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『俺の本を読め』

著作を一週間こっきりで書き終えて、試しに俺はサイコロ二つ振ってみた。6と6のゾロ目だった。軽くミリオンセラーを取れると神様からお墨付きをもらったようなもんだ。

思えば俺は、ガキの頃からずっと何をやっても勝ちっぱなしの一番だった。

通知表の体育は全生涯通じてオール5だ。

勉強だけじゃあない。走りでもチャリンコでも、いっつも俺はトップでコーナーに突っ込んだ。場外にはみ出して、ダンプに正面衝突するというオマケつきだったが。

俺は狩猟の達人でもあった。田んぼや川でデカイのを沢山取らせたら、まず俺の右に出る奴は一人としていなかった。

女にもモテた。ケンカっぱやくて。俺のモットーは先手必勝。度胸も一級品だ。アパートの屋上からダイブしても死ななかった。

他人は言った。ボコボコにされてんのは、お前のほうじゃねえかと。けれど先に手を出したのは、必ず俺だった。ボコられても気持ちで勝っていれば、それは俺の勝利だ。だからガキの頃はドチビだったけど、男連中は強気すぎる俺を腫れ物扱いした。イジメようにも俺をイジメようがない俺を、他人はイジメ退治の請負人と呼んだ。

そんな正義の味方の俺様が、野球を見に行こうもんなら、清原のホームランボールは外野席の俺の手中にすっぽり収まったもんだ。

ビーチフラッグは、俺の十八番だ。今思い出してもワクワクする。あの他人を押しのけ宝をもぎ取る感覚は。足が断トツに速いわけじゃあない。スタートダッシュでまず俺は、負けたためしはねえんだよ。

そんな俺を、他人はフライングマンと呼ぶ。

うず高く積まれた俺様の著作を目の前にして俺は思う。近々ミリオンセラーという称号を手にした後、先生と呼ばれながら俺は室蘭のスナック街をハシゴするだろう。

たまに、あさっての方向に走り出した、スーパーサイヤ人って、雑音が耳に届く。

なんとも思わない。俺は妬まれることには慣れている。俺は新型パックマンをど突き倒すことを期待されている、と思う。そんな勘違いをよくする。

今日もAmazonの売れ筋ランキングとにらめっこだ。

新聞沙汰になったとたん、34567番から一気に850番まで駆けあがった。

さすが、俺、探偵作家土木警備員の称号を持つ、俺の著作。 

サイコロ占いは的中した。

一月前は引越作業員、明日から交通誘導警備員。

俺はバカツキだ。ついに実入りの良い、デッカイ探偵依頼も舞い込んだ。

宇宙人の捜索依頼らしい。

最後に一つ、言わせてもらう。

俺は素面だ。

『わたし、探偵になっちゃいました』

https://www.amazon.co.jp/dp/4344930398/ref=cm




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