睡眠と夢の話。

私は、よく夢を人に話す。

夢と言っても、そういう将来への野心的なものではなく、睡眠時に見る夢のことである。

私のお姉ちゃんは「人の夢の話が、この世の中の話で1番つまらない。」という。

確かに、言われたからって別に本当に起こった訳でもないし、着地点がある訳でもないな。

そう思うけれど、夢を見ると誰かに話したくなるので、恋人によく話す。いや、もはや恋人しか聞いてくれないのかもしれない。

嫌な夢を見た時、恋人が横で寝息を立てていると安心をする。

恋人の腕をつかんで抱きしめると、寝ぼけたまま抱き寄せてくれる。私がそこで話しかけても、笑っても、彼は寝息を立てるだけで、何の返答も返ってこない。しかし、返ってこないからこそ、無意識の中での愛を感じて一層愛おしくなる。

1番、生活していて恋人に長生きしてほしいなと思う瞬間かもしれない。

先日、彼に突然振られる夢をみた。
「俺は1度も、好きと思ったことは無い」「顔も好みでは無い」
と夢の中で彼は淡々と話した。
私は『1度も楽しいと思ったことは無い？ちょっとでも話してて良いなって思わなかった？』と彼に必死に縋った。

これは夢の中での話だが、実際も彼に振られたら同じように縋ると思う。

楽しくなかったわけがないだろ！！と言う気持ちもあるし、好みに変わる努力を全力で注ぐくらい彼のことを好きだから。

そう考えると、私は彼と出会って変わったなと思う。

今まで付き合ってきた人の中で(この人の為に、こう生きよう)と思ったことは無い。
本当に、1度もない。

私の性格、顔、考え方全てをその人に出会ったからという理由だけで変えたくない。私は私だし、それが嫌だったら別れればいいじゃん、と言ってしまうタイプの人間だ。

可愛げの欠片もないが、自分のために何かを変えられるのも好きでは無いので、なにか私のために頑張っているのを見ると嬉しさよりも、心苦しさが勝つ。
いいよ、好きに生きてよ、となる。

だから、自分を持ってない人間と付き合うのは嫌いだったのだが、自分自身がそうなりつつあるなと考える。彼の好きな私で居続けたいのは、それはもう私なのだろうか。

話が逸れたが、彼は良くも悪くも私に似ている。

彼氏も私と同じように、夢の話をよく話す。

その時の熱量は、現実で起こったかのような熱量で、私に理不尽なお怒りを受けた夢を見るとしょんぼりとした声色で話す。やな事をされた夢の場合、少し怒りながら話す。

先日彼は、ブレイキングダウンに出る夢を見たらしい。その時点ですごく面白い。

「すごいやな夢を見た」の次に「ブレイキングダウン」とワードが出てきた時に
何そのやな事しか起こらなそうなワード、と思ったし言った。もはや、続きを聞きたくないくらい恐ろしいワードだった。

私はブレイキングダウンを始め、格闘技やボクシングなどの争いを見るのが得意ではない。

もちろん、闘っている選手達はすごく輝いていて、応援している人の気持ちはわかる。戦い終わった選手なんて、すごくかっこいい。しかし、痛そうなシーンは痛そうに変わりはなく、『ひゃー！いたい！』となってしまう。

私のような臆病者は、なぜ人は争うのだろう、と思ってしまうのだ。怒ってる人や、少しキツい言い方をする人がすごく苦手である。なので「試合決定で」の場面は人が怒っている事が多いので直視できない。

彼氏にふざけて「おい！ちがうだろ！」と言われた時でさえ、固まってしまうくらいの臆病者である。

その前提がある上で、
「出場が決まった時、haちゃんがすごい盛り上がってて…『ぶっ◯せー！！！』って言ってて…」
と言われ、あんたの夢の中の彼女、とんでもない女だな、となった。

そして、彼は夢の中ブレイキングダウンの一回戦を寝坊したのだ。

「やばいなーと思ったんだけど、haちゃんが『行ったほうがいいよ!』っていうから…行ったんだよ…でももう決勝戦でさ…」

と話を続け、夢の中でも寝坊するのあなたもだけど、あなたの夢の中の私、血の気が多過ぎやしないか？？

「一回戦に当たる奴が、勝ち抜いて決勝出ててさ…気合い入れてそのままリングに行ったんだけど大ブーイングで…」

当たり前だよ。寝坊してドタキャンしてる奴が突然すっ飛ばして決勝出ようなんて、周りに失礼だろ。と思った。なんだこの夢。

怖くなりながらも、それで？と言うと彼は「ここで目が覚めた」と話を終えた。

夢の話って、オチないな〜〜〜〜！！！！！！！

しかし、あまりにもあり得なすぎて面白かった。私はこの話を、私の母にも姉にもした。

『家族の彼氏が見た夢』なんてどうでも良すぎる内容だが、私はめちゃくちゃ面白かったので共有したかった。

「どうでもいい」と言うワードを見たり聞いたりする時に、前にどこかで見た“どうでもいい話をする人って、愛されてきたんだろうなと思う。”という言葉を思い出す。

これは、どうでもいい話をしても聞いてもらえる環境であったから、平気で人にどうでもいい話を出来るんだという理論だった。

この理論が正しければ、オチも何も無い夢の話をする人は、愛されて育ったのかもしれない。

確かに、あまり親しくない人に夢の話をしようと思わない。

愛してくれてると実感する人にしかしない話なのかもしれない。私は夢の話を堂々とできる事に、家族愛や、彼氏からの愛を感じる。

これからも、面白い夢を見たら伝えるし、伝えてほしい。私自身も相手にとって、何も考えず伝えてもらえるような人間でいたい。

余談だが、私が一番好きな挨拶は「おやすみなさい」である。おやすみなさいを聞けるのは、寝る直前に会う特別な人だけな気がするから。

それでは、おやすみなさい。