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一撃で分かる!!脳卒中片麻痺-立位の謎を解く!!

はじめに|フローを使用して立位の本質を見抜き、基本動作が劇的に変わる!!

脳卒中を患うと、座ったり、立ったり、歩いたりと基本動作がとても難しくなります。

座位、立位、歩行どれも大事ですよね。この中で「立位」保持機能は座位・歩行に大きく関わってくるためとても重要です。


ADLを見るとき立位バランスを評価してますか?

一方、立位の重要性は分かっているものの、「歩行」のみに着目しがちです。

片麻痺歩行


「歩行」を獲得するためにも、「立位」を見ることは最重要課題なのです。

片麻痺歩行の介助

では、歩行獲得に向けてどのような立位保持獲得が必要になってくるのでしょうか?


歩くための立位保持。私たちは一定の結論に達しました。

結論、


「体幹up right、股関節伸展位、足関節背屈位、膝関節伸展位(過伸展は除く)で立位保持が出来ること」
です。

※左右不均衡が出来る限り少ないという前提です。


この姿勢は、最終的に“歩行”に繋がってきます。


特に歩行に繋がるポイントは、"立脚中期以降"です。


この立脚中期以降において、上記で示した立位姿勢と似ています。


静的な立位姿勢でこの姿勢が取れずに、歩行において上記に示した姿勢を保持しながら、歩行を遂行するのは難しいですよね。


また、歩行において上記に示した姿勢を保持することは、“歩行リズム”を生成するのにとても重要になってきます。

いわゆる、Central pattern generator(CPG)ですね。

これは脊髄内に存在する介在細胞群の神経回路のことです。

骨格筋、皮膚、そして関節からの信号によって屈曲反射を誘発する介在細胞群の神経回路がCPGとして機能します。

CPGで生成される情報を基に、骨格筋からのI群とII群線維からの入力を受ける介在細胞が「歩行パターン」を生成すると考えられると言われております。

〈引用〉高草木薫:大脳皮質・脳幹-脊髄による姿勢と歩行の制御機構.脊髄外科(2013.12).27巻3号:208-215


この骨格筋からの情報が重要です。

歩行中に股関節が伸展して腸腰筋が伸張され、足関節が背屈して下腿三頭筋が伸張されることで、I群とII群線維からの情報を介して、CPGを賦活して、歩行リズムの生成に関与しているのですね。


歩行の神経路

なので、上記に示した立位姿勢が重要になるわけです。

それにも関わらず、正常から逸脱した立位姿勢になっているケースが多いです。

✅麻痺側膝が屈曲して支持している

✅体幹が前屈してしまっている

✅麻痺側前足部支持になってしまっている等々

このような姿勢をとっている方が多くいると感じます。


このような姿勢をとっていると、歩行する際に、分回し歩行や体幹を非麻痺側へ側屈させ歩行を獲得してしまう可能性があります。


良く無いのは十分に分かりますが、このような代償の歩行は極力少ない方がいいですよね。


正常歩行と比較して逸脱すれば逸脱する程、身体には負担がかかりますし、痛みの発生にも繋がってきてしまいます。


しかし、「体幹up right、股関節伸展位、足関節背屈位、膝関節伸展位(過伸展は除く)で立位保持が出来ること」が重要とは分かっていても、実際の臨床ではどこから介入すれば良いかが難しいですよね。


立位保持獲得に向けて、機能障害へ落とし込めていないことと、その問題点の優先順位をつけることが難しいのです。


本当に難しいですよね。


だって…


✅体幹筋筋緊張低下

✅股関節周囲筋の出力低下

✅足関節周囲筋の出力低下

✅姿勢制御系不良等々

色々ありますよね。


これらの問題点の優先順位をつけて、機能障害に対してアプローチしていくことが重要だと感じています。


セラピスト間で意見が違ったら、機能障害に対してアプローチが困難になってくるかと思います。


患者さんや患者さんご家族様から一番言われるのが、

「歩ければな、、、」

という発言が多い印象があります。


今まで普通に歩いて、トイレに行ったり、仕事に行ったり、出かけたり普通に出来ていたことが脳卒中を発症することによって、急に出来なくなってしまいます。。。


なってほしくはありませんが、車椅子生活を余儀なくされてしまう可能性があります。。。


本当に怖い病気です。しかし、歩くということを諦めてはいけません。セラピストが歩くことについて諦めてしまうと、当然患者さんも諦めてしまいます。


例えば、50歳代で脳卒中を発症して、80歳くらいまで生きるとしましたら、30年間くらい車椅子生活だったらどうでしょうか??


当事者の方、勿論その親族の方、嫌になってしまいますよね。


歩行獲得が出来ずに、車椅子レベルになってしまうと、ご本人様は大変ですし、ご家族様も大変なのが想像つくと思います。


そこで今回は歩行獲得においては「立位」保持はとても重要となってくるため、歩行の前の「立位」に着目して、お話しを進めていきたいと思います。

※今回のフローに関しては、静的立位保持獲得に向けてのフローなので、動的立位に関しては述べてないのでよろしくお願い致します。


また、歩行について知りたい方に関しては、別のnoteに記載してありますので、是非ご覧になってみて下さい。

座位もあります。

そこで、私達はチームを組んで立位評価のフローチャートを作成しました。

このフローチャートを見れば、新人であっても、先輩と対等に議論することが出来ます。


なお、このチームは、急性期・回復期・生活期の理学療法士が混じって議論をしました。そのため、病期に偏ることなく、普遍的なものが完成したと思っています。

是非ご覧になってみて下さい。

1.立位をみる際につまずくポイント


立位保持を獲得するのにセラピスト間で意見が大きく違ってくることが多いですよね。


結論から申しますと、「立位保持において、立てていれば良い」という主観的な考え方を持っている方が多く感じます。


①「そろそろ立てるようになってきたからトイレ動作のADLあげようか」

②「麻痺側足で支持できるようになってきたからADLあげようか」

③「麻痺側足が少し曲がっているけど、非麻痺側で立てるようになってきたからADLあげようか」など

主観的な意見で患者さんのADLレベルがあがっていくのがあるかと思います。


これはまずいですよね。

立位保持はその先の動作、「歩行」を獲得するための通過地点にはなりますが、上記のような考えでADLをあげてしまい、なかなか歩行獲得に時間がかかってしまうケースがよくあります。

立位保持を軽視している方が多いと思いますが、とても重要です。


確かに、現状回復期リハビリ病棟では入院期間が短縮してきており、その方の目標によっては、早めにADLレベルをあげたい気持ちは分かります。


しかし、そこで焦ってADLをあげてしまい、その先の「歩行」獲得に時間がかかってしまっては本末転倒です。


立位保持獲得において、様々な主観的な意見があり、そこでADLレベルがあがっていくのを目の当たりにしています。


そこで、このようにADLを上げてしまうということは、セラピスト間で、「立位保持獲得の統一」が出来ていないことが大きな問題だと考えました。


立位保持獲得において、機能障害まで落とし込めていないというのがあると思います。


先程もお伝えしましたが、

✅体幹筋筋緊張低下

✅股関節周囲筋の出力低下

✅足関節周囲筋の出力低下

✅姿勢制御系不良等々

色々ありますよね。


立位保持獲得に向けて、機能障害までしっかり落とし込めている文献はなかなか見つからないのが現実です。


そう考えると、、、立位保持獲得における問題点の優先順位をつけるのって難しいですよね。


これらの問題点の優先順位をつけて、機能障害に対してアプローチしていくことが重要だと感じています。


例えば、50歳代で脳卒中を発症し、予後として歩行獲得が出来る患者さんでも、上記に述べた①-③によって、立位保持獲得したと判断してしまったとします。歩行獲得は出来たが、その歩容が分廻し歩行になってしまったり、体幹を非麻痺側へ大きく側屈して振り出すようになってしまう歩行になってしまったり、、、 


これはいけないですね。理学療法士の勉強不足で、そのような歩容になったと言われても過言ではありません。


このように、「歩行」獲得の前段階の「立位保持獲得」獲得は重要になってきます。


次に、基本的に言われている立位について述べていきたいと思います。

2.立位とは?


次に「立位とはなんぞや?」というところで述べていきたいと思います。


それぞれ3項目に分けましたので、説明していきます。


1)運動学的解釈

立位:

[前額面]

・喉頭隆起→椎骨棘突起→殿裂→両膝関節内側間の中心→両内果間の中心

[矢状面]

・耳垂→肩峰→大転子→膝関節前面(膝蓋骨後面)→外果のやや前方

を通る重心線が支持基底面内に入っていることが条件となります。

〈引用〉中村隆一 編:基礎運動学第6版,医歯薬出版株式会社,2009.335-336


立位のアライメント

※円背などの姿勢が変化してしまっている方は別で、今回は一般的に教科書で言われていることからお話しを進めていきます。

上記に述べた姿勢での筋活動におきましては、下の表の筋肉が働いております。

立位の姿勢保持筋

・後頭下筋群、腹筋群、脊柱起立筋、中臀筋、腸腰筋、大腿筋膜張筋、大腿二頭筋、腓腹筋、ヒラメ筋の筋活動が姿勢保持筋と言われ、立位保持においては重要になってきます。

〈引用〉中村隆一 編:基礎運動学第6版,医歯薬出版株式会社,2009.336


また、矢状面上では重心線が耳垂→肩峰→大転子→膝関節前面(膝蓋骨後面)→外果のやや前方を通っていると上記で説明しましたが、これに対して姿勢保持筋として何筋が働いているかを重心線が通る部位順で説明していきます。(※今回はフローが矢状面状でのものとなっているため矢状面について説明します)


まず、耳垂と肩峰を通ることで、後頭下筋群が働きます。

そして、肩峰と大転子を通ることで、脊柱起立筋群と腹筋群が働きます。

また、大転子を通ることで、腸腰筋が働きます。

膝関節前面(膝蓋骨後面)を通ることで、大腿二頭筋が働きます。

最後に外果のやや前方を通ることで、下腿三頭筋が働いてきます。


2)腹内側系・背外側系的解釈


次は腹内側系・背外側系から述べていきたいと思います。

ヒトが立っている姿勢を保つためにはこの知識は必要になってきます。


✅腹内側系:体幹および上下肢近位筋の支配優位

✅背外側系:上下肢遠位筋の支配優位

となっております。


歩行の神経路/高草木薫

これはなんぞや?と思う方がいるかと思います。


簡単に述べますと腹内側系は姿勢制御(図:左)に働き、背外側系は随意運動制御(図:右)に働くと覚えていただければと思います。


また、腹内側系は“同側性支配”、背外側系は“交叉性支配”と言われております。後者に関しましては、いわゆる“外側皮質脊髄路”です。この神経路は

✅一次運動野→放線冠→内包後脚→中脳大脳脚→橋底部→延髄錐体→交叉→脊髄側索を下行→脊髄前角細胞の順で経路はなっております。

一方、前者に関しましては、“皮質網様体脊髄路”と呼ばれます。

✅補足運動野や運動前野(6野)→皮質脊髄路の後方を下行→交差せず同側を下行→脊髄前索を下行→脊髄前角細胞

となっております。

再度お伝えしておきますが、この両者とも最終的に脊髄前角細胞にいきつきますが、“外側皮質脊髄路”は手・足の運動を制御、“皮質網様体脊髄路”は体幹・上下肢近位筋の制御をしております。

そして、立位保持をするにあたって、この“腹内側系-皮質網様体脊髄路”が重要となってきます。

〈参考・引用〉高草木薫:大脳基底核による運動制御,臨床神経学49巻6号,2009.325-326


〈参考・引用〉鈴木恒彦 編:脳卒中の臨床神経リハビリテーション,市村出版,2016.69.82-86


次に理解が必要となってくるのが、バランス制御になってきます。


3)姿勢制御における感覚システム


姿勢制御に必要な感覚情報は、

✅視覚-10%

✅前庭感覚-20%

✅体性感覚-70%

の割合として担っています。

健常人に関しては、視覚や前庭感覚はほとんど必要とせず、体性感覚情報を元にしております。


姿勢制御のための視覚・前庭覚・体性感覚

脳卒中者に関しては、視覚や前庭感覚に依存しやすくなります。

例えば、床面をみながらの姿勢だと視覚依存、頭頸部や眼球を固定した姿勢は前庭依存、下肢の支持を過剰に強め緩められない姿勢は前庭依存など姿勢として、視覚や前庭感覚に依存した制御をすることが多くなります。

〈引用〉金子唯史 編:脳卒中の動作分析 臨床推論から治療アプローチまで,医学書院,2018.210-211


バランス制御の感覚システムで、視覚や前庭感覚の依存が強くなってしまうとどのような問題が生じてきてしまうかと言いますと、

まず、視覚依存では、常に床を見ながら(下方注視)、動作を行うことになります。

そうすると、姿勢的に体幹が前方傾斜して、股関節屈曲位になってしまいます。

股関節周囲筋の出力が弱ってしまっている方ですと、骨盤後方回旋が出現し、反張膝や足部内反を助長してしまう可能性があります。

これは気をつけなければなりませんよね。


次に、前庭感覚においては、この感覚システムの3つの中で、静的な状態及び外乱負荷に対する頭部の傾きに応じて、最も素早く入力されると言われております。

その入力経路は、前庭神経を経由し、脳幹及び小脳に入力され、前庭反射として頭頸部の制御あるいは前庭脊髄路および網様体脊髄路を介して抗重力筋を制御します。


前庭感覚はどのように姿勢制御しているのかと言いますと、外側前庭神経核から起始する“外側前庭脊髄路”と内側前庭神経核から起始する“内側前庭脊髄路”があります。

前者は、主に下肢伸筋群の運動ニューロンに対して直接興奮性に、屈筋群には介在ニューロンを介して抑制性に作用します。

後者は、主に体幹・頸部の筋群に対して興奮性、抑制性の両方に作用しています。


前者の“外側前庭脊髄路”が過剰に働いてしまうと、抗重力筋の下肢伸展作用が強力になってしまい、床面を押す様な姿勢制御になってしまうため、立位保持が困難になります。


なので、視覚や前庭感覚優位で姿勢制御をとってしまっている方は、“体性感覚入力”を入れるトレーニングが必要となってきます。


基本的な参考書にのっていることを述べました。

ここで参考書にはこのようにのっているが、本当に臨床ではこれをみてどのようにすれば立位保持を獲得できるのかという疑問が出てきますよね。


4)実際のフローの概略


ここまで運動学的解釈、腹内側系・腹外側系的解釈、姿勢制御における感覚システムにおける立位の要素について述べてきました。


結論として、立位保持に関して要素が多くある中で、今回私たちが作成したフローに関して臨床評価を用いるときに、“筋機能的要素”を中心にまとめております。


その理由としては、腹内側系・腹外側系的解釈や姿勢制御における感覚システムの項目は主観的な要素が大きいことと、筋機能的要素で解釈した方が、各セラピストの意見のばらつきが減ると考えているからです。


腹内側系・腹外側系的解釈、姿勢制御における感覚システムに関しては、立位における姿勢制御を理解する上でとても必要です。しかし臨床上、運動と現象として評価する上では、難しい面があるかと思います。


腹内側系・腹外側系的解釈に関しては、立位における姿勢制御をする際の背景として理解は必要ですが、評価が曖昧になってしまいます。評価尺度がないのと、文献等でも評価として使用していることがないのが現状です。


姿勢制御における感覚システムに関しては、感覚は主観的要素がとても大きいです。この感覚システムに関しても姿勢制御をする上で重要ですが、口頭で評価するしかなく、高次脳機能障害を伴っている方に関しては、評価がとても曖昧になるのが現実です。


この2つに関して、フローとしてまとめて成立していくかというと難しい面があるかと思います。


そこで、今回私たちが作成したフローにおける“筋機能的解釈”においてのポイントとしては、

  1. セラピストの触診で筋活動が分かる

  2. 動作を関節運動で評価できる

ということです。


この2つは上記に示した腹内側系・腹外側系的解釈、姿勢制御における感覚システムの主観的な評価では、なかなか困難ということが分かります。


次に立位保持獲得に向けてということについて述べていきます。


3.立位保持獲得に向けて


さて立位保持獲得に向けて述べていきたいと思います。


何回もお伝えする形になってしまいますが、立位→機能障害の整理・優先順位づけは本当に難しいと思っております。


例を挙げながら説明していきます。


50代、脳梗塞、左片麻痺、立位保持機能:片手支持にて見守りで保持可能、フリーでは保持困難、麻痺側へ傾倒。高次脳機能は特に問題なし。


この方の立位保持機能に関してはどうでしょうか?


片手支持では立てるが、フリーでは保持困難です。


この方のフリー立位保持獲得に関しての問題は、麻痺側へ傾倒してしまうことですね。


この機能障害の仮説としては、

✅体幹筋の問題か

✅股関節周囲の問題か

✅足関節周囲の問題か等々

色々と出てきますよね。


この方に対して立位保持獲得のために、問題点の整理・優先順位づけをどのようにしていったらよいのでしょうか?


そこで、今回私たちが思案した“フロー”の登場です。

この立位保持獲得に向けてのフローは、主に動作の現象に対して、思案したものであるため、細かい機能障害は別に評価が必要になってきますので、ご理解の程よろしくお願いします。

また、今回作成した立位の問題点が分かるフローを、症例に使う際の手順についても載せていますので、より実践的にお使いいただけます。

4.フロー


お待たせしました。


作成したフローがこちらです。


1)立位評価フロー



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