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映画「地下室のヘンな穴」感想 幸せな夫婦×若返り×夢のために

なんか消化不良になった。家にあるダクトを潜ると、12時間進み、3時間若返る。要は、夜8時に穴を潜ると、朝の8時に穴から出てくることになる。それを知ったアランとマリー。特に妻のマリーは3時間若返る効果に期待して、何度も穴に入っていく。逆に夫のアランは、保険の仕事を優先し、経済的な安定を目指し、日常を過ごしていく。マリーの若返りの執着は尋常ではなく、毎日穴に入り、ドンドン若返る。モデルになりたいということだが、日常を捨ててまでなりたいのかなと感じた。経済的に安定しないと穴がある家に住めなくなるわけで。結局、モデルになっても成功せず、ラストは入院することになってしまった。劇中でも、不動産会社の営業が穴に入りすぎるなと注意していたのに。若さへの呪縛があり、リスクを考えていなかった結果なのかと思った。一つにこだわりすぎると日常が壊れていく。アランは愛するマリーになかなか会えない。穴に入ると、12時間後に出てくるため、仕事の時間と重ねれば一緒に過ごせなくなる。さらに、モデルの仕事をするようになると、増々すれ違いの時間が増えていく。家を買ったのは、夫婦で幸せに静かに過ごすためだったのに、若返る穴のせいで二人の時間は壊れてしまった。

一番気になったのは、穴の説明がまったくないことだ。12時間経過する理由と3時間若返る理由だ。若返るかわりに身体の内側から腐っていき、手の傷からはアリのような虫が這い出てくる。かなり恐ろしいが、なぜ若返ると身体が腐るのか。まったく分からない。また、漫画やアニメなどで目にする等価交換なるものか?身体の表面は潤い若返るが、身体の内側は腐っていく。それでもいいのだが、もう一声ほしい。穴を通るたびに、空気を吸うと虫の卵が侵入し、内側から侵食する。それを悟られないために身体表面で潤いを与える体液を出すなど、それらしい理由が欲しかった。ただただ、マリーが穴に振分回され、夢のために慣れないモデルの世界に入り、メンタルを壊されてしまう。何か解決策があれば良いのだがまったく提示されないまま物語は終わってしまう。悲しすぎる。二人は幸せに静かに暮らすはずが、穴の存在ですべてが変わってしまった。現実でも、一つのきっかけで夫婦生活が壊れてしまうことがあるかもしれない。そんな恐怖を感じた。予想もできない。ただ、マリーには夢があり、一度諦めたものが手に届くのなら、今の生活を犠牲にしてしまう、人間の性(さが)みたいなものがあるのかもしれない。

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