#73: こんなときだから♪リスト〜印象派へのかけはし「エステ荘の噴水」

リスト:巡礼第三年より「エステ荘の噴水」(1883)

#71 -77のテーマは「音楽家を惹きつけて止まない『水』という現象ー水と音楽」

#71 , 72 と音楽の「水」を語る上で外せない音楽を紹介しましたが,その源流となる作品があります。それが本日お送りするフランツ・リスト(1811-1886)の「エステ荘の噴水」です。

ラヴェルとドビュッシーはこの曲を聴き,水を音楽で表現する,特にピアノの表現の可能性について大きな影響を受けました。ドビュッシーなんかあまりの衝撃で,この曲を聴いた後,顔面蒼白になったとか……。リストは歴史上ロマン派の作曲家に分類されますが,このように後に続く作曲家に大きな影響を与えたことからもワーグナー と並んで印象派の架け橋となった音楽家と言えるでしょう。

リストは,後年キリスト教に傾倒し僧籍に入ります。この「エステ荘〜」を作曲した頃にはすでにキリスト教を題材にした作品を数多く残しています。この作品にも「私が差し出した水は人の中で湧き出でる泉となり、永遠の生命となるであろう」というヨハネ福音書からの引用が掲げられています。

巧みなアルペジオ(冒頭のような和音を分散して弾く技法),やトレモロ(二つの音程の違う音を素早く繰り返して弾く技法)が湧き出る水を連想するように,リストの祈りの水が音に込められているようで,文字通り心に沁み渡ります。

水のありがたさ,美しさをこの曲とともに味わいたいな,と思わせてくれる名曲です。

今日もみなさんにとって,素敵な一日でありますように!


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