すゆのおと(朗読歌劇そらのおと)

朗読歌劇そらのおと座付き作家・原田佳夏が書く120字小説を、女優・日高恵の朗読、作曲家…

すゆのおと(朗読歌劇そらのおと)

朗読歌劇そらのおと座付き作家・原田佳夏が書く120字小説を、女優・日高恵の朗読、作曲家・杜哲也のジングルに乗せてお届けします。ためらうより短いしばしの物語。心の駄菓子。おひとつどうぞ。

記事一覧

すゆばなし しばしの物語 004

坊主が経を上げる間中、焼香台の傍にあった揺れぬ焔《ほのお》の蠟燭《ろうそく》を見ていた。納骨堂は本物かと見間違う造花が飾られ蠟燭も線香も電池式となっていた。本堂…

すゆばなし しばしの物語 003

喉が痛いとぼやいたら、焼いたネギを渡されて「体に巻くといい」と言われた。(喉に巻くんじゃなかったっけ)と思っている間に鍋に入れられ、皿に移され、噛みつかれ、喉の…

すゆばなし しばしの物語 002

猫が顔を上げた。耳が平らになったあと、尻尾がだらりと垂れた。部屋の空気が少し揺れて、仏壇に飾った桔梗の青が少し濃くなった。あなたの三回忌は明日ですから、お母さん…

すゆばなし しばしの物語 001

「夏の終わりを惜しんでいるの? 冬の訪れを悲しんでいるの?」「何が?」「ハロウィンよ!」斧の髪飾りに血の涙を流した彼女は怒鳴るようにぼくに話しかけてきた。「古代…

「すゆばなし」について

【『須臾噺(すゆばなし)』とは】 「朗読歌劇そらのおと」座付き作家である原田佳夏が書く120字小説。 2017年10月から2019年12月にかけて1001話SNSで毎日1話アップ(途…

すゆばなし しばしの物語 004

すゆばなし しばしの物語 004

坊主が経を上げる間中、焼香台の傍にあった揺れぬ焔《ほのお》の蠟燭《ろうそく》を見ていた。納骨堂は本物かと見間違う造花が飾られ蠟燭も線香も電池式となっていた。本堂の蠟燭も偽物かと、焼香の終わり際、ふっと息をかけたら、焔が揺れた。本物と知れた途端、涙が頬を伝った。

すゆばなし しばしの物語 003

すゆばなし しばしの物語 003

喉が痛いとぼやいたら、焼いたネギを渡されて「体に巻くといい」と言われた。(喉に巻くんじゃなかったっけ)と思っている間に鍋に入れられ、皿に移され、噛みつかれ、喉の痛みは気にならなくなった。なんとも人を喰った話だと思いつつ意識が途絶えた。

すゆばなし しばしの物語 002

すゆばなし しばしの物語 002

猫が顔を上げた。耳が平らになったあと、尻尾がだらりと垂れた。部屋の空気が少し揺れて、仏壇に飾った桔梗の青が少し濃くなった。あなたの三回忌は明日ですから、お母さん。遺影の中で微笑む母に声をかけて手を合わせた。気がつけば猫は目を閉じていた。
                               

すゆばなし しばしの物語 001

すゆばなし しばしの物語 001

「夏の終わりを惜しんでいるの? 冬の訪れを悲しんでいるの?」「何が?」「ハロウィンよ!」斧の髪飾りに血の涙を流した彼女は怒鳴るようにぼくに話しかけてきた。「古代ケルトの祭の話は興味ないけど、ぼくはキミに会えて嬉しいよ」全身カボチャの僕は答えた。

「すゆばなし」について

「すゆばなし」について

【『須臾噺(すゆばなし)』とは】

「朗読歌劇そらのおと」座付き作家である原田佳夏が書く120字小説。

2017年10月から2019年12月にかけて1001話SNSで毎日1話アップ(途中数ヶ月中断)。
「須臾噺」の「須臾」とは「すゆ」とも「しゅゆ」とも読み、
1000兆分の1であることを示す漢字文化圏における数の単位。
そして現実には使われない単位。
逡巡の1/10、瞬息の10倍に当たる。

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