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映画「凪の島」感想 凪という少女と瀬戸内の島と優しい人間関係達

観て良かったと思える映画だった。期待はしていなく、ほのぼの系だと思っていた。それが、両親の離婚、友達の母の真実、用務員の過去、祖母が離島で診療所を開いていり理由などが、マイルドかつ優しく描かれている。冷酷な酷い描写はなく、キツい事実についても優しく表現されていて、思わず泣いてしまうぐらいであった。

アルコール依存症の父と対話する主人公の凪。そこに暴力的な表現はなく、父として、医者として向き合う姿が印象的だ。正直、暴力があるのではと怖かったが、それはなく、ひたすら凪を愛する父親の姿を見せていた。瀬戸内で暮らす凪に会いに来る父は、島で一緒に暮らそうと提案する。

凪の母親は看護師であり、凪の祖母が医者なので、島を医療訪問していく。凪の母親として、しっかりしており、一人の人間として凪を育てる。少しだらしないが、父親が連絡なしに来たときには、怒りをあらわにしていた。これが母親かと思わせる描写であり、見ていてホッコリする。母親としてバリバリ働き、祖母のサポートを受けながら暮らしていく。  

さらに、凪の友達に、山口の病院に入院している子がおり、凪と共に病院を訪れる。実は、夫の浮気が原因で精神が不安定になり、虐待し、直近の10年ほどの記憶はない。そんなことを知らない子供は、黙ってしまうが、島の祖父に諭され、勉強しろよ、偉くなって母ちゃんのことを頼むぞと言われる。この友達の子とその祖父のやり取りが非常に泣けてしまう。母のことは秘密にして、勉強して偉くなれという。それには、母の秘密があり、理由があった。豪快な祖父なのだが、ある場面で、虐待の単語を口にする。しかし、暗いイメージはなく、島の人達が問題を乗り越える場面が印象的になる。

また、笑じいと呼ばれる用務員がおり、娘を亡くしている。二人は精神的にも立ち止まることになり、考え方が変わる。凪の祖母は診療所にその娘の写真を飾っている。島の漁師と学校の先生の結婚式で、二人はその過去を乗り越えていくのだが、二人の静かな対話が心を震わせる人情劇になり、観るものを感動させていく。

人情的な描写が多いのだが、悪い人はなく、ただただ心が洗われる印象だった。楽しく観るというよりは、島の世界観に没入するような感じだ。一見、シビアな人間関係なのだが、海という存在が物語を優しくしているのだと思う。

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