見出し画像

《有料・冒頭試読》【ロッテ球団73年考察/(7)-投手-「勝利」最多勝と20勝&73シーズン勝利数ベスト10】

(写真 左・球団記録シーズン33勝を記録した小野正一、右・同30勝を記録した小山正明)

(7)(投手編)「勝利」最多勝と20勝&73シーズン勝利数ベスト10

 歴代の投手力と近年の投手力を比較することは簡単ではない。それは、マウンドに上がる環境が大きく違うからだ。例えば、昭和の時代ならばエースは中3~4日で先発し、肝心な試合では抑えとしてもマウンドに上がっていたからだ。しかも、抑えといっても9回だけではなく、6回や7回のピンチの場面でマウンドに上がり、最後まで投げ切っていた。しかし現在では、先発は週1回で100球をメドに投げ、中継ぎ、最終回は抑えと「投手分業制」が確立しているからだ。
 そのため、昭和の時代は登板過多で短い野球人生となってしまった投手も多かった。オリオンズとマリーンズの投手の歴史を紐解いた時、70年を超える歴史の中で200勝を達成したのが村田兆治一人だという事は、それを裏づけている。その村田にしてもヒジを痛め、メスを入れて復活している。そんな悲しい背景があることを申し上げておきたい。

 まずは最多勝獲得投手と20勝到達投手の一覧から。

【シーズン20勝以上投手と最多勝利投手】

★1950(昭和25)年…【最多勝】荒巻  淳(24歳) 26勝(8敗 48試合(先発19)) ※NPB100傑59位タイ ★日本一
◇1954(昭和29)年…(20勝)荒巻  淳(28歳) 22勝(12敗 49試合(先発24))
◇1956(昭和31)年…(20勝)荒巻  淳(30歳) 24勝(16敗 56試合(先発20))
◇1957(昭和32)年…(20勝)小野 正一(24歳) 26勝(9敗 55試合(先発32)) ※NPB100傑59位タイ
◇1959(昭和34)年…(20勝)小野 正一(26歳) 22勝(9敗 56試合(先発27))
★1960(昭和35)年…【最多勝】小野 正一(27歳) 33勝(11敗 67試合(先発22)) ※NPB100傑10位タイ ★リーグ優勝
★1964(昭和39)年…【最多勝】小山 正明(30歳) 30勝(12敗 53試合(先発42)) ※NPB100傑21位タイ
◇   〃   …(20勝)坂井 勝二(26歳) 25勝(17敗 58試合(先発37)) ※NPB100傑81位タイ
◇1965(昭和40)年…(20勝)小山 正明(31歳) 20勝(20敗 50試合(先発39))
◇1966(昭和41)年…(20勝)小山 正明(32歳) 20勝(13敗 49試合(先発34))
◇1968(昭和43)年…(20勝)成田 文男(22歳) 20勝(11敗 49試合(先発38))
◇1969(昭和44)年…(20勝)成田 文男(23歳) 22勝(13敗 48試合(先発43))
★1970(昭和45)年…【最多勝】成田 文男(24歳) 25勝(8敗 38試合(先発36)) ※NPB100傑21位タイ ★リーグ優勝
◇   〃   …(20勝)木樽 正明(23歳) 21勝(10敗 42試合(先発35))
★1971(昭和46)年…【最多勝】木樽 正明(24歳) 24勝(8敗 47試合(先発33))
★1973(昭和48)年…【最多勝】成田 文男(27歳) 21勝(10敗 52試合(先発32))
★1974(昭和49)年…【最多勝】金田 留広(28歳) 16勝(7敗 36試合(先発29)) ★日本一
◇1976(昭和51)年…(20勝)村田 兆治(27歳) 21勝(11敗4S 46試合(先発24))
★1981(昭和56)年…【最多勝】村田 兆治(32歳) 19勝(8敗0S 32試合(先発31)) ★前期優勝
★1994(平成6)年…【最多勝】伊良部秀輝(25歳) 15勝(10敗0S 27試合(先発26))
★1998(平成10)年…【最多勝】黒木 知宏(25歳) 13勝(9敗0S 31試合(先発28))
★2015(平成27)年…【最多勝】涌井 秀章(29歳) 15勝(9敗0S 28試合(先発28))

 球団創設初年度に最多勝、20勝投手が誕生した。初代日本一にチームを導いた「火の球投手」と呼ばれた荒巻だ。1年目24歳の1950(昭和25)年に26勝を挙げた。その内容は19試合に先発し完投が16試合。そして、リリーフ登板が29試合で投球回は274.2回だった。1951、52年と不振を極めるも投球スタイルを変えて復活。1954(昭和29)年に22勝、56(昭和31)年に24勝を挙げる。しかし、この間も先発、リリーフとマウンドに上がり、33歳の1959(昭和34)年に17勝を挙げたが、以降は0勝に終わった。
 その荒巻に代わってエースになったのは小野。リーグ優勝を遂げた1960(昭和35)年には33勝という球団記録をマークした。小野も先発22試合で13完投、リリーフ登板が45試合、投球回は304回と300回を超えた。それもそのはず、早い回からの登板も多く、リードしていると5回、6回途中から最後まで投げ、早い時には2回からリリーフマウンドに上がっている。ただ、当時のエースは300回超えは当たり前、400回を超える投手もいた時代だった。現在、規定投球回(試合数と同数)に達する投手も少ないだけに、信じられない登板数、回数だ。ただ、荒巻も小野もピークは短かった。やはり、登板過多が影響したと言われている。それでも荒巻は13年、小野は15年と10年を超える現役生活を送ったので、現在の分業制ならば200勝へ到達していただろう。

 阪神から30歳で移籍した小山は移籍最初のシーズンに30勝をマークした。球団史上30勝以上は小野と小山の2人だけになる。
 成田は20勝以上を4度記録して、3度の荒巻、小野、小山を抑えて最多。最多勝を複数回獲得しているのも成田だけ。30歳を過ぎてから肩痛とヒジ痛に悩まされ、現役にこだわり日本ハムに移籍したが、悲願の200勝には届かなかった。
 その200勝を球団史上唯一成し遂げた村田だが、登板間隔や分業制による先発専任など投手起用の変化もあり、20勝を記録したのは1981(昭和56)年の1度だけ、最多勝を獲得したのもこの1度だけだった。ただ、このシーズンは抑えにも回り、先発24試合、リリーフ22試合とフル回転している。

 そして、マリーンズとなってからも伊良部、黒木、涌井と最多勝を獲得した。ただ、20勝超えは村田が最後であり、現在では難しいと言われている。

 では、シーズン勝利数をランキング化する。

【歴代シーズン勝利 ベスト10】
◆1位…小野 正一 33勝【最多勝】1960(昭和35)年 ※NPB100傑10位タイ
◆2位…小山 正明 30勝【最多勝】1964(昭和39)年 ※NPB100傑21位タイ
◆3位…荒巻  淳 26勝【最多勝】1950(昭和25)年 ※NPB100傑59位タイ
◆〃 …小野 正一 26勝(パ2位)1957(昭和32)年 ※NPB100傑59位タイ
◆5位…坂井 勝二 25勝(パ4位)1964(昭和39)年 ※NPB100傑81位タイ
◆〃 …成田 文男 25勝【最多勝】1970(昭和45)年 ※NPB100傑21位タイ

ここから先は

4,264字
この記事のみ ¥ 150
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?