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脳卒中片麻痺者の歩行の問題点が一瞬で分かる!?片麻痺者専用歩行フローを緊急公開!

はじめに〜脳卒中片麻痺者の歩行評価をする時に、フローがあれば見方が劇的に変わる〜

脳卒中片麻痺者の歩行再建に歩行練習は大切です。

 脳卒中治療ガイドライン2021でも、片麻痺者の歩行障害に対するリハビリテーションに関しては以下のように記載されています。


 「歩行機能を改善させるためには、頻回な歩行訓練を行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)。」

脳卒中治療ガイドライン2021

 エビデンスを詳しく見てみましょう。

 「頻回な歩行訓練が歩行速度や歩行耐久性を改善することは、明らかになっている。」

脳卒中治療ガイドライン2021

 とだけ記載されています。

訓練量を多くすると歩行改善に効果がありますよ、と述べられているものの、どのように訓練すると良いのか、までの記載はありません。
この文章だけ読むと、歩行訓練を多くやれば良くなるとも解釈できます。

 
本当にそうでしょうか。

 
実際の臨床場面では、決してそんなことがないと皆さんも自覚していることと思います。

 
片麻痺者と一括りにしても、さまざまな歩き方をしますし、


理学療法を進める上で、どのように歩行練習を実施していくのが良いのか考えながら進めていると思います。


そんな脳卒中片麻痺者の歩行練習ですが、悩むポイントがあります。


 例えば、膝屈曲位のまま足底接地し、立脚期も常時膝屈曲したままで、遊脚期は股関節と膝関節の屈曲角度が大きく足関節が軽度底屈位で歩く片麻痺者がいたとします。

 
みなさんはどこに着目しますか?

 立脚期で常に膝屈曲していること?

立脚初期で足底接地していること??

遊脚期???

 悩みますよね。全て正常歩行から逸脱しているから、悩むんだと思います。

 つまり、片麻痺者の歩行練習で悩むポイントは


「1歩行周期の中でも、どの歩行周期に着目するべきなのか」
です。


 さまざまな歩き方をする片麻痺者に対する理学療法内容を、事細かに説明している本や文献は少ないと思います。少なくとも私たちは見つけられませんでした。

 
そこで、私達はチームを組んで歩行評価フローチャートを作成しました。


このフローチャートを見れば、新人であっても、先輩と対等に議論することができます。

 
なお、チームは、急性期・回復期・生活期の理学療法士が混じって議論しました。


そのため、病期に偏ることなく、普遍的なものが完成したと思っています。


これを読むことで、臨床での歩行練習を進める際の基準になると思います。


ぜひ、ご覧ください。

 (※有料部分では、歩行のフローチャートと各層の実践的な評価項目をご紹介しており、約9,000文字の記事となります。)

1. 正常歩行のまとめ

歩行について考える上で重要な要素として、“正常歩行”について簡単に説明していきます。

観察による歩行分析によると、

正常歩行とは、

「正常(平均をとった際に見られる特徴)とみなすことができる人の歩行の機能」

観察による歩行分析

 と説明しています。

その上で、私たちのチームでも共通言語として、以下の用語を使用してきました。

 

IC:初期接地 歩行周期0% 脚が地面に接地する瞬間
LR:荷重応答期 歩行周期0-12% 初期接地から反対側の脚が地面から離れる瞬間
MSt:立脚中期 歩行周期12-31%  反対側の脚が地面から離れた瞬間から観察肢の踵が床から離れる瞬間
TSt:立脚終期 歩行周期31-50%  観察肢の踵が床から離れた瞬間から反対側のIC
PSw:前遊脚期 歩行周期50-62%  反対側のICから観察肢のつま先が床から離れる瞬間
ISw:遊脚初期 歩行周期62-75%  観察肢のつま先が床から離れた瞬間から両側下肢が矢状面で交差する瞬間
MSw:遊脚中期 歩行周期75-87%  両側下肢が交差した瞬間から観察肢の下腿が床に対し直角になる瞬間
TSw:遊脚終期 歩行周期87-100%  観察肢の下腿が床に対し直角になった瞬間から観察肢の足が床に触れた瞬間

原著:kirsten Gotz Neumann,訳:月城慶一,山本澄子,江原義弘,他:観察による歩行分析,医学書院,p7-14,p39-46,2005

次に、各周期で見られる観察肢の関節角度を見ていきます。

1)      IC 
股関節20°屈曲
膝関節5°屈曲
足関節0°(ニュートラル)
2)      LR
股関節20°屈曲
膝関節15°屈曲
足関節5°底屈
3)      MSt
股関節0°(ニュートラル)
膝関節5°屈曲
足関節5°背屈
4)      TSt
股関節20°伸展
膝関節15°屈曲
足関節5°背屈
5)      PSw
股関節10°伸展
膝関節40°屈曲
足関節15°底屈

原著:kirsten Gotz Neumann,訳:月城慶一,山本澄子,江原義弘,他:観察による歩行分析,医学書院,p7-14,p39-46,2005

 と、示されています。

この正常歩行と言われる歩行周期・関節運動をもとに

 

私たちは、各病期でリハビリをしてきた知識・経験を集積し、脳卒中片麻痺者の歩行評価でよく観察される(特に注意して観察した方が良い)ポイントを整理し、フローにまとめています。

 

フローをご紹介する前に、歩行評価の現状や問題点に触れてからの方が、フローの必要性が身にしみて分かると思うので、それらを説明していきます。

 2. 歩行評価の現状

現在、歩行評価は理学療法士では頻繁に行われていますが、評価方法は確立されていません。

実際に、臨床で悩んだ時に、先輩セラピストに聞くと、さまざまな返事が返って来ます。

先輩A「立脚期に膝が屈曲するから、そこを介入するといいと思う。」

先輩B「踵接地ができていないね。膝が曲がっているしね。」

先輩C「立脚後期が不安定だね」

自分「・・・?」

なんの解決にも至りません。

 

 

歩行評価には「経験が必要」と言うことを言っているセラピストがいます。

これは本当でしょうか?

では、経験することで何が培われるのでしょうか?

 

それは、見るべき視点・ポイントをわかっているかどうかです。

 

わかりやすい例を挙げてみましょう。学生の歩行評価例を挙げてみます。

 

この記事を読んで下さっている方の中には、すでに学生のバイザーを経験しているセラピストも多いかと思います。

 

思い返してみてください。

 

学生と一緒に歩行評価をすると、学生はどのような観察結果を述べているでしょうか。

 

学生A「左に傾きやすいです」

学生B「左膝が曲がってます。」

学生C「なんだかフラフラしてて危ないです。」

 

 

さまざまな視点から意見が出てきます。

 

 

しかし、このようなことは前述の通り、学生だけに限ったことではありません。

 

臨床経験のあるセラピスト間でも起こりうることです。

 

 

そんなセラピスト間で症例検討・報告会を実施すると・・・

 

「そもそも、その相よりも・・・、ここの方が気になる。」

 

と言う意見が出てきてしまったりして、収集つかなくなることを経験したことがある方も多いのではないでしょうか。

 

歩行評価の際に大事な経験とは、見るべきポイントがわかっているかどうかに大きく左右されます。

 

 

この問題を解決するために、私たちは評価するポイントをフローにすることで整理しました。

 

では、現時点の問題点として、臨床現場で起きている問題について、です。

 

1)    問題となり得る歩行周期が多数存在する

実際に脳卒中片麻痺者の歩行評価をすると、麻痺側の立脚期から遊脚期にかけて正常歩行とは異なる歩容を示す方が多いと思います。

 

もちろん、多くの歩行周期に問題点が散在していることは、仕方ありません。 

だからこそ、さまざまな見方や意見が出てきてしまうのではないでしょうか。


 2)    前の歩行周期が影響している?

歩行の問題となる周期を見極め、その周期にアプローチした結果、次の周期も良くなった、ということを経験したことはありませんか?

 

 

歩行評価は周期別に見ていくことで、問題点を明確化しやすくなりますが、あくまで歩行は“連続性”で成り立っている動作なので、このようなことが起こり得ます。

 

 

そのため、歩行評価のみでは、本当の問題点(問題となる周期)が隠れてしまう可能性が多いにあります。

 

 

誤った評価結果のみを鵜呑みにし、アプローチを続けていっても、改善に繋がらない可能性があります。

 

 

そこで、私たちは歩行評価(観察)のみではどうしても整理しきれないと判断し、各歩行周期に必要な詳細な評価方法も同時に検討してきました。

 

 

詳しくは後ほどご紹介していきます。

 

 

続いて歩行評価で重要なことです。


3. 歩行評価で重要なこと

私たちが作成したフローは、歩行評価の課題を解決するものです。

 

歩行評価の方法に課題を感じている方は、おそらく多いのではないでしょうか。

 

そのため、歩行評価の方法に対する課題は、適切な課題と言えます。

私たちが考えた解決策は

「歩行評価のフローを作成すること」です。

 

歩行評価のフローを作成する上で、重要なことは2つです。

 

1)      客観的であること

2)      次に行うことが明確になること(ゴールを明確)

 

順に説明します。

1)    客観的であること

歩行評価にセラピスト間で差があることは前述した通りで、主観的であることが大きな問題点です。

これを解決するには、客観的であることが重要です。

 

ROMでは角度でハッキリ分かるけど、MMTは主観的な部分が大きいため、客観的なデータとして装置を使おうというような感じです。

それと同じで、歩行評価する際もできるだけ客観的にする必要があります。

 

 2)    次に行うことが明確になること

これも臨床的には悩む部分が大きいと思います。

明確なプロトコルやルーチンがあると、次に行うことが明確になります。

 

フローにすることで、現状を視覚的に把握しやすくなり、

次に進むべきSTEPも一目でわかります。

 

そのため、歩行評価フローでは、小さいゴールをいくつか設定しています。

そして、各周期の評価ではレベル分けし、問題となる周期の判断をしやすくしていると同時に、理学療法のプログラムを立案する際にも役立つようにしています。

 4. フロー

 

お待たせしました。

作成したフローがこちらです。

 

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