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イワシと肥料について、農家さんに聞いてみました。

おさかな小学校の2月の授業のテーマは、「イワシ」です。
イワシは、「鰯」と書き、1匹1匹はよわよわしい魚。
でも、成長がはやいこと、卵をたくさんうむこと、小さなプランクトンを食べられるような体になっていること、そして、大きな群れを作って敵から食べられないようにする戦略で、世界でもっとも繁栄する魚のひとつとなっています。

日本でもっともたくさんとられている魚も、マイワシです。
漁獲量ランキングを見ても、マイワシ(1位)、カタクチイワシ(6位)、ウルメイワシ(9位)、シラス(10位)と、イワシの仲間がベスト10のなかに4種類も含まれています(2021年農林水産省海面漁業養殖業生産統計)。

イワシは、私たちの食生活にも、海の生態系にとっても、なくてはならない魚なのです。

ところで、私たち人間はイワシを食料以外にも使っています。
「魚粉」というミンチにして、養殖の魚のエサにしたりします。

「魚粉」は、肥料として、農家さんが田んぼや畑にまいたりもします。
授業では、手元にある「魚粉」の袋を見せて、「野菜や果実が甘くなる」と書いてあるよ~、と紹介しました。

子どもから質問「魚粉を畑にまくと、野菜や果物はどんな味になるんですか?」

それで終わりのはずだったのですが、授業後の質問コーナーで一人の子どもから質問があったことで、探究がはじまりました。

その子の質問は、「魚粉を畑にまくと、野菜や果物はどんな味になるんですか?」というもの。さっき、「袋に甘くなるって書いてあるよ」と紹介したばかりだったので、それをリピートしようかと思ったのですが、私も魚粉を使って野菜を育てたことはないし、食べくらべたこともありません。知ったかぶりをするのはよくないな、と思いました。

そこで、「農家さんに聞いてみるからちょっと待っててね」と答えて、次週以降の宿題とすることにしました。それから1か月… ようやく、そのときの答えとして、このnoteを書いています。

農家さん探し…

「農家さんに聞いてみる」とは言ったものの、ぼくのまわりには農家さんはあまりいません。

いつも野菜を送ってくださるむすび農園の阪本さんに聞いたところ、「うちは米ぬかなど、植物性の肥料が中心で、魚粉は使ったことないんですよ~」というお返事。

農業関係の仕事をしている友人や、家庭菜園をがんばっている友人に聞いても、「窒素やアミノ酸のはたらきで、野菜や果実があまく、おいしくなるらしい」という話を聞くことはできても、「実際に使っているよ!」という人と出会うことはできませんでした。

どうしたら、魚粉を使っている農家さんから話を聞くことができるのでしょうか?それも、一人ではなく、できるだけたくさんの人に話を聞きたい…

そのとき、ひらめきました。
「そうだ!アンケートを作って、たくさんの農家さんとつながりがある人に頼んで、アンケートを配ってもらおう!」

できたのが、こちらのGoogleフォームのアンケートです。

https://docs.google.com/forms/d/1F3W7bhIbq4YziPQ7VrxWUrIKEyCn3Fbo8iVKzbcjoYg/edit

89人の農家さんが協力してくれた!

アンケートはできました。
誰に頼んだらいいでしょうか?
そこで思いついたのは、以前から一緒にマグロのイベントをやったりしてお世話になっている、株式会社雨風太陽のみなさんです。
雨風太陽は、ポケットマルシェという生産者と消費者をつなげる産地直送アプリを運営しています。
ポケットマルシェを利用している農家さんは全国に8000人以上いるので、もしかしたらやさしい農家さんが何人か協力してくれるかもしれません。

さっそく雨風太陽の方に相談をしたら、アンケート配信に協力してくださることになりました。

2日後の午後3時。全国の農家さんに向けてアンケートが送られると、その直後からつぎつぎと返事が届きはじめました!10日間で集まった回答は、なんと89人!「10人くらいから話を聞けたらいいな…」と思っていたので、こんなにもたくさんの方から返事があるとは思っておらず、本当にびっくりしました。

魚粉を使うとどんな効果があるの?

アンケート結果を見てみましょう。

89人のうち、「いつも使う」と答えた人は、17%でした。
「ときどき使う」「育てる野菜や果物によって使うことがある」と答えた人は、合わせて24%でした。
「その他」も含め、なんらかのかたちで魚を肥料として使っているひとは、全体の約4割でした。

逆に、約6割の人は、「使わない」「今は使っていない」と答えました。

今回のアンケートでは、ふだん魚粉を使う人のほうが積極的に回答してくれたと思うので、実際には魚粉を使っている農家さんはもっと少ないのではないかと思います。

どんな野菜や果物に使っているか、という質問では、一番多かったのは「お米」でした。あとは、トマト、ミニトマト、キュウリなど、実のなる野菜、柑橘(みかんなど)、いちじく、柿、りんごなどの果物に使っているという人が多かったです。

お米…8人
トマト…6人
きゅうり…5人
柑橘(みかんなど)…4人
いちじく…3人
なす…3人
ミニトマト…3人

魚粉を使っている理由としては、

  • 魚粉には、アミノ酸が含まれているので味がよくなる。ものすごくおいしくなる。

  • 甘みが増します。なかでも、レモンは酸っぱいだけではなくて、甘みが感じられます。

  • 地中の微生物が活発になり、豊かな土になり、作物が美味しく育ちます。

  • 葉ぱに厚みが出て美味しくなります。天候不順にも抵抗力があります。

  • 魚粉と米ぬかを合わせて使用することで病虫害に強いものができるから

などの答えがありました。

使わない理由としては、

  • 値段が高い

  • 虫や鳥がやってくる

  • 内陸なので手に入りにくい/魚粉が身近にないから

  • 自家産堆肥がふんだんにあるから

  • 考えたこともなかった

などの回答がありました。

わかったこと・感想

今回、アンケートをとってみて、農家さんのなかにも、魚粉を使う人と使わない人がいることが分かりました。
お米、実のなる野菜、果物などによく使われています。
使う理由としては、「甘くなる」「おいしくなる」という理由のほかに、「強い野菜ができる」「土がよくなる」という回答がありました。

今回、あらためて感じたのは、農家さんはみんな自分の畑と向き合いながら、おいしい作物ができるように試行錯誤しているということです。
気温、天気、雨の量、日差し、土の成分など、まったく同じ畑はありません。
Aさんの畑でうまくいくやり方が、Bさんの畑でうまくいくとは限りません。
毎日、毎年、どんな肥料をつかってどんなふうに育てたらどんな作物ができるのか、実験を繰り返しているんだな~!と思いました。

魚粉を使わない理由として「内陸で手に入らないから」「高いから」という回答がありました。逆に、魚粉を使っているみなさんは、海に近いところで農業をされていて、魚粉が手に入りやすいのかもしれません。海と畑のつながりについても想像してみました。

「これから使ってみたいので、購入方法を教えてほしい」と書いた方もいました。ふだん使っているという方に聞いて、教えてあげたいと思っています。

実際に注文して食べてみました

そうやって試行錯誤しながら作っている野菜や果物を実際に食べてみたいと思いました。
全員から買うわけにはいかないけど、肥料についての考え方を丁寧に書いてくださった生産者さんから、レモンとりんごを注文してみました。

瀬戸内海の島でみかんやレモンを作っている方からは、今回の取り組みに対して、「いろいろな事に興味を広げて、疑問を持ち考える…とても大事なことですね。農業のことに興味を持ってもらえると、とてもうれしいです。」という温かいコメントをいただきました。

「魚粉を使うと甘くなる」というレモンを食べてみたいと思い、ひと箱注文しました。酸っぱさのなかにたしかに甘味があって、とても美味しいレモンです。レモンうどんやレモン鍋にしてせっせと食べています。

たくさん届いたレモン。見た目は「訳あり」だけどとってもおいしい!

岩手県でいろいろな品種のりんごを育てている方からは、おさかな小学校について、「都会のお客さんに、食べ物のこと、循環などを知ってもらうのはとても良い取り組みだと思いました」という、うれしいコメントをいただきました。

魚粉については、「微生物が増えれば、病害虫が減り、植物が健全になり、結果として味が良くなる効果が期待できます。ただ肥料成分としては窒素なので、我が家の場合はもともと窒素分が多いため、窒素過剰の恐れもあることから最近は使っていません。どんな肥料もそうですが、土地の条件次第ということになるかと思います。」というコメントをいただきました。

「土地の条件次第」…とても勉強になりました。届いたりんごは、シャキシャキと食感がよくて、甘みと酸味がちょうどいいバランスで、とても美味しかったです。また別の品種を注文してみたいです。

ありがとうございました

こんなにたくさんの農家さんに協力していただけるとは夢にも思わず、ただただびっくりしています。使っていない方も、「使わない」と記入するひと手間をかけていただき、本当にやさしいと思いました。そして、雨風太陽のみなさんは、生産者さんたちに信頼されているんだな~と思いました。これからも、「都市と地方をかきまぜる」取り組みをがんばってください。

ご協力いただいた、雨風太陽のみなさん、生産者のみなさん、むすび農園の阪本さん、コツコツの宮下さん、いろいろ教えてくれた友人のみなさん、ありがとうございました。

そして、おさかな小学校の子どもたち、いつも鋭い質問をありがとう。みんなが質問してくれるから、ぼくにとっても学びになっています。

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