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鹿児島のこれからのエネルギーとまちづくりを「住宅」から考える

鹿児島の「住まいの燃費」を考える

 あまり知られていないように思いますが、鹿児島は全体の電力消費量のうち4割近くが家庭用での消費です。家庭用電力の消費量を抑える事はエネルギー問題に対して取るべきアプローチの一つです。
 これもあまり知られていないのですが、住宅の設計段階で「その家で暮らすとどれだけのエネルギーを消費するか」は「見える化」する事ができます。車を購入するときに多くの方が「燃費」を気にすると思いますが、それと同じように「住まいの燃費」という考え方が存在し、その性能表示はEU諸国では義務化されていて当たり前のものになっています。
 住まいの燃費、特に躯体の性能を示す「冷暖房エネルギーの消費量」がわかってくると鹿児島の住宅がこれからどうあるべきかが見えてきます。
 今回、鹿児島の新築戸建住宅の平均床面積に近い住宅をモデルとして作成したシミュレーション結果から、鹿児島県が取り組むべき課題を探ってみました。

エネルギーの見える化

 鹿児島の既存住宅相当の「燃費」をざっくりと調べてみます。

燃費ナビ等級3レベル-1

 この温熱性能の計算ツールは、国際的に採用されているソフトを走らせて熱性能計算を行っていて、建物自体の燃費性能をEU諸国で導入されている計算ツール同様に評価する事が可能です。
 上図は、鹿児島の築10~20年相当の住宅を想定して作成しました。
 この建物の燃費は中段右手に表された棒グラフの222.03 kWh/㎡という数値で、これは「一次エネルギー」というものです。
 電気やガス等のエネルギーはそれぞれの単位で表すので同一の単位では扱えませんが(これは二次エネルギー)、それを一次エネルギーに換算する事で同列に扱っています。
「一次エネルギー=地球上で消費されたエネルギー」とお考えください。

 次に、ある程度性能を上げたもの…と言っても国が設定している基準(しかも義務基準では無い)よりは、はるかに良い性能の住宅の燃費を調べます。

燃費ナビG2レベル-1

 今度は147.72 kWh/㎡という数値になりました。
 これで約75 kWh/㎡が削減できたわけですが、この数値は床面積1㎡当たりの数値で、実際には建物全体で1/3相当のエネルギーを削減する事になります。もちろん、家族の人数や住まい方によって実際のエネルギーの消費量は異なるのですが、「燃費」という共通の指標の上ではこれだけの性能がある事を確認できます。

鹿児島で「低燃費」の家を増やすと・・・

 このレベルを鹿児島全体の新築戸建て住宅で実現する場合、令和元年の鹿児島の新築戸建住宅(持ち家)の着工数4,618棟で考えると

一棟当たり削減できる一次エネルギー =23.4 GJ/年
単位を置き換え 23.4GJ=6500 kWh
電力(二次エネ)に置き換え 6500 kWh ×2.7(PEF)=17550 kWh
17550 kWh ×4618棟 =約81,000,000 kWh

 …いろいろ間違ってたらスミマセン。
 電力で換算してみましたが、ざっくり8100万 kWh。
 これは鹿児島県の「建設業で消費される電力エネルギー」をカバーできるレベルです(資源エネルギー庁:都道府県別エネルギー消費統計より)。
 …と言えばなんとなくそのすごさがイメージできるでしょうか。

 新築住宅の断熱性能基準の義務化さえできていない日本で、このレベルを全棟で実現するのは不可能に近いハードルがありますが、これからの「エネルギー×まちづくり」にはこのあたりの考え方が不可欠です。
 曖昧な目標で「持続可能な社会へ!」と進むのではなく、目標設定を明確にしたまちづくりを鹿児島からはじめていきたいと思っています。

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