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日本と米国のDXに対する意識の差に、落胆。DX白書2021を読んだ振り返り。

DXについていろいろ調べているのですが、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が、DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜というレポートを出していましたので、そのサマリレポートについて、私なりに思ったことなどを残していきたいと思います。

このレポートを読む前に、このレポートからどんな情報が得られそうか。ということなのですが、米国はDXを進める先進的な国である一方、日本はかなり出遅れてしまっているという状況ですので、そのあたり、実際のところ、米国と日本って、どのくらい意識格差があって、それぞれの国でどんな特徴があるんだろう? みたいなことのヒントがあるんじゃないか?という視点で見れるレポートなのかなと思います。

個人的には、とはいえ日本。コロナもあったし、頑張ってくれて欲しい!いい結果を見せてくれ!という意気込みで読み始めました。

レポートをみるにあたり、コロナ発生から一年以上経過後の、集計結果であるところがひとつ押さえておきたいポイントですね。

サマリレポート構成はこちら

・第1部:日米のDXへの取り組み状況の概観
・第2部:経営層を含む組織的なDX戦略策定、実施プロセスについて
・第3部:DX戦略を実現する経営資源。リーダーに必要な資質、学び直し
・第4部:DX戦略を実現するための、手法・技術への取り組み

実際のレポートはこちらです。
DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

サイト:https://www.ipa.go.jp/ikc/publish/dx_hakusho.html
PDF:https://www.ipa.go.jp/files/000093705.pdf
実施機関:21年7月5日〜8月6日(534社)が対象


気になるデータ「その1」
DXへの取り組み状況

DXの取り組み状況では、以下のような結果でした。

DXへの取り組み状況
日本:約56%(取り組んでいる) ⇔ 約33.9%(取り組んでいない)
米国:約79%(取り組んでいる) ⇔ 約14.1%(取り組んでいない)

個人的には、意外とみんな前向きに取り組んでいるんだなぁ。と思いましたが、取り組んでいない33%は、とにかく何かアクションを起こしていかないといけないですね。

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

業界ごとのDXへの取り組み状況の違いについては、日本は、米国とくらべて、製造業、流通業・小売業のDXがやや遅れているように見えます。製造業は日本の主要産業の一つでもあるので、ここは頑張っていきたいところです。

気になるデータ「その2」
DX推進プロセス

DXを進めていく際には、「新たな価値の創出」や「既存事業の業務生産性向上や働き方の改革」の2点を両輪で回していくことが重要とのことですが、DXに取り組む日本企業(56%)の中でも、DXの取り組みで十分な成果がでている企業が少ないという結果がでています。

デジタル化により十分な成果が出せているか
日本:約17%(出せている)
米国:約56.7%(出せている)

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

どのようなことが原因で、上記のような結果になっているのかというところはレポートだけではわからないのですが、こちらの原因に関係するデータも載っていました。

アジャイルの原則をどのくらいDX推進に取り入れているかという調査です。
部門毎に微妙に違いはありますが、日本では、アジャイル的な思考はほとんど取り入れられていないことがわかります。

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

じゃぁ、どんな進め方してるの?という感じなのですが、日本的なやり方だとウォーターフォール型とかなんですかね。しっかりと計画を立てて、実装していくような感じ? そうなると、将来像や、あるべき論の構築に結構時間がかかる上に、失敗が許されないという悲劇が起こりそうですね(泣)

ここは、日本企業もぜひ、アジャイル的な発想を取り入れた組織を再構築して、DXを推進していけるといいですよね◎

別の切り口からは、組織的なDX推進ができているかという点を評価する調査ですが、経営層、IT部門、事業部門が強調しながらDXを推進できているかどうかという点を聞いたところ。

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜
経営層、IT部門、事業部門が強調しながらDXを推進できているか
日本:約5.8%(十分にできている)、約34.1%(まぁまぁできている)
米国:約40.4%(十分にできている)、約45.8%(まぁまぁできている)

という結果で、全社的に部署横断で一体感をもって推進できているケースは、全体の40%程度で、米国に比べると、半分ということになります。前段の調査で、「十分に成果が出せている(約17%)」という結果の要因のひとつは、こういった組織体制によるものなのだと思います。その他にも後述される、経営層や従業員のITリテラシーの格差なども影響していると考えられそうです。

その他、DXへの取り組みへの評価として、KPI設定と評価頻度を調査するレポートもありました。こちらも米国と顕著に違いがみられます。

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

上記の表は理解するのにちょっと時間がかかるのですが、要は、KPIの評価や、見直しは米国と比べると全然できていないということなのです。日本の企業は、目標の設定と実績の評価を、全然してないということなんですね。もっとデータをみて、定量的にものごとを判断していく必要がありそうですね。

気になるデータ「その3」
デジタル時代の人材の状況

DX推進を担う人材のニーズに関する調査がありました。DXを担う人材の「量」も「質」も両方不足していることがわかります。

あるデータによると、2018年時点で約22万人が不足しているとされていて、2030年には約45万人に達するとも言われているそうです。

引き続き、DX人材の需要は高そうです。

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

ただ、人材が不足している中でもDXを推進していく必要があります。そのときは、自ら自走していくために、社員を育てていく活動も検討していく必要があります。社員の学び直しに関する調査結果もありました(下表)

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

社員の学び直しの取り組み状況は、米国では7割以上が、明確な方針を持ち社内の学び直しに取り組んでいることに対して、日本では、4割以上がなにも検討していないという結果に。また実際の向上施策(社内外研修の受講)についても、5割以上の企業がなにも実施していないという結果に。米国の動きの速さがすごいなぁと感じると同時に、日本企業の動きの遅さは、とても残念。がんばれ日本。

上記とは、相反する結果となりますが、DXを推進する上で、従業員のITリテラシー向上の重要度は高く認識されているようです。変革を担う人材やIT部門の人材には、テクノロジーを理解した上で業務を行う必要がある。という結果がでています。なおさら前段の社員教育をしていく必要がありますね

DXを推進する人材は、テクノロジーへの理解が必要
日本:約75.3%
米国:約86%

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

ITリテラシー系のデータでは、以下の表の調査は、僕も新鮮だったのですが、社員のITリテラシーレベルを会社が認識・把握しているかというもの。米国では、大体把握しているが、8割となっており。従業員のスキルセットに対してなにかしらの基準があることが伺えます。米国はジョブ型雇用なので、このジョブの人は大体このぐらいのスキル、ITリテラシー、みたいなところも決まっているのかもしれないですね。日本はメンバーシップ型雇用なので、スキルは個人の特性や経験してきた業務によって変わってくるため、会社がスキルセットを把握できるように管理できていないのかもしれません。そもそもITリテラシーという軸では、見てないんだと思いますが。。

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

気になるデータ「その4」
DXを支える手法と技術

DXは、ユーザの課題を解決するために、テクノロジーを活用して、もっとも最適な方法で、その課題を解決していくことが求められます。それは時に既存の製品やサービスを根底から再設計しなおして、ユーザを中心として最適化していくことを指しますが、そういった取り組みを推進していくための開発手法に関する調査結果がありました。レポートでは、「デザイン思考」、「アジャイル開発」、「DevOps」がDX推進に有効な手段と定義されており、企業がこういった思考や開発手法を積極的に採用して実行していけるかどうかが成果に直結してきそうです。

【用語について】
デザイン思考 ・・・ 新しい価値提供を創出するために有効な手法
アジャイル開発 ・・・ 短期間で開発・検証を繰り返す開発手法
DevOps・・・開発チームと運用チームが連携して、スピードと品質向上を目指す手法

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

上記の3つの手法は、数年前から聞いている言葉ですが、いずれの手法も日本で採用している企業はとても少ないようです。この結果も個人的にはとても残念な結果です。

つづいて、さらに残念なデータが続きます。データ利活用で、組織的なデータ利活用推進策への取り組みについての調査結果です。

全社的なデータ利活用の方針や文化がない
日本:37.1%
米国:24.1%
データを収集する仕組みがない
日本:22.7%
米国:11.1%
データ管理システムが整備されていない
日本:31.5%
米国:14.1%
人材の確保が難しい
日本:41.5%
米国:14.1%

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引用:DX白書2021〜日米比較調査にみる、DXの戦略、人材、技術〜

先がわからない、新しい取り組みをする際には、データドリブンな経営や現場の意思決定が必要になってきますが、データを活用する文化や、そもそもデータが見れる状況になっていないというのが、かなり厳しい状況です。これは、意思決定に影響がでるだけでなく、ユーザに、より付加価値の高いサービスを構築するためのデータも十分に蓄積できていないということだと思いますので、日本企業の喫緊の課題は、まずデータをしっかりと収集して、管理、活用できる状況にするための、土台を作るというのを早急に取り組んでいく必要がありそうです

まとめ

DX白書2021のサマリレポートですが、読めば読むほど、む?むむむ?と見返してしまうほど、課題山積みだなと思ってしまう内容でした。ただDXという言葉は、かなり浸透して、世の中全体としてそれを進めていく流れが着実にできあがってきているので、課題山積みだけど、その課題を一つずつ解決して、より良い社会にできるよう、私も自分にできることをしていきたい。と強く思えるようなレポートでした◎

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