見出し画像

LDLメンバー加藤さんインタビュー ~人智を超えたものとの折り合い方~

まちづくりの第一人者木下斉(ひとし)氏が所長を務める、まちづくりの実践者コミュニティー「Locally Driven Labs(以下、LDL)」。私も「アソシエイト」という立場で所属し、学ばせてもらっています。

https://note.com/fumihirookazaki/n/ne15023de7706

今回はそのLDLメンバーであり、山形県で海外客向けに山伏修行ツアーを提供されている株式会社めぐるんの加藤丈晴さんにインタビューさせて頂きました。

ヤマブシって何をしているの?

山伏(やまぶし)でイメージされるのは、白装束でお椀のような黒い物を頭に乗せて山を歩き、山頂に着いたらほら貝を「プオォ~」と吹く・・。全く縁のない私にとってはその程度の知識しかなかったので、今回は興味津々でいろいろ質問させて頂きました。

山形県、出羽三山で事業をされている加藤さん(左)と松下(右)

加藤さん曰く「山伏とは修験道(しゅげんどう)という宗教です」との事。え?宗教なんですか?とちょっとした驚き。それまでは武士道のような、心身を鍛錬する「道」だと思っていたのですが、どうやらちょっと違っていて、山や自然を神として崇める宗教なのだそうです。具体的に山に入って何をしているんですか?と尋ねると「山に入って祈っている」との事。

個人的な思い込みとして「神」というのは人だったり竜だったり、何かしら生物の類だと思っていたのですが、「山岳信仰」という言葉の通り山や自然自体が神であるらしいのです。徳川家康の時代に正式な宗教として認められたものの、明治維新の頃に出された修験廃止令により弾圧されたり、紆余曲折があったようです。

幸せで持続可能な家族とコミュニティを求めて

加藤さんは株式会社めぐるんという町づくり会社を経営しておられ、そこで外国人を対象とした修験道体験ツアーを提供されています。なぜ外国人向けなのですか?と質問したところ「実は、こういう事業をやってみたら、たまたま外国人がバラバラとやってきた」という理由からだそうです。

日本人にとっては大金を払ってまで体験したいような魅力は感じないのかもしれませんが、海外の方にとっては非常に神秘的で魅力的で貴重な体験として見られているのかもしれません。

ただ、加藤さんは単にお金儲けをしたい訳ではなく、この事業を通して家族や地域が持続可能なコミュニティーになってほしいと願っておられます。持続可能になるためには安定した収入が必要不可欠で、それを実現する手段が、加藤さんにとっては修験道ツアーだったという事だと見受けられました。

人智を超えたもの?

加藤さんとの対談でとても印象的だったのが「修験道は人智を超えたものとの折り合いをつけてくれる」という言葉です。

「人智を超えたもの」などという言葉は、日常ではあまり見聞きしませんが、私がハッと頭に浮かんできたものが、東日本大震災や西日本豪雨、そしてコロナや気候変動などです。

現代ほど便利で快適な世の中になると、ほとんど全ての自然は人類がコントロールできていると錯覚してしまいます。ましてや都市部で生活していると尚更でしょう。

だから災害に見舞われた際に、住民が行政を訴えたりする。「自然ごときをコントロールできなかったのは行政の怠慢である。行政がしっかり対策していれば今回の災害は防げたはずだ。」という理屈です。

それは大いなる勘違いなのですが、日常生活ではそれが実感できない。でも自然は、地球は、そして宇宙は、人智など到底及ばない真理で動いていて、山の中で祈っているとそれが実感でき、折り合いをつける事ができるようになる。

加藤さんは「自分を手放す」という表現をされていましたが、先行きの見えない現代社会において、とても意義ある思想だなと思いました。今後のご活躍を期待しております。