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【女子高生エッセイ】『ずっと太陽が見たかった🌤️』
持病の睡眠障害で夜型人間になってしまった。
みんなが寝ている時間に起きていてみんなが活動する時間は寝た。
生活サイクルが狂っていて太陽とは縁ない日常を過ごしていた。
その日、普段から外出していないせいで晴れの日は一歩家を出るとフラフラして床に倒れ込んでしまった。
頭が熱くなってぼーっとした。
何も考えられず30分ほど玄関の門の前でしゃがみこんだ。
なんとか自宅のリビングに辿り着いた後、3回嘔吐した。
そのまま倒れこんでソファに横になった。
チカチカと光るスマホには水族館に行く約束をしていた友人から大量のメッセージが届いていた。
震えた指で返信を打つ。
[吐いてしまっていけなくなりました。ごめんなさい]
すぐに既読がついて心配メッセージが来た。
数時間後、インスタグラムには友人がひとりで水族館に行った写真が投稿されていた。
心から申し訳なくなってそこにも謝罪を送信した。
私はあの日から太陽が嫌いになってしまった。
日光を浴びると気分が悪くなることが増えて外出は雨の日にするようにした。
傘に雨が当たる音が好きだから苦ではなかった。
でも日の下を満足に歩けないことは悔しかった。
部屋の窓から見える公園で走り回っている子供たちにどれだけ憧れを抱いたかわからない。
私だって快晴の日に外に出たいし当たり前のように日光に熱いなぁって文句を言いたい。
太陽まで私の敵になったような気がして世界から疎外された気持ちになった。
どこに行くにも何をするにも夜か雨しか選べなかった。
明るい空を見ることも辛くて一日中カーテンを閉め切って生活した。
たまに夜中にコンビニへ出かける時だけは外の世界を見た。
月が嫌になるほど綺麗に光っていた。
私だって輝くくらい太陽に照らされたいと思った。
そんな私を太陽のある世界へ連れ出してくれた人はネットの人だった。
三年前にあるSNSで繋がった同い年の女の子。
特に共通の趣味はないが一か月に一回は長電話をする子。
家が思ったよりも近かったことでご飯屋さんの話でも盛り上がることが多かった。
電話では相手の恋愛相談を聞くことが多かった。
それ以上でもそれ以下でもなかった。
それが変わったのは私が体調を崩して学校に行けなくなってから。
その子はもともと体が弱くて学校に通っていなかったから起きている間はずっと話すようになった。
たくさん電話をしたし相談を聞いた。
普段マイペースな彼女も私の体調の話になると真剣に聞いてくれた。
一か月ほど経ってからどうしても直接相談したいことがあるから会えないかと聞いてきた。
3日ほど返事を待ってもらった。
どれだけ仲良くてもネットの人だという意識があったからだ。
結局、悩んだ末にいいよと答えてしまったけど。
ただし晴れの日は会えないという条件をつけて。
当日、目を覚ますと雨が降っていた。
彼女に会えることに心が躍って鼻歌を歌いながら準備をした。
ニュースに流れている雨のち晴れの予報には気づいていなかった。
湿気に負けないように念を込めながら高い位置で髪の毛を結んでポニーテールをつくった。
久しぶりに人と会うためのメイクをして普段より凝った朝ごはんを食べた。
玄関でお気に入りの水色の傘を開いて外にでた。
約束の場所に着くまでドキドキと不安があった。
電車の窓からは雨粒で何も見えなかった。
到着すると長い髪の毛を三つ編みにしたかわいらしい女の子がいた。
もともとSNS上で顔を知っていたので迷わず声をかけた。
二人でずっと話していたおしゃれなカフェに長居した。
直接話すことに緊張して彼女の話は右耳から左耳に通り抜けていった。
相談内容はあまり普段と変わらなかったし何ならいつもと比べて内容が薄かったような覚えがある。
その理由はあとでわかった。
カフェの窓際の席に座っていた私はすぐに気付いた。
雨がやんで空が晴れていくことに。
私は顔を真っ青にして彼女に告げた。
「ごめん、曇ってるうちに帰りたいかも」
彼女は聞く耳を持たずに退屈な恋愛相談を続けた。
「ごめん、聞いてる?」
「うんうん、聞いてるよ。それでね彼氏的にはね」
私は飲み物を一気に飲み干す。
空から太陽が半分顔を出したのを見たから。
彼女もゆっくり立ち上がって空を見た。
「私も一年間太陽が怖くて家から出れなかったことあったんだぁ」
「えっ?」
マイペースに口を動かす。
「本当は太陽って怖くないんだよ」
彼女もプラスチックのカップを持ち上げてゴミ箱に捨てる。
「太陽の下の歩き方はひとつじゃないから」
彼女は私の腕をつかんで自動ドアの前に立った。
「いくよ」
「え、まって」
足がすくむ私なんて気にせずに外へと引っ張る。
彼女は傘を開いて私の上にやった。
「私の傘、実は日傘にもなるんだよねぇ」
ふふんと鼻で笑ってこっちを向く。
歩き出そうとする彼女に震えた声を出す。
「ま、まって」
「私から離れたらだめだからね」
彼女はそう言って歩くのをやめなかった。
私は仕方なく彼女と雨の降らない相合傘をした。
最初は倒れそうになりながら歩いていた私も5分ほどすれば普通に歩けるようになった。
「ねえ、空みて」
太陽は雲から出て煌めいていた。
私、日の下を歩いてる。
彼女はニコッと笑って私の背中をぽんぽん叩いた。
私の溢れ出した涙を彼女は白いハンカチで拭いてくれた。
「泣かんといてやぁ」
彼女は困り顔をして笑った。
「嬉し涙だよ」
「よかった」
ほっとした様子で笑ってまた歩き始めた。
彼女の笑顔の方が太陽の何倍も眩しいことに気が付いた。
その日の太陽が心臓の深い部分に焼き付いて離れない。
日光をまだ体中に浴びることはできない。
それでもいい。
心の中の太陽はずっとギラギラと輝き続けているから。
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