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映画「異動辞令は音楽隊」感想 阿部寛と音楽隊と警察官

鑑賞前とイメージのギャップがあった。コミカルに異動した刑事を描くのだと思っていたが、まったく違った。かなりシリアスで怖いぐらいだった。音楽隊とアポ電強盗が主軸で、コミカルさがほとんどない。阿部寛演じる成瀬が音楽隊に異動して、刑事の仕事がまったくできなくなり、挫折することから始まる。紆余曲折あって、音楽隊として、ドラムに向き合うのだが、いろんな人間関係からアポ電強盗の犯人を確保し、コンサートを疲労したところで物語は終わる。魅力的なのは、音楽隊と成瀬の関係だ。トランペットの春子との関わりで、家族と対話することになる。記憶がなくなっていく母と娘と暮らす成瀬が音楽隊で頑張るたびに関係がよくなっていくのさ人情的だ。休みなく働き、違法行為をして犯人を追い詰めていた鬼刑事成瀬。娘にも愛想を尽かされていたのが、音楽隊として娘ともセッションするぐらいに回復していく。人間は環境で大きく変わるのだが、変化するまで精神的にしんどくなる。何かのキッカケが必要だが、人間関係で解決することが多い。異動は失敗みたいなイメージがあったが、新たな人生を見出すためには、ありなのかもと思った。人間どこで誰と出会うかが鍵だ。

音楽隊は知事に税金の無駄と言われたことを発端に、県警本部長に廃止を命じられる。しかし、アポ電強盗を音楽隊が確保したことにより、廃止の話は無くなる。音楽隊は警官なのかという、本作の問題提議に対する、一つの答えだろう。音楽隊は必要としてくれる人たちもいるが、県警からしたら、兼務してまで必要なのかと劇中でも言われていた。音楽隊といえど、他人から見ても理解できるような実績が必要だと感じた。まあ、音楽で感動させて、上司の考えを変えるのもありだが、犯人確保の方がインパクトがデカイので、こちらを採用させたのだろう。後は、阿部寛がやはりカッコいい。刑事時代は髭が濃く、ただのパワハラ上司だったが、音楽隊として活動するうちに、顔つきが変わり、優しく強くなっていく。特に、ラストの部下にバスの窓から「そうか」というシーンはマジでカッコいいので必見。東野圭吾さんの加賀刑事に近かった。キャラはまったく違うけど、

ただ、アポ電強盗の黒幕が強すぎる。捜査一課の刑事に正面から戦い、無双してた。成瀬の後輩は重傷に見えたし、先輩は杖で顔面を殴られていたし、ラストは妙に犯人強すぎてびっくりした。音楽隊が数人係で取り押さえるのだが、捜査一課の刑事の活躍もあってもよかった。後輩のキャラもよく、だんだん成瀬に似てくるのが印象的だ。

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