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和装鞄を現代的にアップデート。「Hareru」がめざす、和装にも洋装にも合うバッグ

伝統に彩られる華やかな和装業界に身を置きながら、「果たして今のままでいいのだろうか」と疑問を持ち、新たな和装鞄の形を追い求める「Hareru(ハレル)」の代表、高柳実さん。いい商品を作ってお客さんに喜んでもらい、和を愛する方々の間に好循環を起こしたいと行動する高柳さんの、ものづくりの姿勢を追いました。

従来のスタイルに甘んじていてよいのだろうか

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艶やかな織物で作られる和装鞄

艶やかな振袖や色打掛、シックな留袖にモダンな小紋まで、日本で育まれてきた和装文化。着物だけでなく髪型や小物、履物など細部に至るまで、現代のファッションとはぐっと異なる独自の文化が形成されています。

Hareruの代表、高柳さんは、そんな和装文化の中の「和装鞄」業界に入ったひとり。和装鞄とは一般的なバッグの形や装飾とは大きく異なり、華やかで可憐でなおかつ小さく、見て美しい美術品としての価値も備えた品です。ただ、美しさはあれど、使い勝手が良いかと聞かれると、一概にそうともいえないと高柳さん。

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Hareruの代表・高柳実さんと、代表的な和装鞄

「和装鞄はとても繊細で、それ自体価値があるものだと思っています。だけど、形がほとんど決まっていて硬い上、一度型崩れしたら元には戻りにくいという難点もあります。また小さくて物もあまり入れられないし、実用性がちょっと乏しいよなぁと。着物姿でしか持てないし、年に何回手に取るのだろうか……と疑問を感じ始めました」。

普段着物を着る人に調査してみても、和装鞄はフォーマルな場のみで使い、いつもは物がたくさん入る実用的なバッグを使っているという人が圧倒的だったのだそう。さらに、職人さんがいてこその業界であるにもかかわらず、彼らが十分な収入を得られていない現状にも危機感を持ち、「既存の枠にとらわれない、本当に求められているバッグを職人さんとともに作ろう」と立ち上げたのがHareruでした。

美術品としての和装鞄から実用性のあるバッグへ

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Hareruがめざすのは、着物にも洋服にも合う汎用性の高いバッグです。そのため、和装鞄で用いられる技術はもちろん、洋装バッグの技術も多分に取り込んでいるのが特長。ポケットが機能的であるか、持ち手はほどよい長さか、軽量であるか、縫製はきちんとされているかなど、一つひとつ丁寧に見ながら作り上げていきます。

また素材にもこだわり、西陣織など和装鞄で使われる華やかな織物と、牛革やクロコダイル、ホースレザーなどを組み合わせ、より一層スタイリッシュな雰囲気へ。Hareruの製造顧問を担う職人の野村さんがイチから生み出した、縫製の難しい市松格子デザインを採用するなど、和と洋がほどよくミックスした和モダンアイテムを取り揃えます。

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レザーと和柄を組み合わせたオリジナルの市松格子

「2019年にアメリカ・シアトルのイベント会場でポップアップショップを開いたときには、現地の日本人コミュニティの皆さんから大変好評で多くの受注もいただくことができました。またそういった方々からお祖母さん、お母さんと代々受け継がれてきた思い出の着物が使われずに眠っていることがよくあるとお聞きし、それらを使ってセミオーダーのバッグ製作を行ったところ、とても喜んでもらえました。今後はそういったところにも力を入れていきたいと考えています」。

目の前の人に喜んでもらいたいという一心

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手前は製造顧問の野村さん

はみ出すことが許されない伝統の中で、しっかりと型が出来上がったものづくりが行われていた和装鞄業界。大量生産ができるなどのメリットはありますが、ユーザーにはほとんどデザインの選択肢がない状況でもありました。Hareruのものづくりは、それとは対極にある“目の前にいるひとりに喜んでもらいたい”という想いが最初にあります。

「バッグはひとつで完結するものではなくて、服や靴などとのコーディネートで楽しむものです。すると、『どういうシーンで使いますか?』『好きな色は何ですか?』など目の前のお客様へしっかりとヒアリングすることが大事になってきます。生産性や規模を考えるとこのやり方って効率が悪いんですが(笑)、でも自分が何をしたいかを掘り下げるとここに行き着くんですね」。

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そんな高柳さんが大阪商品計画で作るのは、ほどよい大きさで和装にも洋装にも合うバッグ。ブランドに流されずアクティブにファッションを楽しむ30〜50代の女性に向け、洗練されたアイテムが作れれば、と考えています。
「Hareruの特長である市松格子デザインのバッグと、それとはまた別のデザインのバッグ、2パターンが出せればいいなと。現在鋭意製作中です!」。

和装という伝統文化を大切にしながら、職人さんへの対価をきちんと支払い、現代のニーズにも寄り添ったバッグを作るHareru、高柳さん。変化をおそれず、伝統の世界に胡坐をかくことのない真っ当なものづくりの姿勢がそこにはありました。

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Hareru
大阪府大阪市生野区巽東4-8-44-104
06-6720-8661

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