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人は物語にこそ、価値を感じる。

先日、突然に気づいたことがあります。
それは、「人は品物そのものではなくて、それに付随した物語にこそ価値を感じるのではないか」ということです。

私は現在、ネット上で自作の素材をダウンロード販売しています。
これらは「素材」とはいえ、部分的には嗜好品的なところもあって、誰もが絶対に必要とするようなものではありません。なので、誰かが価値を見出してくれなければ、売れて行かないわけです。
では、私の作品の価値ってなんなのだろう……と考えていた時でした。
ふと、韓国ドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』のあるエピソードが浮かんだのです。

敵対勢力との料理対決に臨んだチャングムが最後に出したのは、「野いちごの砂糖漬け」というなんの変哲もない料理でした。
けれどチャングムは、野いちごは死に瀕した母が最後に食べてくれたものだというエピソードを話し、母を想う気持ちを込めてこれを作ったと告げます。そして、それに感動した王は、彼女を「国一番のスラッカンの女官だ」と称賛するのでした。

昔このエピソードを見た時私は、言い方は悪いけれど「王と視聴者に対しての泣き落とし」だなあと思ったものでした。
ですが、今改めて考えると、それは「なんの変哲もない料理でも、心に訴える物語が不随すれば、感動を与える」ということなのです。

たとえば『仮面ライダーの変身ベルト』という玩具があります。
毎年、新しい仮面ライダーの登場と共に、新商品が発売されるものです。
でも、もしもこれが『仮面ライダー』という特撮ドラマがなくて、変身ベルトだけが売られていたとしたら、きっと子供たちは見向きもしないでしょう。
変身ベルトの場合はもちろん、『仮面ライダー』という特撮ドラマありきの商品ですが……「物語が不随することによって価値が出る品物」としては、まさに究極のものではないでしょうか。

こんなことを、つらつら考えていて、ふと思い出したのが、動画『minneLAB』の中で、和田まおさんが、作品の紹介ページに「なぜそれを作ったのか」「作ったことの気持ちを書け」と言っていたことでした。

言ってみれば、それこそが「その作品の物語」になるからではないのか……と、私は考えました。
ハンドメイド作品を買う方たちに必要なのは、ただポーチだったりアクセサリーだったり、だけではないのかなと感じたのです。
たしかに今どき、百円均一のお店に行けば、雑貨もアクセサリーもそこそこ見栄えのいいものが安く売られているわけですからね。
ハンドメイド品が好きで、そういうものを使いたいと思っている方たちにしても、たくさんあるお店の中から、ではどれを――となった時には、当然、何か自分の心に響くものがある品を手に取るわけで。
そのとっかかりの一つが、「物語」――その作品に込められた作者さんの思い、ということなのかな……と考えたのです。

そうして、改めて自分の作品をふり返ってみるに、たしかに私の作品には「物語」が足りなかったかもなあ……と思ったのでした。
……というか、私は長い間、文字どおり「物語の作り手」であったはずなのに、案外何も見えていなかったし、考えてもいなかったのだなあ、と思ったことでした。

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過去に私が初めて作った「物」に関する、昔語りです。

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