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鹿児島の「ドルフィンポート問題」を〈建築×エネルギー〉から考えてみる



はじめに


ドルフィンポート問題」について、ご存知ない方は一度検索してみてください。こちらは参考までに↓↓↓

これからの公共建築を〈kWh=¥〉で考える

「公共建築をこの場所(ドルフィンポート跡地)に建てることの是非」についてはここで議論しませんが、「公共建築とエネルギー」について考え、知っていただく良い機会だと思いました。

ここで大事な視点は「kWh=¥(キロワットアワー イズ マネー)」です。
ようするに「エネルギー消費=お金の消費」として捉えないとこれからの公共建築の維持保全なんてできないよ、ということです。

エネルギーの自給自足が成り立っていない日本にとって、エネルギーを消費すること=お金を流出させていること、に直結しています。
実際、多くの地域が地域内総生産に対するエネルギー代金の収支が赤字になっています。

環境省 HPより

公共建築物の維持管理にかかるお金

公共建築物は一度建てたら何十年と残り続けます。だいたい、60年で想定されている自治体が多いようです。
その建設から維持管理・解体までにかかる費用(ライフサイクルコスト)ですが「建設コストの3~5倍」と言われています。

建設コストは氷山の一角

図2で示すように、一般に、LCCにおいてはイニシャルコスト、即ち建設費は氷山の一角であり、運用や保全などにかかる水面下のランニングコストの方が圧倒的な割合を占めることが一般的になっています。そしてイニシャルコストに対するランニングコスト割合は、建物用途によっても異なりますが、概ね3~5倍となります。

建築コスト管理システム研究所「100年公共建築のためのコストマネジメント」より抜粋

総工費 約300億円→ライフサイクルコストは 1000億~?

上記の資料のあとには
「耐用年数が延びれば、建替えの費用も抑制できて経済効果も高い」
的なことが書いてありましたが

そもそもそんな維持管理費用がかからないようにしなければならないのでは?

と、思います。

冒頭の「ドルフィンポート問題」なのですが、ドルフィンポート跡地に建てられる施設の総工費が約300億くらいだそうです。
これを3~5倍ということは、トータルで1000億~1500億くらいの税金がその施設の建設・長年の維持管理・解体に使われる…ということですね。

維持管理に直結する「建築×エネルギー」問題を解決するには

長年の維持管理には、設備機器の光熱費やメンテナンス費が含まれています。多くの建築物の光熱費の4割~5割は「冷暖房エネルギー(下の円グラフの熱源+熱搬送)」にかかっているので、いかに省エネルギー建築を実現していくかがライフサイクルコスト削減のカギです。
ここで「最新設備で省エネルギーを実現しよう!」とならないように注意しなければいけません。結局のところ、設備機器のメンテ・更新コストの削減ができないとライフサイクルコストは減らないからです。
「エネルギーロスの少ない建築設計」と「断熱計画」による省エネ計画が先で、それを踏まえた小容量の設備機器を選定しないと更新のコストは変わらないし、ZEB化(ゼロエネ化)も成り立ちません。
多くの建築のZEB化はこれで失敗しています。

もしこれから公共建築の建設を進めるなら、このあたりを理解できている発注者・設計者に計画を進めていただければ…と思いますが、自分が知るかぎり鹿児島県にそういった方はいないように思います。

関東経済産業局「中小企業の支援担当者向け省エネ導入ガイドブック」より作成

これからの建築はイニシャルコストではなくライフサイクルコストで考える

どうしても「建設費300億」という表に出る数字に目が行きがちですが、より大きなお金が動くのは「建設後」です。仮に「建設費300億」かかるとしても、「その後の維持管理コストをこのくらい削減できる省エネルギー建築なんです」と言えるなら、多少の納得は得られるのかも知れません。

実現できるかはさておき

1:新築ではなく改修で
2:断熱改修で省エネルギー化して
3:再エネ設備で自家消費分の大半を賄えて
4:有事の際は、温熱環境に優れる避難所となり、エネルギー面でもある程度自立循環できる安心安全な公共施設

をつくりましょう!という方針を打ち出したら

その県知事はヒーローになれそうな気がします。

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