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『宝の在りか』

朝5時前に、私たちは目を覚ます。私たちの毎日は変わらない。子供たちを起こさないように家をそっと出て、牛舎に明かりを灯す。パイプラインミルカーやバルククーラーの電源を入れ、搾乳の準備を始める。

私たちのやることは、ほとんど毎日変わらないのかもしれない。けれど季節は変わる。移ろいゆく季節に、そっと、少しだけ、足並みを揃える。何故ならそれが私たちの仕事だから。

私の連れ合いが、搾乳をしている。その間、私は、子牛たちにミルクを与えている。

男は夢ばかり見て、荒野へ一億光年分の価値のある宝物を探しに行くだとか、いつもふざけたことばかり言う。けれど私は宝の在りかを知っている。

金星と三日月と牛舎が一列に並んだ。

12月中旬の夜明けは近い。

別海町中春別 小幡牧場にて。

写真 小幡マキ 


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