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フットワークが軽ければいいってものでもない

前回チラッと書いた「フットワークを意識して軽くした時期」の話。そのキッカケは今でも覚えている。大学1年の時、それまでの学生生活と違ってバイトを始めたり、学校以外で人と会う時間が増えた。誘われることが多くなったのもあると思う。

人に驚かれるけど実はかなりの人見知りだから誘うのも苦手だし、大人数がいる場所や知らない人がいる場所が得意な方ではない。どう居ていいのかわからなくなるから。

だからと言って断っていたら、漠然と人生が面白くない気がして、当時「誘いは断らずに行ってみる」ということを意識して実践していた。
そうすると自然と人の出会いが広がり、同時に気の合うタイプなんてのもなんとなく感じることができた。

そのおかげで一つ歳上の大学も違う友人ができた時に、3人の頭文字を取ったチームを作り、定期的にカフェで集まっては「語り」合っていた。当時の「語り」ってのは日常の「気づき」や将来のことについての出し合いだったような気がする。それが楽しくて居心地のいい場所になっていた。

ある日のカフェで私たちがいつものように話していたら、隣のテーブルのおじさんが穏やかな笑顔で話しかけてきた。

「さっきからちょっと話を聞いていたんだけど、3人とも熱心だねぇ」

そのおじさんの目はとてもキラキラしていて、懐かしむわけでもなく(私以外男子だったのでもちろん下心でもなく)熱くなっていた私たちに純粋に興味を持ってくれた感じだった。集まった経緯やこれからのこととかを話した気がするけど、あまりに自然と時間が進んだから内容は覚えていない。

でもそのおじさんが、その後に芝居を始めた私の舞台を観に徳島から来てくださったり、何かとずっと繋がっていた。学生時代から同級生より年上や年配の方と仲良くなる機会が増えていた。

それも考える前に行動していたからなのか「誘われたら考えて断る前に、まず行ってみるようにしてる」とか当時周りに言っていたと思う。

行動した分だけ様々な人に出会えて、話せて楽しかったんだろう。それが私の20代前半の「刺激」だったのかもしれない。

でも今は、もっと自分のことをちゃんと考えてから誘いを受けたいと思うようになった。自分優先というよりは「ただ行く」って感覚じゃなくて、「会いたいから行く」っていう自分の意思や気持ちがあった上で受けていきたいなって。それまでもその気持ちがなかったわけじゃないけど、ちゃんと実感するのが大事だなって。

歳を重ねると気持ちの軽さにちゃんと体重や体温も乗っかるようになってくる。軽い気持ちで行くと自分の心は有限なんだと知ってすり減ることもあった。

去年のこと。誘われた場所の名前からして違和感があったのだけど、何に繋がるかわからないしと思って誘いを受けてお店の前まで行ってみると、外まで聞こえる大音量のBGMが流れていた。体が全く動かなくなってしまい「これは無理だ。入れない」と、家に引き返したことがある。

そうやって自分の拒否反応に従うことが少し苦手なのだけど、心がすり減る前に自分の違和感に気づいてあげて、思い切って行動してもいいんだって実感する経験になった。

だんだん会いたい人や行きたい場所に対するアンテナは鋭くなってくるし、そこに持っていく気持ちも大事になってきたりする。

「誘いは断らずに行く」をしていた20代よりも、傷みもちゃんと感じるようになっている気もする。体調崩すと治るのに時間がかかるようになったみたいに。

だから30過ぎてからは「無理をしない」「自分の気持ちを大切にする」というのを重要視するようになった。重要視するようになっただけで、できているとはまだ言い切れない。

人見知りだけど人が好きだからその分気持ちも軽やかな方で、フットワークが軽くなくなったわけではないと思う。

ただフットワークの軽さよりも「そこに愛はあるんか」じゃないけど、そこに自分の気持ちがちゃんとあるのかに向き合うようになったのかもしれない。

人と離れることが20代の頃より怖くなくなっているからか、再会の喜びがより大きなものになってたりもする。今年は嬉しい再会がポンボールを通じてたくさんあった。イベントをやって本当に良かったと思った。

「会いたいから行く」が人から伝わってくると明日なんてどうなってもいいってくらい幸せな気持ちになる。だから私もフットワークの軽さの裏側にある「会いたいから行く」って自分の気持ちをこれからもっと大切にしたい。それが、最近よく聞くけどふわっと曖昧な「自分を大切にする」ってことの具体的な一歩になるのかもしれない。

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