#31: こんなときだから♪ギター
イエペス編曲:映画「禁じられた遊び」より 愛のロマンス(1952)
#29 -35のテーマは「不自由は発明の母ー制約から生まれた音楽」。
「監督,もう予算が……」
満足のいく映像を撮り終えたにもかかわらず,音楽を依頼する予算がほとんど残されていないとわかった時,あなたならどうしますか?
映画音楽といえば,近年では「スターウォーズ」,「ハリー・ポッター」,往年の名作では「風と共に去りぬ」,「戦場にかける橋」など,メインテーマがパッと頭に浮かぶものがたくさんありますよね。オーケストラのサウンドが映画の世界観を表現し,ストーリーを盛り立てます。
そう,映画音楽の名曲と言えばオーケストラ,というのが通説です。
当然,映画「禁じられた遊び」を監督したルネ・クレマンも,オーケストラのサウンドを頭に描いていました。
しかし,制作担当が冒頭のセリフを涙目になりながら勇気を振り絞って監督に伝えた……かどうかは,勝手な妄想ですが,映像を撮り終えた時点で予算が残っていなかった,ということが伝えられています。
オーケストラは,通常60人ほど,大きな編成になると100人を超える演奏者が必要です。もちろんその分,作曲も大変,パート譜を作るのも大変。つまりあらゆる面において大掛かりになるので潤沢な資金が必要となります。
さて,クレマン監督どうするか?
詳しい経緯はわかっていないのですが,クレマンは若きスペインの天才ギタリスト,ナルシソ・イエペス(1927-1997)とパリのカフェで出会います。この時代,もう一人天才ギタリストとして,アンドレス・セゴビアも活躍していましたが,彼一人に依頼する予算すら残されていなかったらしく,当時24歳だったイエペスに「このお金で全部の音楽作って!」ってお願いするしかなかったそうです。
そして誕生したのが本日の一曲である「愛のロマンス」です。
この作品は,イエペスのオリジナルではなく,スペインの民謡をもとにスペインのギタリスト,アントニオ・ルビーラが作曲したものと言われていますが,「禁じられた遊び」におけるイエペスの編曲,演奏によって超有名曲となりました。
今となっては,オーケストラのサウンドで「禁じられた遊び」の世界観を表現できたかどうかわからない,と思えるほど,ギター以外には考えられない,という映画音楽になりました。
家主もお金をかけずに今できる楽しみを発見したいと思います。何かにつながるかも! とワクワクしながら…..
今日もみなさんにとって,素敵な一日でありますように!
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