幸せを手に入れる最後の方法 ~2年間のカウンセリング実録~ 11.成長①
僕の伝えた言葉に対する咲笑(さえ)ちゃんからの返事はなく、そのまま半月が経過していた。
咲笑ちゃんが僕の伝えた言葉を受け止めてくれたと信じつつ、僕は彼女の幸せを願うだけの日々を過ごしていた。
でもそんな祈りの日々は長くは続かず、ある日SOSのメッセージが届いた。
「ごめんねまーくん。受け入れたくて大人しくしてたけど、ごめんなさい。
彼から別れ話を持ちかけられてしまったの。
荒れています。周りはみんな別れなさいと言います。
俺のところに来なさいと言ってくれる人もいます。もう疲れました。」
「咲笑ちゃん、まずはごめんね。
そして突き放すような僕の言葉をきちんと受け入れてくれてありがとう。
つらい壁にあたってるんですね。彼を頼りにしてたからその分つらくて、頑張ってた分疲れたんですね。
ちゃんと向き合って答を出して欲しいな。」
「彼が好きだから。彼のいいようにしてあげないと。」
「咲笑ちゃん、つらい時はしっかり落ち込みましょう。
そして気持ちの変化に対応するために身体は頑張ってくれてます。
できたら意識して身体を労ってあげてください。
咲笑ちゃんは彼に随分助けてもらったと思ってるんだよね。
だから咲笑ちゃんが彼の話を受け入れようと思うなら、それでいいと思います。
(ごめん、ちょっと嫌な話をします)例えば彼が事故で亡くなるより今回の話はずっと幸せなことですよね。
彼に会えたから、咲笑ちゃんは今日まで生きて来れたんですよね。
会えなかった人生なんて考えられないよね。
彼に出会えた幸せをもう一度考えてみてください。
人を好きになるって、とっても素敵な事だと思います。
別の人格だと認める離別感が必要だっていうけど、何もかも分かり合いたいという一体感を求める気持ちだってすごく大事だと思います。
だから彼を好きな気持ちと、これまでの感謝をどう伝えるのか。
それが大事なのかな…と思います。未来の咲笑ちゃんが後悔しないように、思いを伝えてみてください。」
「話したいです。彼と。」
咲笑ちゃんが彼とどんな話をしたかったのか、その後どんなことが起こったのか分からないまま、数日が経った。
そして咲笑ちゃんが基礎コース修了パーティーに参加する日がやってきた。
彼女にとって、日本メンタルヘルス協会の最終講座がどんな気づきに繋がるのか、どんな風に心を動かす一日になるのか、そもそも、彼女はちゃんと修了パーティーに参加するのか、僕は期待と不安と祈りが入り混じったような気持ちでその日を迎えた。
きっと出かける直前だろう。彼女からメッセージが送られてきた。
「その後、いろいろありました。
今からパーティー行ってきます。」
「咲笑ちゃん、笑顔で楽んできてね。よかったらまた感想を聴かせてください。いってらっしゃい!」
まずは参加の意思が感じられた。僕はそれだけで満足だった。
彼女が投げやりになって歩みを止めたりしていないということが分かったから。
そして、僕が密かにパーティー会場に送ったメッセージカードを受け取ってくれることが分かったから。
あとは彼女の心の受け止め方を信じよう、そう思った。
その日の夜、彼女から連絡があった。
「まーくん、カードありがとう。泣いちゃった。」
「素敵な時間が過ごせましたか?幸せな記憶は人を強くしてくれるからね。
明日からも笑顔で!今日はお疲れさま。」
「ありがとう。もっともっとリピートに行かなきゃ。」
僕は咲笑ちゃんが、このまま暫くは幸せに浸っていられると思っていた。
でも彼女の抱えている問題は更に膨らんでいた。
それを彼女が教えてくれたのは翌日のことだった。
「修了パーティーが終わってから分かったことがある。
彼、家庭のある元カノと切れてなかった…。
私、修了パーティーに出たのに何も成長してない。」
「そうだったんだ…裏切られた気持ちでつらいんだろうね。
そして、そのつらさに溺れてしまうから成長してないって気持ちになるのかな?
でも咲笑ちゃんは、ちゃんと成長してると思うよ。
これまでも色々な変化を見せてくれたし、成長してないって思えることも、きっと成長したからこそ認識できることだと僕は思うな。」
幸せを手に入れる最後の方法
~2年間のカウンセリング実録~
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
学べば学ぶほど、知らないことに気付いていくことがあります。
自分の弱さを認められるのは、強くなった証拠です。
自分が成長できてないと感じられるのも、自分ができていないところに気付けるという成長の証だと思います。
成長にはいろんな姿があります。
成長に気付ける、成長を感じるのもまた成長だと思います。
続きは明日更新します。
是非おつきあいください。
よろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?