大文理であればちがいます。偏差値で言えば記念受験から滑り止めまで一番幅広いポジションの人が受験しうる偏差値50程度というランクですし、全く異なる18学科が集まった日大文理ではほとんどの高校生にとって「専門性が合わない」ということはないはずです。

偏差値や専門性という枠を取っ払って、志を同じくしてくれる高校生が一気に集まってきたとしたら、コミュニティとしての文化が急速に育ち、価値を創生する場へと急成長することができます。

文理学部→日大→日本全体へ

日大文理で成功するシステムは、学問の壁を超えていると言えるはずです。であれば、日大文理での成功は、日大全体に展開していくというのは当然起こっていくはずですし、日大での成功事例は「もしかしたらうちの大学でもできるかも!」という感覚から他大学に広がっていく可能性も高いと考えられます。

「みんなで」ということを実現していくスタート地点として、日大文理は最高の場である思っているわけです。


センター立ち上げを経験する中で、想定外だったこと

日大に入る前から研究センターの構想をずっと温めてきて、精一杯いろいろなことをあらかじめ想定し、慎重にことを進めたつもりでした。ですが2つ大きく想定と外れたことがありました。

想定外その1: 大学のリアクション

日大に入ってすぐの頃、ちょっとしたきっかけの時に「研究センターとかって作れたら面白くないですか?」と周りの先生にお話して見ていました。正直なところ、口にする前は「目の前の授業のクオリティをあげるとか教員としての実力を数年磨いてからにしなさい!」なんて言われるのかなぁと勝手に警戒して、かなり慎重に話をしていました。

しかし、先生方のリアクションは想定とは全く違いました。みなさんが「是非やりたい!」と強く賛同してくださって、応援してくださる声が、学部上層部へと急速に伝搬していき、結果このスピードでのセンター設立が実現しました。当初どんなに早く実現したとしても2年はかかると思っていたので、着任して8ヶ月でできたことに自分でも驚いています。

こんなにも前向きな学部なら、新しい大学の形で世の中に価値を届けられるかもしれない。むしろこんないい先生が集まった場所を、もっともっと良い場所にしなければならない!!と、強く思っています。

その2: パートナーのリアクション

日大文理にコミュニティベースの研究センターを作るといって、どれだけの企業・団体が賛同してくれるだろうか。それが現時点でセンターを立ち上げるとなったときの最大の不安でした。日大の若手教員のいうことは、全く相手にされないのではないか?と。しかしこれも予想は大きく外れました。

もちろん全てではないですが、お話しさせていただいた多くの企業で趣旨に賛同していただけました。もちろんやりたいことを全て理解してもらえたわけではないけれど、それでも目指すべき未来は強く共感してもらえたのだなと思います。

かなりビジョナリーな提案だったために、結果多くの組織でかなりの上層部にまで話を聞いていただくに至ったことも、驚きでした。

記者会見を実施します!

RINGSにかける思いは語り尽くせる気がしませんが、12月23日11時より直接センターの設立に関してお話しさせていただける機会をいただけることになりました!

記者会見は、ベネッセの取締役や、豊田市長、弊学部長など、全く違った分野の組織の上層部があつまって、目指すべき未来について語るといった内容になる予定です。

多くの方に聞いていただければ嬉しいなと思っています。お気軽にお問い合わせください!

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報道関係者各位
次世代社会研究センター設立に係る記者会見のお知らせ

平素より,本学部の教育研究活動についてご理解,ご協力いただき誠にありがとうございます。このたび,本学部で新たに設立した次世代社会研究センター(Research Institute for Next Generation Society, 略称:RINGS)の設立経緯,これからの活動を紹介する機会を設けることといたしました。つきましては,記者会見を下記のとおり実施いたしますので,ご案内申し上げます。

             記

1 日時  2020 年 12 月 23 日(水)11 時~12 時(10 時 30 分受付開始)
2 会場 日本大学文理学部 本館 1 階 ラーニングコモンズ
    (東京都世田谷区桜上水 3-25-40)   ※オンライン参加可
3 出席予定者
・日本大学文理学部長 紅野謙介
・日本大学文理学部 次世代社会研究センター長 大澤正彦
・株式会社サイバーエージェント AI Lab 主任研究員 馬場惇
・ソフトバンク株式会社 人事総務統括 人事本部 副本部長 源田 泰之
・電気事業連合会 広報部 副部長 江草 岳
・株式会社ベネッセコーポレーション 取締役 事業戦略本部 本部長 上田浩太郎
・ロート製薬株式会社 CEO 付兼未来社会デザイン室長 荒木健史
・豊田市長 太田稔彦
4 内 容
 (1) 学部長挨拶
 (2) 次世代社会研究センター設立の経緯・今後の活動について
 (3) パートナー企業・地方公共団体よりご挨拶
 (4) 質疑応答
 (5) フォトセッション
5 参加方法
 sugiura __at__ chs.nihon-u.ac.jp ( __at__ を @に変更)宛に以下6項目をメールにてご提供ください。
 (1) 所属(メディア)名
 (2) 氏名
 (3) 連絡先(メールアドレス・電話)
 (4) 来場者数
 (5) スチール/ビデオ
 (6) 参加方法(対面 / WEB)
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おわりに

良くも悪くもいろいろなことが起こった2020年。ドラえもん生誕50周年の節目であり、自分にとっては学生と社会人の境目であり、そして社会は新しい生活様式へと変わった節目でした。そんな2020年の終わりに、未来へ向けて、新しい挑戦を始められることを嬉しく思っています。

日本中、世界中で、前に進めず苦しんでいる人が前に進むきっかけになるような場にできたらいいなと思います。学内の学生はもちろんですが、例えば様々な不安に苛まれている子ども達、中高生、主ふ、社会人、シニア世代、その他あらゆる立場の人に、この取り組みが届いたらいいなと思っています。

お問い合わせ先



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