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厚さ100mmの鉄板で焼き上げるサクサクのおせんべい。「米菓桃乃屋」の意地とこだわり

大阪・八尾市に工場を構える「米菓桃乃屋」。毎日焼き上げるおせんべいは味も食感も抜群だと評判で、数々の企業のOEMを手がけつつ、直売店には近隣の方が足繁く通います。多くの人に愛されるおせんべいには、社長であり“焼き”の職人でもある桃井信善さんの、強い想いが込められています。

一気に10kg痩せるほどの大変な作業

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工場はとてつもない熱気に包まれ、立っているだけで絶え間なく汗が吹き出すほど。この熱気のもとは真ん中に据えられた大きな鉄板で、下からバーナーでごうごうと熱せられています。前に立つ職人はそんな熱さをものともせず鉄板を力強く手繰り、次々とおせんべいを焼き上げていきます。

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焼き職人でもある桃井信善さん

米菓桃乃屋の要ともいえるのが、この大きな鉄板。厚さ100mmもある鉄板2枚でおせんべいの生地を挟み、焼き上がりを見極めながら加熱することで、サクサクと軽やかなおせんべいが出来上がります。
「うちの強みはこの鉄板ですが、鉄板を使うと工場がとにかく暑くなります。規格外の暑さなので、冷房も利かないどころかすぐに壊れる。始めたばかりの頃は本当に大変で、一気に10kg痩せました。正直、せんべい屋の長男として生まれてこなかったらこの仕事はやってないですね(笑)」。

関西のおかき文化、関東のおせんべい文化

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右は妻の睦(むつみ)さん

米菓桃乃屋は、1930年、今から90年前に創業したおせんべい屋さんで、もともと東京・新宿にて約30年、草加せんべい店を営んでいました。
「おせんべいはうるち米を原料とする米菓ですが、当時、関西ではもち米を原料とするおかきの文化が根強く、まだまだおせんべいが知られていなかったんです。それで、おせんべいを関西にも広めようと、祖父で先々代の社長が大阪へとやって来ました」。
草加せんべいに代表されるように、手焼きで仕上げるおせんべいは硬く、カリカリとした食感とお米ならではの旨味が特徴。一方おかきはもち米を使っているためソフトな食感と口溶けのよさが特徴です。サクッとしたおかき文化の根強い大阪で、硬め食感のおせんべいを広めるには……と試行錯誤を繰り返す中で出会ったのが、現在も活躍する鉄板でした。

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焼き上がりは温度・湿度によって常に変化するという

「うるち米の生地が空気を含んでぷくっと膨れたところを鉄板で挟み焼きすることで、軽い食感のまま焼き上げられます。おかきに近い食感に仕上がるということで、徐々に関西圏の人達にも受け入れられるようになっていきました」。

おせんべいのイメージを払拭したいとデザインした直営店

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従来のおせんべい屋さんとは異なる雰囲気のお店

「ももちゃんのおかきせんべい」は、普段量販店に卸しているおせんべいを良心的な価格で提供する米菓桃乃屋の直売店。この直売店を取り仕切っているのが、妻の睦(むつみ)さんです。
「おせんべいというと、普通は“和”なイメージですが、あまり和風にこだわりたくなかったんです」(睦さん)と、まるでパティスリーのようなかわいらしい雰囲気のお店に仕立てました。
現在店頭に並ぶのは13〜15種類のおせんべいで、中でもえび・のり・しお味がアソートになった「三色」が大人気。近隣の方はもちろん遠方からも多くの人が買いに訪れます。

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パンパンに詰まったおせんべい。「三色」は300円、500円の2種類

「新しい味を取り入れるときは従業員みんなで試食して、ひとりでも味に納得できなければ絶対に店には出しません。これまで試してきた数でいうと……、100種類ぐらいはあるんじゃないかなぁ。それで13〜15種類ほどに絞れているので、相当おいしいものでないと採用していないということになりますね(笑)」(睦さん)。

味へのこだわりを新商品にも存分に生かす

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味にとことんこだわる米菓桃乃屋が大阪商品計画で形にしようとしているのが、感度の高い30代〜50代の女性に向けた、手土産となるようなおせんべいです。これまで米菓桃乃屋が培ってきたおいしさはそのままに、シェフ監修のもと本格的な味をめざし、新たなおいしさへの挑戦に邁進しています。

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米菓桃乃屋が鉄板焼きをはじめた約50年前から現在にかけて、鉄板焼きのおせんべいを手掛ける会社は徐々に減少しています。
「現在関西で鉄板焼きを続けているのはうちだけですし、全国でも残っているのは数社だけ。というのも、常に200℃で加熱することによる暑さと、繊細な焼きの技術が要されることによる後継者不足という問題があったからです。でも、鉄板焼きのおせんべいは大手メーカーさんも見学に来られるほどおいしいし、祖父、父、私と長年培ったこの鉄板焼きに誇りを持っています。せっかくの技術を次の世代にも伝えていきたい、その想いで作り続けています」。

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桃井さんのお父さんで先代の社長は今も現役でおせんべいを作っている

新たな商品が次世代への架け橋となれば。そんな想いを込めて作る米菓桃乃屋の新商品は、きっと未来を明るく照らしてくれるに違いありません。

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詳しくはこちら

株式会社米菓桃乃屋
大阪府八尾市太田新町1-276-1
072-949-1382

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