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映画「帰れない山」感想 夢を取るか親の道を取るか 山を舞台にした二人の生き方

二人の男性の人生を描いた話。かなり重苦しくなっていくのが印象的だった。夢を追うのはいいが、現実としっかり向き合うのが大切に思う。どうしても、事業にはお金が掛かるから管理できないと絵に描いた餅だけではなくて、主人公の一人は生活もきびしくなっていく。山にすみたく、酪農で暮らそうとするが、夢やぶれてある結末に向かう。観ていると心が苦しくなるが、何か言いようもない思いもある。もう一人の主人公は、ニートのような生活から、山の生活、そして旅をすることで自分の居場所を見つけていく。その過程がまさに山あれば谷あり。

思ったのは、親の生き様は生きる参考になるわけだ。ピエトロは、父のようなエンジニアになることを否定したのはいいが、30歳を超えるまで学生が抜けきらない生活になり、バーのような場所で料理を作り何とか生活している。また、ブリーノは父のような建築の職人にならず、途中でおじが失敗した酪農に挑戦する。ピエトロは、旅の生活の中で本を出版できたが、それでも外国で何とか生活できるぐらい。ブリーノは最初は酪農がうまくいっていたが、規制が進み、借金生活になる。どちらも、本を出したい、酪農で山に暮らしたいという夢があるが、やはりお金の問題に繋がってくる。逆に、二人の親の職業は堅実であり、工場のエンジニアと建築の職人と、今でも安定して収入があるような職業だけに、親の教える道は確かに正しいものでもある。しかも、失敗したが、ピエトロの両親はブリーノに都会での生活を与えようとしていたから、もしかしたら、ブリーノはエンジニアとして安定した生活を送れた可能性があった。互いに夢と親との狭間で苦しんでいたが、結局夢を取り、その過程が描かれている。中々に難しい。互いに山で暮らしていたいのだが、職業の違いで人生が変わってしまった。

観ていると、仕事の選択って大切だなあと感じてしまった。いや、今の自分を省みて、現状を解析して、仕事を選択する。ブリーノは、妻の話から、スキー場の仕事もあったとのことで、家族を守れる方法はいくらでもあったはずだ。プライドにみえるが、実は、一度職人の道を断っているだけに、他の仕事は何が何でもしたくなかったのかもしれない。酪農という夢の失敗を認めたくない。そーゆー想いや絶望が伝わってきた。いつまでも結婚しないピエトロとは逆に、結婚して娘もいて、ピエトロの母親もブリーノの娘を可愛がる姿をみると、ブリーノの人生は成功かと思ったが、時が経つにつれ変わっていくのだ。時の流れは残酷である。

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