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【女子高生エッセイ】『イヤホン•ガールにさよならしたい🎧』

今回はこの記事をもとに女子高生エッセイを書きました!⬇️


私はイヤホン•ガールを卒業したい。


私はイヤホンにいい思い出がない。

特にワイヤレスのやつ。


音は聞きやすいし持ち運びも便利である。

それでもどうしても相性が合わなかった。

私はワイヤレスイヤホンを3回も家出させた。


まず記念すべき1号は中学3年生の時にサンタクロースが持ってきた。

薄くコーラルピンクの色がついた可愛らしいデザイン。

1号と呼ぶのは少々かわいそうなので、一郎と呼ぶ。

一郎はあのクリスマスの日から学校のある時間以外は私の耳元で音楽を奏でていた。

塾に行くにも図書館に行くにも私たちは一緒だった。

どんな日でも1曲目はback numberのヒロインだった。

当時付き合っていた相手が音楽の時間に弾き語りでこの歌を歌っていて、今でもこの曲を聞くとその人と一郎のことを思い出してしまう。

彼が旅立ってしまったのは高校1年生のころ。

電車通学にまだ慣れていない6月。

いつも通り一郎を両耳に装着して覚悟を決める。

満員電車の中でサラリーマンや学生にぎゅうぎゅうに押されてつぶされる。

満員電車から抜け出すと外の音がやけにうるさく聞こえた。

解放感なのか?と思いながら再生中の音楽を確認する。

『SEKAI NO OWARI サザンカ』

…あれ?

耳を触ってみると、なんと右側の一郎が行方不明になっていた。

振り返ってホームの地面を見る。

やはり一郎はいなかった。

きっと電車の中にいると思って問い合わせたが何日経っても見つかることはなかった。

左側がないとブルートゥース接続ができないのでさよならを告げるしかなかった。


父親は気にするなと言って一郎と同じデザインのホワイトを購入してくれた。

この子の名前は二郎とでも名付けよう。

彼には約1年間お世話になった。

通学の電車では落とさないように一駅ごとに耳に二郎がいるか確かめるようにした。

高校2年生の時に私は学校のSDGs研修ということでシンガポールへ訪れた。

もちろん二郎も行きの飛行機からずっと一緒だった。

二郎とはよくMrs.GREEN APPLEを聞いた。

当時、とても仲の良かった友達が1番好きなアーティストだったので覚えようと必死になって毎日聞いていた。

最近、テレビでミセスを見かけるたびにその友達の顔と二郎のことを思い出す。

シンガポールの移動中のバスでも私は二郎とミセスを聞き続けた。

1週間のシンガポール生活を終え、日本へ帰国する飛行機に乗る時間になった。

時刻は向こうの現地時刻で23時ごろ。


離陸するとすぐに研修メンバーの半数は眠りについた。


ぼーっと目の前の飛行情報を見つめながら1週間を思い返す。

虫がたくさんいる寮、おいしくない日本食、思ったより汚れているマーライオン。

計算されたビル設計、多様な言語と民族、環境に配慮された社会構成。

はあ、楽しかった。また行きたいな。

気づいたときにはもうみんな眠りについていた。

飛行機の音の圧が強くてなかなか眠ることができなかったので、しばらくは次郎と音楽を楽しむことに決めた。

1週間ミセスを聞き続けて少し飽きていたので味変をしようとプレイリストを漁った。


目に留まったのはMr.Children。


今の気分は何だろうと思いながら選んだ1曲目。

『海にて、心は裸になりたがる』

シンガポールの海、そこまで青くなかったなあと思いながら窓の暗闇を見つめた。

ゆっくりと目を閉じる。

二郎の声が遠くなっていく。


次に目を開いたときには午前7時になっていた。

二郎の声は聞こえなかった。

慌てて床を見ると片方だけ二郎が落ちていた。

拾い上げてケースに戻す。

また右側だけをなくしてしまった。

どれだけ探しても二郎は見つけることができなかった。

そうして二郎ともお別れすることになった。


父親は大丈夫だよと笑って二郎と同じホワイトをくれた。

例にならってこの子は三郎。

この子はなかなかの問題児で2回ほど故障して修理に出した。

三郎が来てから半年、私の体調がよくなくて一緒に外出する機会はほとんどなかった。

はじめは入院中に動画を再生するときに役立っていたが、退院してからは睡眠導入の音楽を流す目的でしか使うことがなかった。

学校に通えるようになってからも落としてしまわないように必要な時だけ使うようにしていた。

そうしてほとんど新品のまま、私との1年記念日を迎えようとしたころ、私の体に異常が起きた。

左耳がほとんど聞こえなくなったのだ。

そこから余計に音楽を三郎と楽しむことがなくなっていった。

それでも久しぶりに音楽を楽しみたいと思い、三郎を取り出したところケースには左側しか入っていなかった。

思い当たる節もなくただ茫然と見つめた。

全然使わなかったから家出されたんだ。

左の三郎を取り出して耳へ音を流す。

当たり前だけど聞こえない。

涙が出るでもなく、ただただ虚しかった。


3回目なので父親に言えるわけもなく、黙って有線のイヤホンを使っている。


有線のイヤホンは100均で購入するので壊れやすく、何回も買い替えた。



そんな時に、『目指せ ヘッドホン・ガール!!』の記事を見つけた。

直感的に、これだ!と思った。

ワイヤレスのヘッドホンだとさすがの私でもなくさないだろうなと。

そして純粋にヘッドホンが似合う人ってかっこいいなと。




「今日でイヤホン卒業しよう。」


何代目になったかわからない有線のイヤホンを見つめる。

見つめ返してくる有線イヤホンが悲しい表情をしているように見えてAmazonのカートに入れたヘッドホンの注文ボタンを押せない。



"これが壊れるまでは取り敢えず有線イヤホン•ガールを全うしよう。"


このセリフは3回目。

結局、壊れたらヘッドホンを注文する前にすぐに100均で新しいものを買っている。



こうして私はふりだしへもどる。




永遠にイヤホン•ガール繰り返してしまう。



今月もイヤホン•ガール卒業式に参加できそうにない。

いつか私がヘッドホン•ガールになる日は来るのだろうか。







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