家を建てる前に知ることができる「7つの見える化」
住まいの温熱環境デザイン事務所
おりなす設計室を立ち上げて早一年。
最近では「住まいの断熱について、SNSやYouTubeで○○にした方がいいって見たんですが本当ですか?」といった問い合わせを頂きます。
そういった悩みの原因は
「住まいの性能が目に見えない」
という点だと思います。
というわけで、家づくりの疑問への答えとして
「家を建てる前にここまでわかるよ」
という、今のおりなす設計室でできる「7つの見える化」についてまとめてみました。
「熱中症やヒートショック…断熱が大事なのは分かっているけど、どれくらいお金をかけたらいいの?」
断熱性能 を見える化する
同じように断熱材を使っても建物の大きさ等様々な要因によって変わるのが「断熱性能」です。
そのため断熱性能は建てる前に一棟ごとに計算してチェックする事が不可欠になります。
住まいの断熱性能を知るだけでは「快適性」や「省エネ性」を確認するレベルには至らないのですが、おおよそのアタリをつける事ができます。
そして、そのほかの見える化を進める上でも基本となる大切なポイントです。
光熱費 を見える化する
断熱性能の値が確認できるとそこから派生して「光熱費」を見える化する事ができます。
光熱費の概算をする事で「断熱性能アップによって家を建ててから住宅ローンを払い終えるまでにどれだけの光熱費を削減できるか」が確認できます。
「断熱性能アップに伴う建築コストアップ」と「断熱性能アップによる光熱費(冷暖房費)コストダウン」を天秤にかけることで「XX年後にはコストアップした分をペイできる」という目途をたてることができるからです。
住宅ローンの期間内に相殺しきれないほどの高コストの高断熱化は住まい手にとって大きな負担になるため、このバランスチェックは重要なポイントです。
そのため「断熱にどれだけお金をかけるべきか」の答えは、「イニシャルコストとランニングコストの最適バランスを意識して断熱性能を決める」という事になります。
「太陽光や風を取り込んで自然エネルギーをうまく活用したいけど、それって建てる前にどこまで把握できるの?」
パッシブデザイン を見える化する
太陽光や通風などの自然エネルギーを上手く利用して取り入れる設計手法は「パッシブデザイン」と呼ばれています。
パッシブデザインは「自然」という不確定なものを扱うためか「あいまいなパッシブデザイン」の事例が非常に多く存在しています。
しかし、近年では、太陽の軌道を正確に読み取るツールや地域の気候特性データの活用により「正確なパッシブデザイン」が可能になりました。
太陽光 光と熱 を見える化する
パッシブデザインの中でも特に重要なのは「太陽光」をどのようにコントロールするかという点です。
太陽は「何月何日何時にどの位置にあるか」がハッキリとしているため、高精度なシミュレーションが可能です。
「光の差し込む範囲」「光から得られる明るさ(照度)」「太陽光から得られる熱量」などを把握する事ができ、太陽光をフル活用したパッシブデザインが可能になります。
これらは、太陽光を取り入れる冬だけで無く、夏の日射遮蔽の検討にも役立ちます。熱い日差しを遮るために必要な庇の長さをチェックする事や日差しの影響を考慮した窓の配置が可能になります。
「エアコンって畳数表示を見て計画するしかないの?」
冷暖房の負荷 を見える化する
冷房機能と暖房機能を併せ持つエアコンはその機能面はもちろんのこと、エネルギー効率の面でも優れた空調機器です。
しかし、その選び方を間違えると不釣り合いな容量を選択してしまい、効率の悪い運転になります。
エアコンの畳数表示は「無断熱の建物」を想定しているため、しっかりと断熱した住まいで畳数通りに設置するとオーバースペックなエアコンになってしまいます。
断熱性能や日射熱の出入りのほか、屋内の発熱量などを総合的に検討することで、「冷暖房の負荷(消費するエネルギー)」がどのくらいになるのかを知ることができます。
その負荷に合わせたエアコンを選定する事で、ムダに大容量なエアコンを選定するミスや、容量が明らかに不足したエアコンを選定するミスを防ぐことができます。
「断熱したら室温はどのくらい良くなるの?」
室温変化 を見える化する
断熱やパッシブデザインを頑張って光熱費が安くなったとしても、肝心な室内環境(室温)が整っていなければ暮らしやすい環境にはなりません。
建築地の365日の時間毎の気象データを元にして、室温変化や室温分布をシミュレーションする事で、この不安を解消する事が可能です。
「いろんな会社が"ウチで作る住宅は高性能です"って言うんだけど、住まいの性能ってどうやって比較するの?」
住まいの燃費 を見える化する
多くの人が車を購入する際に「燃費」を確認しています。これは、車を維持管理し続ける上でどれだけのコストがかかるのかを把握する上で重要な指標となっています。
同じように「住まいの燃費」というものが存在します。環境問題への取り組みに力を入れているEU諸国ではこの「住まいの燃費」を表示する事が当たり前のように行われていて、例えば中古住宅市場では燃費性能の良い住まいの方が当然価値が高くなります。
燃費の良い家づくり=エネルギー消費の少ない家づくりですので、「燃費」は住まいの性能を示すとともに「環境負荷が少ない住まいの指標」にもなります。
「一次エネルギー消費量」という共通の指標を使う事で、同じ土俵の上で性能の良し悪しを見極める事が可能になります。
以上がおりなす設計室でできる「7つの見える化」でした。
ちなみに、新築だけではなく、中古住宅のリノベーションでも同様に7つの見える化をする事ができます。
これらの事が予めわかっていると、無理のない適切な予算配分で断熱などに費用をかける事ができて、「快適に暮らせる住環境」と「省エネルギーで環境に優しい暮らし」が実現できます。
おりなす設計室は、そんな暮らしが増えていくためのきっかけのひとつになれたら、と思っています。
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