イギリスの精神科治療の回

どうもおるすわんです。
今日はイギリス生活での精神科&カウンセリング事情について話そうと思います。
これから留学や転職、結婚などで新たにイギリスへ行かれる方で、何らかの精神疾患を持っているので不安…という方の参考になれば幸いです。
いま日本で健康な人でも、引っ越しをして慣れない環境でうつ病になったり、また緯度の高いイギリスやスカンジナビア半島などでは冬季鬱という冬場の日照時間の少なさ由来の鬱病になる人がとても多いので、そういった方々の助けにもなる事を願って、4年半の治療を受けた感想を書いて公開する事にしました。


・精神科に通うようになった経緯
Twitterではちょこちょこ書いているんですが私は18歳くらいの時にパニック障害を発症しています。精神疾患というものは完治が難しく、寛解という、症状の出ない状態というのをなるべく続けていく、という感じで徐々に良くなっていくものだそうです。
パニック発作を発症したのはまだイギリスの大学を受験するより前の、日本の大学を受験した時の試験会場でした。第一志望の大学の受験会場で問題を解いていたら、突然過呼吸のようなものが起こり、動悸が激しくなり、めまいがして、自分が座っているのか立っているのかわからない状態、さらには意識も曖昧で、身体がほてったかと思ったら急に震えるほど寒くなったり、というのを繰り返しました。そこから第二志望など受験をするたびにパニック発作が起こり、地下鉄やホテルなどの密室または人の沢山いる駅や街中でも予期不安で常に神経が不安定な状態、さらには何かを食べると嘔吐する感覚に襲われ、ほとんどなにも食べられないという日々が続きました。この頃から元々少しあった感覚過敏が強烈になり、音や匂いが10倍以上に感じられるようになることが度々で、人の咀嚼音が爆音で聞こえたり、香水の匂いで酔って吐いてしまったり、とにかく外に出ると疲れ果てていました。
幸いにも、事前に受験していたセンター試験の点数のおかげで都内の第二志望に合格する事が出来たのですが、合格した頃には自宅の外を出て他人とすれ違うだけで発作を起こすようなひどい状態になってしまい、上京して一人暮らしは難しいということで、入学早々、大学を半年休学し治療に専念しました。この頃はまだあまりパニック障害が世間に知られておらず、精神疾患という事から偏見(リストカットやODをする、人を刺すなどと思われる)を持たれても嫌なので数年間は隠していました。

その後、投薬とカウンセリング治療の効果もあり、9月から大学に通えるようになったのですが、やはり電車の中やサークルの説明会など閉じられてじっとしていないといけない空間に行くと発作や発作の予兆が出てしまっていました。

そんな中、だいぶクレイジーな事はわかっているのですが、私は高校生の頃からずっとイギリスのとある大学に入りたいと思っていたため、密かに受験の準備をして、親に黙って勝手に受験し、大学2年生の時にイギリスの大学から入学許可をもらうことが出来ました。
パニック障害を持ちながらそれでも留学したいという思いを受け入れて治療に協力してくれた母には感謝です。

・パニック障害を抱えての留学
さて、やっとここからイギリスでの治療の話題になります。
海外なんて3泊4日の台湾旅行くらいしか行ったことの無かった私なので、何が起こるかわからず、主治医から飛行機の中で発作が出た時用の頓服薬を貰い、渡英しました。

イギリスには健康保険のようなNHSという国営の医療サービスがあります。これは外国人でも学生ビザや就労ビザなどがあり滞在が許可されているほとんどの人が加入する制度です。その頃は学生だったので保険料は特に必要なかったです。今は社会人なので保険料がかかります。みんなの税金で成り立っているけれど結構色々と問題を抱えています。NHSについてはググると出てくるので気になる人は調べてみてください。
NHSに加入すると、まずGPというホームドクターに登録しにいきます。GPというのはだいたい家の近所のコンビニくらい数があり、病気や怪我をしたら登録しているGPに通うというのが基本です。怪我でもやけどでもインフルエンザでもその他の病気でも、最初はみんなGPに行きます。診察料は無料です。
(女性は病気でなくても毎月ピルを飲む人が多いので結構みんなGPに行ってるんじゃないかな。ちなみにピルも無料で貰えます。万が一の強姦被害や生理痛緩和、ニキビケアなどのために飲んでいる人がほとんどです。)
私は日本で処方してもらっていたパニック障害の薬を継続的に貰わなければならなかったので、日本の主治医に診断書を書いてもらい、それをGPに渡しました。
ちなみにNHSには無料の通訳サービスがあり、事前に予約をするとちゃんと診断の際に日本語の通訳が出来る人が来てくれます。私は最初の頃は英語で症状を説明するのが難しかったので、通訳をお願いしていました。後にカウンセリングの事も記述しますが、カウンセリングにも無料の通訳サービスをつけてもらうことができます。

・GPでの診察から処方箋発行までの流れ
GPでは最初に身長体重や飲酒喫煙ドラッグ歴、妊娠出産歴など基本的なパーソナルデータの問診があります。
その後は日本の精神科と同じように病気についての問診があります。この時にカウンセリングサービスを受けたいかどうか聞かれ、無料だったので試しに受ける事にしました。
診断書があったので、薬も日本にいた頃と同じものの処方箋を発行してもらえました。薬の貰い方の流れは、後ほど書きます。
(私が年頃の学生だったというのも関係してか、時間に余裕があると、診察の際に「避妊はどうしてる?ピルとインプラントがあるわよ!」とか、「来たついでに性病検査もしとく?」とか勧めてくれたので、それをきっかけにピルを飲み始めたり、パートナーが出来た際には性病検査を受けたりもしました。コンドームを無料でくれたりもします。わざわざ新しく予約して行くほどでなくても、こうして気軽に受けられるのは良いなと思いました。)

・NHSのカウンセリング
カウンセリングサービスは、1回1時間ほど無料で受けられます。
私は当初2週間に1度の頻度で通っていましたが、色んなことを相談できる友達ができたり、イギリスでの生活に慣れてきてあまり不安がなくなったので、途中で行くのをやめました。
カウンセラーの資格を持った人が丁寧に話をきいてくれ、必要な場合は認知行動療法や、セラピー的なものを勧められたりもします。イギリスはちょっとした事でカウンセリングに通っている人が多いので、何かあると友達からもすぐ「カウンセリングに行ってみたら?」と勧められたりします。あとはドラッグの依存症の人も日本より多いので、そういった依存症の改善プログラムなども充実しているみたいです。
日本で通っていたカウンセリングは保険がきかないところだったので一回7000円したのですが、イギリスは無料なので金銭的な負担がないのが本当にありがたかったです。

・薬の貰い方
薬は処方箋を持って薬局に行き、その場もしくは翌日以降に貰います。貰い方は日本とほとんど同じなのですが、料金制度が違います。
NHSでは、1種類の処方につきいくら(今は£9くらい)と決められているので、例えばAという名前の薬とBという名前の薬を貰う場合、£9×2=£18を支払う事になります。
私は現在、ADHDも含めると 3種類の薬を処方されているので、月に£27かかってしまうわけですが、繰り返し処方される場合はPrescription Prepayment Certificate という、年間£110くらいを支払えば何種類処方されていてもそれでオッケーという制度があり、それに登録しています。(薬のサブスク・薬もらい放題と呼んでいる)
また、精神疾患の薬は乱用を防ぐ目的で、一度に28日分しか出してもらえないものが多く、日本にいるときは毎月通院しなければいけなかったのですが、イギリスでは前回と同じ薬を処方してもらう場合はRepeat Prescriptionといって、NHSのアプリから申請すると早くて翌日に薬局で薬を受け取れるというサービス(もちろん無料)もあります。なにせイギリスのGPは予約が取れるのが1,2ヶ月先というのはザラなので、いちいち予約をとって通院しなくて良いのは本当にありがたいです。GP側も同じ処方に診察の時間を割きたくないんでしょうね。ただ患者の状態を見なくても簡単に処方されてしまうので、これは良し悪しだとは思います。

・まとめ
日本とイギリスの医療制度を精神疾患・ADHD持ちのいち患者という視点で見ると、どちらも一長一短があります。
日本は医療保険の範囲内でも自分で医者(病院)を選べるので、評判や自分と合うか合わないかなどで選ぶ事ができます。GPでは、あくまでもホームドクターの診察になるので、精神科に特化しているわけではない・診察のきめ細やかさなどにバラツキがあり、当たり外れが激しいなどの問題があります。(医療費全額負担をすれば私立病院で良い医療サービスを受けられます。)
毎月の予約や通院の煩わしさ(特に精神疾患は、通院日に通院できるほど調子が良いと限らない・ADHDだと予約時間に遅れるリスクが高い)がないというのは私にとってとてもありがたく、今のところイギリスでの治療にとても満足しています。
治療内容に関しては、私の場合は元々イギリスにいる時の方がパニック発作が起きづらい(地下鉄が日本ほどピリついていない、満員電車があまりない、街があまり綺麗でなく人々が整然と歩いていないので気持ちがリラックスできる、発作が起きても誰かがすぐ駆けつけてくれる安心感があるのが要因?)らしく、また日本にいた頃は急性期だったりしたので、どちらの治療がより効果的だったのかとかはちょっと比較しづらいです。
多分イギリスでトラウマ的な出来事が起こったとしたら症状が悪くなったり、PTSDになったりするかもしれないし、その辺りは比較出来ないかなと。
今はパニック発作の症状はほとんど出ていませんが、たまーに予兆を感じたり小さな発作が出たりはあるので、あまりストレスを溜めないように無理をせず上手に付き合っていきたいです。

・余談
先程二度目以降の同じ薬の処方はアプリから予約できて便利!簡単!楽!と書いたのですが、半年前になんと大手薬局Bootsが私の処方箋申請を見落としたのか忘れたのかなんなのか、指定された日に薬を取りに行っても在庫がない!という事をやらかしまして…。
翌日から1週間ギリシャへ行くのでその日しか受け取れないのに!という事で、なんと薬局を4軒かけずり回り(電話で聞こうとしても繋がらなかったので直接行った。しかもバス路線なかったのでそれぞれタクシーで!)それでも在庫がなく、しまいには街の総合病院のA&E(緊急外来)にかけこんで事情を説明、レセプションの60代くらいの女性が在庫のある隣町の薬局を調べて電話をかけてくれました。
病院からその薬局は徒歩と電車で1時間ほどだったのですが、その女性はその薬局の近くに住んでいてこれから車で帰るから乗せて行くわよとまさに女神のような申し出をしてくださり、薬局で薬を貰うところまで付き添ってくれました。
白衣の天使って本当にいたんだ…捨てる神(Boots)あれば拾う神(白衣の天使)ありな所がすごくイギリスらしいなと思った一日でした。

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